恋愛小説の書き方 | ちむどんどんから学ぶ四角関係の終わらせ方NG例
2022年に話題となったNHKドラマがあります。流行語大賞にも関連ワードがノミネートされていますが、NHKの朝ドラ「ちむどんどん」です。
この作品はNHK朝ドラとしては異例の炎上を起こした作品です。その原因はヒロイン周囲の四角関係の終わらせ方でした。
「小説家になろう」でも恋愛小説は人気のジャンルですから、ちむどんどんのダメな例を押さえておくことは役立つはずです。
弱ってる相手にカマかけに行くヒロイン
事件がおきたのは第62回でした。
ヒロインの比嘉暢子が、青柳和彦のことを好きだったと打ち明けます。
東洋新聞記者の和彦は、同僚の大野愛と交際中(愛の両親は娘の結婚に前のめりで、結婚式場も予約済み)。
しかし和彦は愛にプロポーズしておらず結婚話に関しても「愛の意思を尊重する」と相手に丸投げ。
※この時点で決断できないダメ男感が出ていますが、イライラしないでください。ちむどんどんは、強い女性と弱い男性のドラマです。続きを書きます。
愛は、和彦は本当のところ自分ではなく、暢子に惹かれているのではないかと気にして、煮え切らない和彦の態度に居ても立っても居られなくなった愛は、暢子が働くイタリア料理店『アッラ・フォンターナ』を訪ねます。
いきなり訪ねてきた愛に、「実はうちも愛さんに話したいことがあった」と招き入れた暢子。そこで「うち…和彦くんのことが好き」「好きって分かってしまったわけ」と言い放つ暢子。なお、暢子は愛が長年和彦と交際していることを知っています。視聴者の気分としては、何か愛と和彦の関係が進展しないな……今チャンスじゃね?いっちょやったるか!と暢子が考え、実行したようにしか見えませんでした。笑
- ポイント
ライバルが弱ってるときにカマかけにいく(相手の本音など、自分が知りたいと思うことを聞き出すため、巧みにことばで誘い、漏らしてしまうように仕向ける)ヒロインって邪悪すぎませんかね。
これ恋愛小説で絶対やったらダメですよ。主人公が戦う相手と戦うから、読者は応援したくなるんです。ただでさえ相手が弱ってるところにカマしに行った暢子は、さらにとんでもない行動に出ます。
戦わず撤退するヒロイン
先ほどのカマした直後、暢子は「でもさ、諦める」「好きだけど、きれいさっぱり諦める」となぜか撤退宣言を行います。「愛さんにウソはつきたくないから全部言ってしまいたくて」「困らせるようなこと言って、ゴメンね」と一方的に締めくくります。
視聴者的には……えぇぇー!?です。ここでぴえん(思い通りに物事が進まなかったり、残念なことがあったりして悲しい気持ちになったりしたことを示す)は狡すぎるでしょう。
ゴメンねって言ってるけど心こもってますかね?相手に罪悪感与えてゴネ得を狙っていませんか?と感じましたよ。
さらにこの後、愛が暢子を責めるのならわかるんです。
自分の彼氏を略奪したい、と一度は宣言したわけですから。「何で今更そんなこと言うの?」と責めていればまだよかった…のですが。
愛は暢子の言葉をそのまま受け入れて、和彦との結婚を諦めます。
ポイント
戦わずに同情を買い、相手に諦めさせるやり方は狡いです。恋愛小説のヒロインに、こんなこんなことさせると嫌われます(事実暢子は多くの視聴者に嫌われました)
暢子と和彦はその後結婚する
さらに、愛が和彦との結婚を諦めた後、第69回、暢子に思いを寄せる砂川智の求婚が描かれます。実はちむどんどんは、智と暢子、愛と和彦の四角関係だったのです。
第69回では智が意を決して暢子に「結婚しよう。必ず幸せにする」とプロポーズするんですね。しかし暢子は「うちらが結婚してもうまくいくわけないさ」「うちは料理に集中したい」と断ります。
なるほど、仕事に集中して、料理人を目指すんだな、がんばれ暢子!と思ったのも束の間。恋愛に進展があったのは、第69回から作中5〜6日しか経っていない第75回でした。
取材のため沖縄を訪れていた和彦が暢子の前に現れます。74回あたりの話で両親の馴れ初めを聞き「うちも幸せになりたい」と強く願うようになった暢子は、そのまま和彦に「結婚してください」と告げます。和彦は「うん。結婚しよう」と応じて、2人は口づけし、抱き合います……。
ちょいちょいちょーい!ヒロインに都合良すぎー!!料理頑張るはどこいった!?まあ、好きでない人を振るときの常套句だけれども、ヒロインがそれやっちゃう?卑怯じゃない?というのが感想でした。
- ポイント
自分への好意に対してまともに向き合わないヒロインは卑怯。せめて智に、「ごめんなさい、無理です」と、正直に打ち明けるべきでした。
そして、決断できない男・和彦と、卑怯な女・暢子が都合よく結ばれる展開……誰も祝福できませんでした。
四角関係を上手に終わらせるコツ
ちむどんどんの失敗は、四角関係の終わらせ方にあったと考えます。
和彦のように自分の意思を表明せず保留にして、相手との恋愛関係を受け身で終わらせる(何もせず時間切れを狙う)行為は、卑怯です。
暢子のように自分の意思を表明せず、仕事を言い訳にして相手を振る行為も、卑怯です。
支持される恋愛とは、ヒロインもその相手も真剣に恋愛し、恋敵と想いをぶつけて、逆境に打ち勝つものでしょう。
暢子と和彦をくっつけたいなら、いっそのこと、どちらも相手から振られる形にすれば良かったと思います。
暢子が智を、和彦が愛を本気で好きだったけれど、振られて、その後で暢子と和彦がお互いの気持ちを育てていくなら問題なかったはすです。
スタッフは、あえて暢子と和彦を卑怯ものに演出したかったのかもしれませんが、朝からイライラさせられた視聴者は多かったです。(卑怯もの同士の恋愛を誰が応援できますかね。炎上商法としては成功でしたが。登場人物は愛されませんでした)
- ポイント
登場人物が卑怯だと思われない展開を心がける。四角関係の終わらせ方は、せめて前のめりに……ありきたりかもしれませんが、挑戦して玉砕する様子を見せて欲しいです。
もちろん別の手段として、愛と智を悪人に描くのもアリです。暢子の悪いところは、相手が弱っているときに宣戦布告して、ぴえんして逃げ去るところでした。愛と智をそういうキャラにしておけば、暢子をもっと応援できたかもしれません。笑
まとめ
2022年はやりたいこと最優先!がポリシーの女性主人公アニメ リコリス・リコイルが大ヒットしました。ちむどんどんも同じ系列には位置していて、やりたいこと最優先!の作品ではあったものの「鈍感に見せかけた身勝手さ」が出てしまい、失敗したといえそうです。
この差を知っておくことは大事ですね。
以上、「ちむどんどんから学ぶ四角関係の終わらせ方」でした。
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