小説の描写一覧|情景描写・心理描写・心情描写の違いを解説

2020年3月27日

「描写をもっと入れて」と言われたけど、そもそも描写にはどんな種類があるの?——この疑問に答えます。

小説の描写は大きく分けると心理描写・人物描写・状況描写の3種類ですが、実際に検索してみると「心情描写」「情景描写」「風景描写」「行動描写」など似た言葉がたくさん出てきて混乱しますよね。

この記事では、描写の種類を一覧で整理し、「心理描写と心情描写の違い」「情景描写と風景描写の違い」など紛らわしい用語の関係を明確にしたうえで、描写力を上げるコツまで解説します。


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「説明」と「描写」は何が違うのか

描写の種類に入る前に、まず「説明」と「描写」の根本的な違いを押さえておきましょう。

説明描写
役割情報を直接渡す手がかりを渡して悟らせる
読者の動き受動的に理解する能動的に推測する
効果効率的だが印象に残りにくい非効率だが感情移入が深まる

具体例で比較する

説明:

彼は怒っていた。

描写:

彼は歯を食いしばり、拳が白くなるほど握りしめていた。

説明は「怒っていた」の一語で情報を伝えます。効率的ですが、読者の感情は動きにくい。

描写は「身体の反応」という手がかりだけを渡し、読者に「この人は怒っているんだ」と推測させます。この能動的な推測のプロセスが、感情移入を生むのです。

どちらが良い・悪いではありません。感情を動かしたい場面では描写、テンポよく情報を伝えたい場面では説明——この使い分けが描写力の土台です。


描写の種類一覧|7つの描写を3カテゴリで整理

小説で使われる描写を一覧にまとめると、以下の7種類になります。ただし、これらは大きく3つのカテゴリに整理できます。

カテゴリ描写の種類何を描くか
内面系心理描写思考・判断・価値観
心情描写感情・気持ちの動き
外見・動作系人物描写外見・服装・癖・印象
行動描写動作・仕草・振る舞い
環境系情景描写場面全体の雰囲気(心理込み)
風景描写自然・建物・空間そのもの
状況描写時間・天候・社会状況などの条件

ひとつずつ、役割と使いどころを見ていきましょう。


心理描写と心情描写の違い

「心理描写」と「心情描写」は同じ意味で使われることも多いですが、厳密に使い分けるなら以下の違いがあります。

心理描写心情描写
対象思考・判断・葛藤感情・気持ちの揺れ
「ここで逃げたら、もう二度と信用されない」胸の奥で何かがぎゅっと縮んだ
傾向理性的・論理的感覚的・情動的
一人称小説での現れ方地の文の内省身体感覚や比喩で表現

心理描写の例

(このまま黙っていれば、誰にも気づかれない。けれど、黙っていた自分を、明日の自分は許せるだろうか)

キャラクターの理性的な判断プロセスが見えます。これが心理描写です。

心情描写の例

名前を呼ばれた瞬間、視界がにじんだ。声を出したら崩れそうで、唇を噛んだまま何度もうなずいた。

こちらは感情そのものを身体反応で描いています。これが心情描写です。

実際の使い分け

多くの文章指南では「心理描写=心情描写」として扱われます。試験問題や公募の講評でも厳密な区別は求められません。ただし、1つのシーンに「思考」と「感情」の両方を入れると、キャラクターに奥行きが出ます。

(逃げちゃだめだ)——そう思った瞬間、膝が笑っていることに気づいた。

前半が心理描写(思考)、後半が心情描写(恐怖の身体反応)。この組み合わせが、キャラクターの「覚悟はあるのに身体が追いつかない」というリアルな葛藤を描きます。

もっと深く学びたい方はこちら →心理描写の書き方|読者に「悟らせる」感情表現テクニックを例文付きで解説


情景描写・風景描写・状況描写の違い

環境系の描写は3つあり、混同されがちです。それぞれの守備範囲を整理しましょう。

情景描写風景描写状況描写
対象場面の雰囲気全体自然・建物・空間の見た目時間・天候・社会環境などの条件
心理の介入あり(感情フィルターを通す)なし(客観的な観察)なし(事実の提示)
「濡れたアスファルトに街灯のオレンジが揺れ、人のいない交差点を雨音だけが満たしている」「桜並木が続く坂道。花びらが風に舞い、路面をピンクに染めていた」「季節は冬。都心でも氷点下が3日続き、水道管の破裂が相次いでいた」
役割感情の増幅、雰囲気の演出舞台の可視化、場面転換物語の前提条件の提示

