大型連休に小説を一本書き上げる|9日間で完成させた私の方法
仕事で大きな山場がありました。昼休みもなく、1分が惜しいという日々。ようやく終わって迎えた大型連休の初日、私はパソコンの前に座りました。
旅行でもなく、寝溜めでもなく、小説を書くためです。
これを何年も続けています。2015年の「プロジェクトレボリューション」32,550字から始まって、2016年、2017年、2018年、2019年と、大型連休のたびに2万字から5万字の作品を書き上げてきました。毎年。腰を粉砕した翌年も。
なぜそんなことをするのか。答えはシンプルです。大型連休は、小説を1本完成させるのに最も適した期間だからです。
「いつか書く」は永遠に来ない
「時間ができたら書く」──私もかつて、この言葉を口癖のように使っていました。
でも気づいたんです。時間は「できる」ものではなく、「奪い取る」ものだということに。普通の土日は2日間しかありません。プロットを練るだけで終わるか、2,000字書いて「続きは来週」と思って、来週にはもう熱が冷めている。平日の夜は仕事の疲れで頭が回らない。
大型連休は違います。9日間という、年に数回しか訪れない「まとまった時間の塊」です。
この塊を何に使うかで、1年の創作量が決まります。旅行に行くのも良いでしょう。ゆっくり休むのも正しい。でもしあなたが「今年こそ小説を完成させたい」と思っているなら、この9日間があなたの答えです。
9日間のスケジュール設計
私が実際に使っている、9日間で1本完成させるスケジュールを公開します。
前提:全体像
| 日程 | 作業内容 | 目安 |
|---|---|---|
| Day 1〜3 | プロット・設定 | 3日間 |
| Day 4〜8 | 執筆 | 5日間 |
| Day 9 | 通し読み・修正 | 1日 |
プロットに3日かけていい
「プロットに3日もかけるの?」と思うかもしれません。でもこれが完成率を決める最大の要因です。
Day 1は「何を書くか」を決める日です。テーマ、主人公、対立構造。ここで「2,000字×10〜20話」という全体の枠組みを作ります。
私の場合、1話〜3話で起、4話〜6話で承、7話〜8話で転、9話〜10話で結、と考えてプロットを組みます。もちろん書いていく中で承や転が伸びることはあります。でも骨格があるのとないのとでは、Day 4以降の執筆速度がまるで違います。
Day 2〜3はプロットの肉付けです。各話の冒頭と末尾を1行ずつ書き出す。キャラの動機を確認する。「この展開は読者にとって意外か?」と自問する。3日かけてプロットを練れば、執筆中に「次に何を書くか」で悩む時間が激減します。
1日5,000字で十分
Day 4からは執筆です。5日間で25,000字。これは「1日5,000字」のペースです。
「1日1万字書ける人もいるのに?」──はい、いますね。でも大型連休の目的は「完成させること」であって、速度の競争ではありません。
5,000字は、朝に2,000字、昼に1,500字、夜に1,500字で達成できます。無理のないペースです。もし調子が良ければ8,000字書ける日もあるでしょう。その分、翌日は楽になります。
ポイントは「今日のノルマが終わったら、その日は書かない」ことです。毎日同じ時間に椅子に座り、同じ量を書き、同じ時間に終わる。大型連休の執筆は、短期集中のマラソンです。最初に飛ばしすぎると後半で潰れます。
Day 9の「通し読み」が作品を仕上げる
最後の1日は、書いた原稿を最初から最後まで通しで読む日です。推敲ではありません。通し読みです。
・矛盾はないか
・キャラの口調がブレていないか
・テンポが悪い箇所はないか
赤ペンで気になった箇所にチェックを入れ、致命的なものだけ直す。細かい推敲は連休が終わってからでいいんです。大事なのは「完成した」という事実を連休中に手にすることです。
なぜ「完成」にこだわるのか
「途中まで書いて、あとは平日に少しずつ」──これでうまくいった試しがありません。
理由は明確です。大型連休中に書いたテンションは、平日に再現できないからです。キャラの声が頭の中で響いていた感覚、次の展開が指先から勝手に出てくるあの感覚は、連続して書き続けることでしか維持できません。
1週間空いて原稿を開いたら、もう別の人が書いた文章に見える。「ここから先、このキャラは何を考えてたんだっけ?」── 一度冷めた物語の温度を上げ直すのは、ゼロから書き始めるより苦しい作業です。
だから、連休中に完成させる。終わらせる。
毎年書くと「自分の年輪」が残る
もうひとつ、大型連休の執筆を続ける理由があります。
毎年書いた作品は、タイムカプセルになるんです。
2015年、腰を粉砕した翌年に書いた「境界を超えろ!」の外伝。あの頃、カリアス・トリーヴァの言葉に救われていたから、彼の物語を書いたのだと、今になって分かります。2017年のミシェイル・グドウィンを書いた年は、投資が大成功して「金と愛」について迷っていた年でした(その後の投資成績についてはキカナイデ)。
その時々に自分が何を考え、何に悩み、何を大切にしていたか。それが作品に、自分でも気づかないうちに刻まれている。5年後、10年後に読み返すと、あの頃の自分に再会できる。
これは日記では得られない体験です。日記は事実を記録しますが、小説は感情を記録します。あの連休に、あのキャラに何を語らせたか──それが、そのときの自分の心の写真です。
「9日間もない」場合は
ゴールデンウィークや年末年始のように9日間取れない場合もあります。3連休しかないこともあるでしょう。
その場合は、スケールを縮小すればいい。
| 休日の長さ | 目標文字数 | プロット | 執筆 |
|---|---|---|---|
| 9日間 | 25,000〜50,000字 | 3日 | 5日+仕上げ1日 |
| 5日間 | 15,000〜20,000字 | 1.5日 | 3日+仕上げ0.5日 |
| 3日間 | 5,000〜8,000字 | Day1午前 | Day1午後〜Day2+仕上げDay3午前 |
3連休なら短編1本。5連休なら中編1本。どちらも立派な「完成した作品」です。
大事なのは、休みの最後に「書き上げた」と言えること。その一言が、次の連休へのエネルギーになります。
書き上げた作品一覧(私の場合)
参考までに、私がこれまで大型連休で書き上げた作品を載せておきます。
• 「プロジェクトレボリューション」32,550字(2015年)
• 「境界を超えろ!3 外伝ケルト・シェイネン」28,759字(2016年)
• 「クレイモアクロニクル」35,850字(2017年)
• 「神を語るジャガイモ」22,698字(2017年)
• 「インビジブルハンド」39,080字(2017年)
• 「境界を超えろ!4 外伝クラリス・レイヤー」32,962字(2018年)
• 「パーフェクトホープ」57,684字(2019年)
2017年は3本書いています。狂気ですね。でも書き上げたときの感覚は今でも覚えています。
次の大型連休まで、やること
「よし、次の大型連休に書く」と思ったなら、今日やっておくことがひとつだけあります。
「何を書くか」のタネを、1行だけメモしておいてください。
「魔王を倒した勇者が、故郷の村に帰ったら村が消えてた話」でも「上司と喧嘩して辞表を出す5分前の話」でも、何でもいい。1行だけ。
連休初日にゼロから考え始めると、Day 1がまるごと「何を書くか」で消えます。1行のメモがあるだけで、Day 1のプロット作業が驚くほどスムーズになります。
あの9日間は、1年に数回しか来ません。「いつか書く」は永遠に来ない。でも「次の連休に書く」は、カレンダーに日付がある。
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