「自分らしいキャラクター」の作り方|個性は設定ではなく行動原理に宿る
「個性的なキャラクターを作りたい」——創作を始めた人なら、誰もが一度は考えることではないでしょうか。
でも「個性的にするなら奇抜な設定が必要?」「自分らしいキャラクターって、どうすれば作れるの?」という疑問がすぐに浮かんできます。髪の色を派手にすればいいのか。特殊な口癖をつければいいのか。
結論から言うと、個性とは設定の奇抜さではありません。行動原理の一貫性です。
この記事では、「自分らしいキャラクター」を作るための考え方を、個性の定義から具体的な設計手順まで解説します。設定テンプレートを埋めた「次のステップ」として読んでいただけると、キャラクターがぐっと動き出すはずです。
個性的とは「自分だけの世界観を持つ」こと
「個性的」と聞くと、どんなイメージを持ちますか。マニアックな趣味、奇抜なファッション、周囲と群れない一匹狼——。どこかマイナスの印象を抱く方もいるかもしれません。
しかし、個性的とは本来 「自分だけが理解できる独特の世界観を持つ」 ことです。
マイペースに自分の道を歩んでもいい。みんなと一緒に笑うことが好きでもいい。「この行為が好きだ」と心に誓い、それを守り続けている。それだけで十分に個性的です。
キャラクターに個性を持たせるとき、この原則はそのまま使えます。キャラクターが「何を大事にしているか」を決め、それを行動で一貫させる——これが個性の正体です。
たとえば『葬送のフリーレン』のフリーレン。1000年以上生きたエルフで、感情表現が乏しく、人間の時間感覚が理解できない。しかし彼女には「かつての仲間との時間を、今になって大切に思い出す」という一貫した行動原理があります。その静かな一貫性が、読者にとって圧倒的な個性として映るのです。
「個性を消さないと商業化できない」という呪い
小説を書いていると、こんな言葉を耳にすることがあります。
「個性を消さないと商業では相手にされない」
実際にそういう経験をした方もいるかもしれません。市場のトレンドに合わせて、自分のカラーを薄めなければ売れない——そんな空気は確かに存在します。
しかし、個性のない作家と作品に、そもそも魅力はあるのでしょうか。
『推しの子』の赤坂アカ先生は「アイドルものを描きたい」という個性を『かぐや様は告らせたい』のラブコメ技術と掛け合わせて、唯一無二の作品を生み出しました。個性を消したのではなく、個性の載せ方を変えたのです。
重要なのは、自分の個性をどう作品に注入するかという戦略であり、個性そのものを消すことではありません。
個性を作る2つのアプローチ
キャラクターの個性を作るとき、大きく分けて2つのアプローチがあります。
アプローチ1:属性の組み合わせ型(デフォルメ型)
「ウケる属性の組み合わせ」から世界観を導くアプローチです。
たとえば、「クール+メガネ+毒舌+実は甘いものが好き」という属性の掛け合わせでキャラクターを設計する。読者に刺さりやすい属性を選び、その組み合わせの化学反応でオリジナリティを出す方法です。
このアプローチのポイントは、組み合わせた属性ならではの物語を歩ませることです。「クールで毒舌なキャラ」は珍しくありませんが、「甘いものを食べているときだけ本音が漏れる」というエピソードが加わると、この組み合わせでしか生まれない物語が走り始めます。
アプローチ2:作者の世界観投影型(造形型)
作者自身の価値観や経験をキャラクターに反映させるアプローチです。
自分が「仕事に誇りを持っている」なら、その誇りをキャラクターに注入する。自分が「人と違うことを恐れない」性格なら、その勇気をキャラクターに背負わせる。作者の人間としての解像度が、そのままキャラクターの深みになります。
ある作家さんの言葉に、こんなものがあります。「作品に作者の人格を影響させるべきでない、と言って、それを実践した作者は皆潰れている」——。人間が書いている以上、文章には書き手の色がつき、匂いが移ります。それを否定せず、むしろ活かすのが造形型の強みです。
どちらを選ぶべきか
どちらか片方だけである必要はありません。多くのヒット作は、属性の組み合わせ型で読者の目を引き、造形型で作者にしか書けない深みを出す——両方のハイブリッドで成功しています。
