吸血鬼の起源と特徴|ドラキュラ・ノスフェラトゥから現代ヴァンパイアまで

2022年5月14日

吸血鬼はファンタジーとホラーの両方で最も人気のあるモンスターです。しかし「吸血鬼といえばドラキュラ伯爵」というイメージは、実は1897年の小説で初めて確立されたもので、それ以前の吸血鬼はまったく異なる存在でした。

この記事では、吸血鬼の起源から現代作品までの変遷を整理し、創作に活かせる特徴とルールを解説します。

吸血鬼の起源

吸血鬼の伝承は世界各地にありますが、現在のヴァンパイア像の直接的な起源はスラブ(東欧)の民間伝承です。

地域吸血鬼の名称特徴
ルーマニア・バルカン半島ストリゴイ(Strigoi)墓から蘇った死者。村人を襲う
セルビアヴコドラク(Vukodlak)狼男との混合伝承。月に影響される
ギリシアヴリコラカス(Vrykolakas)破門された死者が蘇る
中国キョンシー(僵屍)厳密には別系統だが、血を吸う伝承もある
マレー半島ポンティアナク出産時に死んだ女性の亡霊。血を吸う

18世紀のヨーロッパでは「吸血鬼パニック」が実際に発生しています。1725年のセルビアで、ペタル・ブラゴイェヴィチという農民が死後に村人を襲ったとされ、遺体が掘り返されて杭を打たれた事件は公式記録として残っています。1732年のアルノルト・パオレ事件も同様で、こちらはオーストリア軍が正式に調査報告書を作成しており、「ヴァンパイア(Vampir)」という語が西欧に広まるきっかけとなりました。

文学における吸血鬼の進化

年代作品著者吸血鬼の像
1819年『吸血鬼』ジョン・ポリドリ貴族的で魅力的な吸血鬼ルスヴン卿。初の近代的吸血鬼小説
1872年『カーミラ』シェリダン・レ・ファニュ女性吸血鬼。レズビアン的な要素を含む耽美的作品
1897年『吸血鬼ドラキュラ』ブラム・ストーカー決定版。トランシルヴァニアの城に住む伯爵。書簡体小説
1922年映画『ノスフェラトゥ』F.W.ムルナウドラキュラの無許可映画化。禿頭・長い爪のオルロック伯爵
1976年『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』アン・ライス吸血鬼を「苦悩する主人公」に転換。現代ヴァンパイアの原型
2005年『トワイライト』ステファニー・メイヤー日光で燃えず輝く。恋愛対象としての吸血鬼

ポリドリの『吸血鬼』(1819年)は、あの有名なディオダティ荘の怪奇談義(1816年)から生まれた作品です。同じ夜にメアリー・シェリーが構想したのが『フランケンシュタイン』であり、二大ホラーモンスターが同じ嵐の夜に誕生したことになります。

吸血鬼の特徴と弱点

ストーカーの『ドラキュラ』で確立され、以後の作品で継承・変形された吸血鬼の特徴を整理します。

能力

能力出典・備考
不老不死血を吸い続ける限り老いない
超人的な腕力・速度ドラキュラは片手で馬車を持ち上げる
変身(コウモリ・狼・霧)ドラキュラが変身できる形態。コウモリへの変身はストーカー以降に定着
催眠・魅了視線で人間を支配する
動物の支配狼やネズミを操る
壁を這って移動ドラキュラがハーカーに目撃される有名な場面

弱点

弱点出典・備考
日光映画『ノスフェラトゥ』(1922年)で確立。原作のドラキュラは日中も活動可能(弱体化するだけ)
ニンニクスラブの民間伝承。ドラキュラでも採用
十字架・聖水信仰の力が退ける。カトリック的世界観が前提
流水を渡れないドラキュラは潮の満ち引きの時間にのみ渡河可能
招待なしに屋内に入れない民間伝承由来。「境界を超えるには許可が必要」という呪術的観念
心臓に杭を打つスラブの伝承。死体を墓に固定する実際の埋葬習慣が元
鏡に映らない魂がない=映らない。銀の鏡(銀は清浄の象徴)が前提

吸血鬼が「日光で燃える」のは映画『ノスフェラトゥ』の発明であり、原作のドラキュラ伯爵は昼間でも外を歩けます。ただし力が弱まるため夜を好むという設定です。この「日光=即死」の設定はあまりに強力だったため、ほぼすべての後続作品が採用しました。

吸血鬼の「招待ルール」

吸血鬼が「招待なしに家に入れない」というルールは、物語に組み込むと非常に強力な装置になります。このルールがあるだけで、以下のドラマが生まれます。

• 安全だった自宅を招待した瞬間に脅威が入り込む(緊張と後悔)

• 敵に騙されて招待してしまう(欺瞞と知略の要素)

• 招待を取り消せるか否か(ルールの拡張可能性)

ポップカルチャーでの吸血鬼

作品吸血鬼の扱いポイント
『ジョジョの奇妙な冒険』第1部・第3部ディオ・ブランドー / DIO石仮面で吸血鬼化。スタンド能力と吸血鬼を融合
『月姫』(TYPE-MOON)真祖と死徒「真祖」(自然発生の吸血種)と「死徒」(真祖に噛まれた眷属)の二分類
『ヘルシング』アーカード(アルカード=ドラキュラの逆読み)最強の吸血鬼が人間側の兵器として戦う逆転構造
『吸血鬼すぐ死ぬ』ドラルク吸血鬼の弱点を徹底的にギャグ化
『化物語』キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード吸血鬼の不死性と「生きる意志」をテーマにした哲学的アプローチ
『HELLSING』ヴァンパイア組織ミレニアムナチスの吸血鬼軍団という歴史と怪物のハイブリッド
『ヴァンパイア騎士』純血種と一般種の階級社会吸血鬼の血統による身分差別を学園ものに組み込む

吸血鬼キャラクターの型の変遷

時代ごとに吸血鬼のキャラクター像がどう変化したかを整理すると、自分の作品でどの型を採用するかの参考になります。

時代代表例特徴
18世紀以前怪物型スラブ民話のヴリコラカス腐った死体。知性がなく本能で襲う
19世紀前半貴族型ポリドリのルスヴン卿魅力的で知的。社交界に紛れ込む
19世紀後半魔王型ストーカーのドラキュラ伯爵圧倒的な力と弱点を持つ。退治される対象
20世紀後半苦悩型アン・ライスのルイ人間性に悩み、不死を呪う
21世紀共存型トワイライトのカレン一家人間社会に溶け込み、恋愛の対象になる

まとめ

吸血鬼は18世紀スラブの民間伝承から出発し、ポリドリ(1819年)で貴族化、ストーカー(1897年)で決定版が作られ、アン・ライス(1976年)で苦悩する主人公に変わりました。日光・ニンニク・招待ルール・心臓の杭といった弱点のどれを採用しどれを外すかで、あなたの作品の吸血鬼の個性が決まります。


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