情景描写とは

情景描写は、風景をキャラクターの感情のフィルターを通して描く技法です。同じ雨でも、失恋直後なら「冷たく肌を叩く雨」に、再会シーンなら「頬を伝って笑顔に混じる雨粒」になります。

つまり、情景描写 = 風景描写 + 心理です。

風景描写とは

風景描写は、場所・自然・建物などの物理的な空間をそのまま描く技法です。心理を重ねず、カメラが風景を映すように客観的に描写します。

状況描写とは

状況描写は、物語の前提条件を読者に提示するための描写です。時代背景、天候、社会状況、キャラクターの置かれた環境など、シーンを理解するために必要な情報を含みます。

戦後3年。配給は月に2度に減り、闇市の物価は昨年の倍に跳ね上がっていた。

これは風景でも情景でもなく、物語世界の「状況」を描いています。

情景描写と風景描写の簡単な見分け方

• 読んで感情が伝わる → 情景描写

• 読んで場所がわかる → 風景描写

もっと深く学びたい方はこちら →小説の風景描写の書き方|五感を使った3つのテクニックを例文付きで解説


人物描写と行動描写の違い

外見・動作系の描写も、2つに分けて考えるとシーンの書き方が整理しやすくなります。

人物描写行動描写
対象外見・服装・体格・印象動作・仕草・身のこなし
タイミングキャラクター初登場時、久しぶりの再会時シーン中の動きすべて
内面の暗示弱い(見た目から性格を推測させる程度)強い(行動=キャラクターの価値観を示す)

人物描写の例

教室に入ってきた瞬間、まず目に入ったのは左の耳たぶに光る赤いピアスだった。校則違反のそれを、彼女は隠す気がまるでなかった。

1つの特徴に絞ることで、「校則を気にしない人物」「自己主張のある性格」が伝わります。全身を頭からつま先まで書く"人相書き"よりも、特徴的なパーツ1点に絞るのが鉄則です。

行動描写の例

彼は椅子に座るとき、必ず座面を手で拭いてから座った。

たったこの一文で、几帳面さや潔癖な一面が伝わります。

行動描写一覧|よく使われる動作カテゴリ

行動描写で描ける動作を一覧にすると、以下のようになります。

カテゴリ具体例暗示できる内面
手の動き拳を握る、指で机を叩く、髪を触る緊張、苛立ち、照れ
視線目を逸らす、じっと見つめる、瞬きが増える後ろめたさ、関心、動揺
姿勢背筋を伸ばす、猫背になる、壁にもたれる緊張、自信のなさ、余裕
歩き方大股で歩く、すり足、立ち止まる急いでいる、疲労、迷い
爪を噛む、ペンを回す、貧乏ゆすり不安、退屈、焦り
対人動作距離を詰める、一歩引く、腕を組む親しみ、警戒、防御

行動描写は、「心理描写を使わずに内面を伝える」最強の手段です。「悲しかった」と書く代わりに、行動で悟らせる。これが描写力の核心です。


描写の種類の関係を図で整理

ここまでの内容を、包含関係として整理します。


描写
├── 内面を描く
│ ├── 心理描写(思考・判断)
│ └── 心情描写(感情・気持ち)
├── 人物を描く
│ ├── 人物描写(外見・印象)
│ └── 行動描写(動作・仕草)
└── 環境を描く
├── 情景描写(風景+心理 → 雰囲気)
├── 風景描写(空間そのもの)
└── 状況描写(時代・天候・社会条件)