たとえば『薬屋のひとりごと』の猫猫(マオマオ)。「薬学オタク+毒舌+美人なのに自覚なし」という属性の組み合わせで読者の興味を引きながら、「知識で人を助けることが生きがい」という作者の世界観が深く注入されています。だからこそ何巻読んでも飽きない魅力があるのです。
キャラクターの個性を構成する3要素
個性的なキャラクターは、内面・外面・環境の3要素から構成されます。
要素1:内面(性格・価値観)
キャラクターの個性の核となる部分です。
読者に愛されるキャラクターの内面には、いくつかの共通点があります。
• 困っている人を放っておけない
• 自分が信じるもののために戦う
• 弱さを抱えながらも前に進もうとする
注意したいのは、「愛される=完璧」ではないことです。短所や弱さがあるからこそ、読者は自分を重ねることができます。完璧超人は「すごい」と思われますが、「応援したい」とは思われにくいのです。
要素2:外面(見た目・服装・所持品)
キャラクターを視覚的に認識するための要素です。
• 服装(ユニフォーム、普段着)
• 所持品(武器、アクセサリー、愛用品)
• 身体的特徴(髪色、体型、傷やタトゥーなど)
外面の設計で重要なのは唯一性です。主人公にはその作品の中で唯一のパーソナルカラーを与えること。たとえば、50人以上のキャラクターがいる作品でも、水色の髪は主人公だけ——こうした「色の独占」がキャラクターの識別力を高めます。
パーソナルカラーの深い活用方法は、キャラクター・パーソナルカラー設計の記事で詳しく解説しています。
要素3:環境(境遇・スタート地点)
キャラクターが物語開始時点でどんな状況に置かれているか。内面を形成する背景であり、物語の起点でもあります。
• 理不尽な扱いを受けている
• 克服しがたいハンデキャップがある
• 親しい人に裏切られた
• 孤独の中にいる
環境は「なぜこのキャラクターが行動を起こすのか」という動機に直結します。『怪獣8号』の日比野カフカが「怪獣を倒す仕事をしたいのに、年齢制限で試験を受けられない」という環境に置かれているからこそ、読者はカフカの挑戦を応援したくなります。
個性設計の4つのテクニック
内面・外面・環境が揃ったら、次の4つのテクニックでさらに個性を研ぎ澄ませます。
テクニック1:カラーリング
戦隊もののように、キャラクターごとに固有の色を割り当てる手法です。ラブライブなどのアイドル作品でもおなじみですね。
ポイントは 「パーソナルカラーの唯一性を作中で守ること」。主人公の色を他のキャラクターに使わない。この徹底が、主人公を主人公たらしめます。
色だけでなく、ナンバリング(五等分の花嫁の一花〜五月)やモチーフ(動物、花、星座など)でキャラクターを識別させることもできます。
テクニック2:没個性化
あえて最初は「何の変哲もないただの高校生」として設計し、読者の自己投影を促すテクニックです。
なろう系小説で「ブラック企業で過労死→異世界転生」がテンプレ化している理由は、主人公のスタート地点を没個性にすることで、幅広い読者が「自分だったら」と想像できるからです。
ただし没個性化は諸刃の剣でもあります。主人公に個性がなさすぎると、読者が感情移入する「軸」が存在しなくなる。没個性で始めても、物語を通じて個性を獲得していくプロセスが必要です。
テクニック3:選択(引き算)
属性を盛りすぎたキャラクターは、結局何が本質かわからなくなります。
キャラクターの設定がある程度できたら、「このキャラを一言で表すなら?」 と問いかけ、属性をたった1つに絞ってみてください。「正義感の塊」「知識の鬼」「弱さを隠す強がり」——その1つが、読者がキャラクターを記憶する「タグ」になります。
テクニック4:二面性
善と悪、強さと弱さ、冷静と情熱——相反する2つの面を1人のキャラクターに同居させるテクニックです。
「普段は臆病だけど、誰かが傷つけられると豹変する」——この二面性はキャラクターの行動に意外性を生み、読者を引きつけます。
2025年のヒット作を見ても、二面性を持つキャラクターは強い。『ダンダダン』のオカルンは「オカルトオタクで気弱」×「好きな人のためなら命を張る」、『推しの子』のアクアは「芸能界で冷徹に計算する」×「家族への深い愛情」——。二面性のギャップが大きいほど、キャラクターの魅力は増していきます。
魅力とは「読者が憧れる力」
個性を作ったら、次に必要なのは魅力です。魅力とは「人の心を引きつけて夢中にさせる力」——つまり、読者が憧れる何かをキャラクターに持たせることです。
