小説の風景描写の書き方|五感を使った3つのテクニックを例文付きで解説

2021年11月12日

頭の中にありありと景色が広がり、まるで目の前でその場所を見ているかのような小説。そんな没入感のある描写を書くにはどうしたらよいのでしょうか。

風景描写は「絵」ではなく「言葉」で景色を描くものです。苦手意識を持つ方が多いのも当然でしょう。でも実は、風景描写にはコツがあります。この記事では、風景描写をわかりやすく立体的にする3つの方法を紹介します。

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方法1:書く前に「五感で感じる」練習をする

風景描写の一番の目的は、キャラクターが今どんな場所にいるのか、その情報を正確に伝えることです。

でもその前に——書く本人がその場面をはっきりイメージできていますか?

頭のなかに映像が浮かんでいないのに、言葉だけで描こうとすると、薄っぺらな説明文になってしまいます。

練習法:日常の風景を五感で「再生」する

いつもの散歩コース、駅までの道、通勤電車の車窓——どんな場面でも構いません。目を閉じて、その景色を思い出してみてください。

視覚:電線の上にスズメが3羽並んでいた

聴覚:踏切の警報音と遮断棒が下りるガシャンという音

嗅覚:パン屋の前を通るときのバターの匂い

触覚:冬の朝、自転車のハンドルが指先に痛いほど冷たかった

味覚:走った後の口の中の鉄っぽい味

こんなふうに五感をフルに使ってその場を「体感」する練習をすると、風景描写のストックが自然に溜まっていきます。

もし映像がなかなか浮かばないという方は、YouTubeやドキュメンタリーで「動く景色」を見るのもおすすめです。静止画より動画のほうが、風に揺れる草や水面の光など「動きのある描写」を掴みやすくなります。

方法2:語彙力を「道具」として鍛える

いくら頭の中に鮮明な映像があっても、それを言葉に変換する語彙がなければ紙の上に降ろせません。

語彙が少ないと、同じような表現のオンパレードになり、読者はすぐに飽きてしまいます。

そこで役立つのが「場面設定類語辞典」です。

たとえば「赤ちゃんの眠る部屋」を描くなら——

目に見えるもの:窓から差し込む淡い光、天井から下がるカラフルなモビール

耳で聞こえるもの:おもちゃの「カランコロン」という音、赤ちゃんの「あー」という声

鼻で感じるもの:ミルクとベビーパウダーが混ざったほのかな匂い

こんなふうに、ひとつの場面をいろんな角度からの描写で埋め尽くしてくれます。このシリーズには「感情」「性格」「トラウマ」「職業設定」など別バージョンもあり、キャラクター設定にも応用できる万能ツールです。

そしてもう一つ大事なこと。

書くこと(アウトプット)だけに集中しがちですが、読むこと(インプット)はもっと重要です。インプットが枯渇すると語彙だけでなくアイデア自体が生まれてきません。アウトプットしたら必ず同じだけインプットする——この習慣を心がけてください。

方法3:想像の世界こそ「わかりやすい言葉」で描く

現実の景色を描写するのはまだ簡単です。読者も見たことがあるものだからです。本当に難しいのは、ファンタジーやSFなど「誰も見たことのない世界」を描くときです。

たとえばこんな文があったとします。

> そこに降り立ったUFOらしき丸い物体は、白い煙をあげて怪しく光っていた。
> 扉がゆっくり開くと、段差のない階段のような光のスロープができ、中から透明の「形」とは言い難い大きなシャボン玉のような何かが、一つまた一つとゆっくりとそのスロープを使ってこちらへ降りてきた。

ここでは「UFOらしき丸い物体」「白い煙」「階段」「スロープ」「大きなシャボン玉」と、すべて誰にでも想像がつく言葉が使われています。

もし「白い煙」を「気体中に浮遊している微粒子の大群」と書いたらどうでしょう。正確かもしれませんが、読者の頭に映像が浮かびません。

想像の世界を描くときの鉄則:「読者が自然に理解できて楽しめること」を最優先にする。

専門用語や造語を使いすぎると、それだけで読者の想像が停止してしまいます。ファンタジーの独自設定を説明するときこそ、日常的な言葉でたとえるのが効果的です。

ビフォーアフター

❌ 魔力結晶体が六方晶系の構造で発光し、周囲のマナフィールドに干渉していた。

⭕ 拳ほどの大きさの石が、蛍のように淡く青白い光を放っていた。光は波紋のように広がり、周りの草花をかすかに揺らしている。

前者は設定の正確さを重視しています。後者は「蛍」「波紋」「草花が揺れる」という誰でもわかる言葉で同じ現象を伝えています。読者が没入できるのは、間違いなく後者です。

まとめ——風景描写は「読者の五感を借りる」技術

風景描写をわかりやすくする3つの方法をまとめます。

1. 書く前に五感でイメージする——自分の日常風景を使った再生訓練が基礎になる
2. 語彙力を道具として鍛える——類語辞典を活用し、インプットとアウトプットのバランスを保つ
3. 想像の世界ほどわかりやすく書く——専門用語より日常の言葉でたとえる

小説の描写は、読者の五感を借りて映像を再生してもらう技術です。読者の頭の中に「気兼ねなく楽しめる映像」を浮かべられるかどうか——それが良い風景描写の判断基準です。


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