ポイント:これらは排他的ではありません。 1つの文に複数の描写が含まれることも普通です。

雨に濡れた歩道を、彼女は傘も差さずに走っていた。

この一文には、情景描写(雨の歩道)、行動描写(傘も差さず走る)、心情描写の暗示(何かに追い詰められている)が同居しています。


描写力を上げる3つのコツ

描写の種類がわかったら、次は描写力を底上げする方法です。

コツ①|「感情語」を動詞に変換する

「悲しい」「嬉しい」「怖い」は説明です。これを動詞(行動・身体反応)に変換するだけで、描写に変わります。

感情語(説明)動詞に変換(描写)
悲しかった視界がにじんだ
怖かった足が止まった
嬉しかった頬が緩んで、慌てて引き締めた
怒っていた奥歯を噛みしめた

コツ②|五感のうち「視覚以外」を1つ足す

情景描写が平面的になるのは、視覚だけに頼っているからです。聴覚・嗅覚・触覚を1つ入れるだけで、場面に奥行きが生まれます。

Before(視覚のみ):

夜の公園だった。街灯がついていた。

After(聴覚を追加):

街灯の下、ブランコの鎖がきいきいと風に揺れていた。

音を1つ入れただけで「誰もいない夜の公園」の空気が伝わります。

コツ③|1シーンの描写は「最大3要素」に絞る

描写を入れすぎると、読者はどこに注目すべきかわからなくなります。1つのシーンで描くのは3要素までがベストバランスです。

カフェに入ると、焙煎したての豆の香りが鼻をくすぐった(嗅覚)。奥のテーブルでノートパソコンを叩く女性の、赤いマニキュアだけが目に入った(視覚)。店内BGMのジャズが、会話を邪魔しない程度に流れている(聴覚)。

3つあれば空間は十分に立ち上がります。それ以上は、読者の処理コストが上がるだけです。


描写力を鍛える練習法

練習①|感情語禁止で心理描写を書く

「嬉しい」「悲しい」「怒っている」を使わずに、以下のテーマを200字で書いてみてください。

• 別れの悲しさ

• 合格発表の喜び

• 裏切られた怒り

感情語を禁止すると、身体反応・行動・風景に逃げるしかなくなります。これが心理描写・心情描写の筋トレです。

練習②|今いる場所を「3つの感覚」で描写する

今あなたがいる場所を、視覚+聴覚+もう1つの感覚で描写してみましょう。

蛍光灯の青白い光がデスクを照らしている。隣のフロアからコーヒーマシンの低い唸りが聞こえ、窓の隙間から入り込む風にはかすかに雨の匂いが混じっていた。

たった3文で空間が伝わります。情景描写の練習として最適です。

練習③|1つの動作で人物を語る

好きなキャラクター(小説・アニメ・映画なんでもOK)を、たった1つの行動で表現してみてください。

例:「彼女は寝る前に必ず、本棚の背表紙を指先でなぞってから電気を消した」

この練習は、人物描写と行動描写を同時に鍛えられます。


まとめ|描写の種類を知れば、使い分けられる

描写の種類をまとめます。

描写の種類一言で言うとコツ
心理描写思考を見せる内省を短く、判断の過程を描く
心情描写感情を悟らせる感情語を避け、身体反応で暗示
人物描写外見を印象づける特徴1点に絞る
行動描写動作で内面を語る日常の小さな癖が効く
情景描写雰囲気を作る風景に感情を重ねる
風景描写場所を見せる五感で立体的に
状況描写前提条件を共有するストーリーに必要な分だけ

描写力とは、「どの種類の描写を、いつ使うか」を選べる力のことです。感情を動かしたい場面では心理描写と情景描写を重ね、テンポよく進めたい場面では行動描写だけで内面を暗示する——この使い分けができれば、あなたの小説は確実に変わります。

さあ、今日も物語を書きましょう。あなたの傑作を待っています。


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