具体的には、以下の4つの力が読者を引きつけます。
| 魅力の種類 | 例 |
|---|---|
| 影響力・カリスマ性 | リーダー、政治家、アイドル。周囲を動かす人物 |
| 専門知識・技術 | 研究者、職人、天才。誰にも真似できない能力 |
| ユーモア | 場を和ませる力。読者のストレスを軽くする |
| 特殊能力・魔法 | ファンタジー作品の華。「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。」はタイトルだけで能力の魅力が伝わっている |
重要なのは、4つすべてを持たせる必要はないということ。ユーモアのある文章が書ける作者なら、ユーモアを武器にしたキャラクターで十分に戦えます。自分の強みとキャラクターの魅力を重ねることが、「自分らしいキャラクター」を作る最短ルートです。
個性と魅力を最新作で読み解く
ここまでの理論を、2025〜2026年のヒット作で確認してみましょう。
『葬送のフリーレン』— フリーレン
• 内面の個性: 感情表現が乏しい。しかし「仲間との時間の価値」を静かに噛みしめる一貫性がある
• 外面の個性: 白銀の長髪+小柄な体格。1000年以上生きたエルフには見えない外見のギャップ
• 環境: 仲間の死という喪失体験がスタート地点
• テクニック: 二面性(「感情がない」と思われているが、実は誰よりも深く人を想っている)
• 魅力: 専門知識(最強クラスの魔法使い)+静かなユーモア
『推しの子』— アクア
• 内面の個性: 復讐心と家族愛が同居する複雑な動機
• 外面の個性: 星の瞳。アイドルの息子という出自
• 環境: 母の死、芸能界という虚構の世界
• テクニック: 二面性(冷徹な計算 × 深い愛情)
• 魅力: 影響力(芸能界での策略)+ 専門知識(前世の記憶)
『薬屋のひとりごと』— 猫猫
• 内面の個性: 薬学への異常な探究心。毒を味見するほどの好奇心
• 外面の個性: 美人なのにそばかすで地味に偽装。わざと取り繕わない
• 環境: 花街で育った薬師の娘が後宮に売られる
• テクニック: 二面性(地味な見た目 × 鋭い知性)+選択(「薬オタク」に一点集中)
• 魅力: 専門知識(薬学)+ 知的なユーモア
いずれの作品も、個性と魅力がかみ合った結果として「この作品にしかいないキャラクター」が生まれています。
AI壁打ちで個性を磨く
2025年現在、ChatGPTやClaudeを使ってキャラクターの個性を壁打ちすることも有効です。
たとえば、こんなプロンプトが使えます。
> 「以下のキャラクター設定を読んで、このキャラの『二面性』を3パターン提案してください」
> 「このキャラクターの個性を一言で表すとしたら何か、5案出してください」
AIの提案をそのまま使うのではなく、「この案のここがしっくりくる」「これは違う」と取捨選択する過程で、あなた自身の判断基準——つまり「あなたらしさ」がキャラクターに注入されていきます。
まとめ:個性は行動原理の一貫性
• 個性とは「奇抜な設定」ではなく「一貫した行動原理」
• 属性型と造形型、2つのアプローチを使い分ける
• 内面・外面・環境の3要素で個性を構成する
• カラーリング・没個性化・選択・二面性の4テクニックで磨く
• 魅力(影響力・知識・ユーモア・特殊能力)を掛け合わせる
• 最終的に「自分らしさ」を注入するのは、作者であるあなた自身
設定テンプレートでキャラクターの骨格を作ったら、この記事の方法で個性を注入してみてください。テンプレートの項目が「データ」から「人間」に変わる瞬間を、きっと感じられるはずです。
さらに深く学ぶなら
• 設定テンプレートをまだ作っていない方は → キャラクターの設定項目テンプレート
• キャラの行動原理をさらに言語化したい → キャラクターの価値観ランキングを作ろう
• 設定を超えた「超意図」を理解したい → キャラ創作の本質は「超意図」にある
• 色で個性を設計したい → キャラクター・パーソナルカラー設計
• 動機の設計で共感を生みたい → 魅力的なキャラクターの動機は「怒り」である





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