「テンプレ的な青春」とは何か——そしてなぜ読者はそれに惹かれるのか
テンプレ的な青春——この言葉、ライトノベル界隈では定期的に話題にあがります。
「テンプレ的な学園モノが大好き」という声もあれば、「テンプレ的な青春を送りたかったけどできなかった」という声もある。一方で「テンプレ的な学園モノなんてつまらない」という人もいます。
私自身はテンプレ的な青春を送ることのできなかった人間です。男友達とボーリング場に入り浸ることはありましたが、彼女なんかできなくて、夏に海で水着!花火!といった青春は送れませんでした。けれど大学生になってから追体験しました。友達と海で花火をしたり、恋バナをしたり、バーベキューをしたり。その思い出はいまでも昨日のように思い出せます。
テンプレ的な青春に憧れるかどうかは人それぞれです。ただ、1つ覚えておくべきことがあります。テンプレ的な青春を好む人のほうがマジョリティだということです。
そして、テンプレ的な青春に憧れたけど実現できなかった過去を持つ人は、小説家として大成できる可能性が高いです。なぜなら読者(マジョリティ)の多くが、まさにその追体験を求めているからです。
テンプレ的な青春イベント——完全リスト
では、テンプレ的な青春に必要な要素とは何でしょうか。インターネット上でよく言われる「青春っぽい出来事」を集めてみました。創作のネタ帳として使ってみてください。
学園生活
• 主人公が天才系ヒロインに勝利し、一目置かれる
• 主人公に自分で気づいていない才能があり、測定器や試験で発覚する
• 主人公とヒロインが互いに持っていない能力を補い合う関係性
• 仲間と目標に向かって競い合い、達成する
• 美少女が転校してきて、主人公とだけ秘密を共有する
• 学園に幼馴染がいる
• ハーレム状態。ヒロインに対抗する女の子の存在。三角関係
• 学園の屋上でお昼休みを過ごす
• 子供の頃に出会った名前も知らない女の子への憧れ
• 購買部の争奪戦。席や人気のパンを奪い合う
• スマホ禁止の学校で隠れてやり取り。好きな人の連絡先をゲットする
• 昼休みに友達とバカ話。流行りの曲を歌ったり、トランプしたり
• 生徒会が異常な権力を持っている
• 何度席替えしても、好きな人が近くにいる。目が合う
学校行事
• 体育祭でライバルに勝つために遅くまで特訓。大縄跳びが本番で初成功
• 文化祭前日に夜遅くまで会場設営。メイド喫茶で好きな人の新鮮な姿
• 合唱コンクールでやる気のあるメンバーとないメンバーの仲違い。最後は一緒に頑張って優勝
• 修学旅行で恋バナ、ツーショット写真、好きな人と二人きり、告白
季節のイベント
• 校庭の桜でお花見
• 夏祭り+浴衣、花火大会、暗がりで見る好きな人のいつもと違う表情
• 海に遊びに行く、恋愛上手な友達と一緒に水着選び
• クリスマスのプレゼント選び失敗。凹んでいたら相手から「今から会えないか」と電話
• 大晦日の初日の出、お正月の初詣。冬休みの間に関係性が変わった二人
• バレンタイン前、友達と一緒にチョコレートづくり。当日、本音を言えないまま終わる
放課後と日常
• 金持ちの友人の別荘で夏合宿
• 帰り道でコロッケ買い食い、コンビニで買い食い
• 河川敷でバーベキュー
• 徹夜でカラオケ
• 夏休みの宿題を協力プレイ
• 飲食店でバイト。バイト先の先輩に恋
• 仲間と一緒にダンス練習、夜の駅で踊ったり喋ったり
• 部活動の引退ライブ。時間が足りず演奏できなかった1曲を部室で歌う
• 雨の日に借りた傘、手紙を入れて返したことから始まる恋
卒業
• 失恋後、夜の公園で親友とふたりで泣く
• 先生との交流。進路相談や恋愛相談
• 泣いていた先生にドーナツをおごってもらう
• マクドナルドで根拠のない自信をもって無茶な未来を語り合う
• 卒業式、くだらないおしゃべりが一番の思い出だったと気づく
• 卒業式、普段は怖かった体育の先生が大泣き
• 卒業した後もずっと続く友人関係。同窓会や結婚式での再会
テンプレ青春の本質——「あの頃」の設計図
リストを書き出しているだけで、体験してこなかった青春を感じました。やっぱり青春は素敵です。
しかし、ここで大事なのはテンプレのリストを並べること自体が目的ではないということです。上記のイベントは、いわば読者の感情を呼び起こすトリガーです。テンプレ的な青春が刺さる理由は、イベントの珍しさではなく、「あのとき感じたはずの感情」を追体験させるからです。
つまり創作で重要なのは、花火大会を描くことではなく、花火大会で感じる「もう少しだけ一緒にいたい」という気持ちを描くことです。
テンプレ的な青春に興味がない人でも、この原理を知っていれば創作に活かせます。テンプレイベントは感情のトリガーに過ぎず、トリガーが引く感情こそが本体だからです。
| レイヤー | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 表層(イベント) | 読者が「青春っぽい」と認識するシチュエーション | 夏祭りの花火、文化祭の準備 |
| 中層(関係性の変化) | イベントを通じて人間関係が動く | 花火をきっかけに距離が縮まる |
| 深層(感情の追体験) | 読者自身の記憶や願望と共鳴する感情 | 「もう少しだけ一緒にいたい」 |
テンプレ青春の名作から学ぶ
テンプレ的な青春を描いた作品として、やはり『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』は外せません。妙な屁理屈をこねながらぼっちな高校生活を謳歌しつつリア充を嫌い呪っていた主人公が、徐々に変わっていく物語です。テンプレ的な青春を送りたかったというトキメキを思い出させてくれます。由比ヶ浜結衣ちゃん可愛すぎるのでぜひアニメも見てください。
部活動に全精力を注ぐ青春の追体験なら『ラブライブ!』シリーズもおすすめです。仲間と一緒に目標に向かう高揚感は、テンプレ青春の王道です。
主人公だけが持っている能力でトキメキ体験ができる作品としては『その着せ替え人形は恋をする』があります。主人公とヒロインが互いの能力を補い合う協力体制が素敵です。これも先ほどのリストにある「お互いを補い合う関係性」そのものですね。
そして『五等分の花嫁』——五つ子という設定によって、容姿や家庭環境という外的な差を排除し、「内面でどの娘が好きなの?」と読者に突きつけた斬新なラブコメでした。ヒロインはみんな可愛いですし、きちんと決着をつけている点も素晴らしいです。
「テンプレ的な青春に興味がない」という人こそ読んでほしい
テンプレ的な青春に興味がないという人もいます。図書館で本を読んでいられたら幸せという人がいたら、それは素敵なことです。
ただ、創作をしているなら知っておいた方がいい事実があります。テンプレ的な青春を好む読者はマジョリティです。 そして「テンプレ的な青春に興味がない」と言っている人の多くは、自分にできるわけがないからという理由で、それらを遠ざけているのです。
これは私自身の経験からも断言できます。高校時代テンプレ的な青春を送れなかった私が、大学生になってから追体験したとき、心の底から「もっと早くやっておけばよかった」と思いました。送れなかった側の人間だからこそ、その切なさと憧れの感情を物語に込めることができます。
テンプレ的な青春を描く能力は、テンプレ的な青春を送った人間よりも、送れなかった人間の方が高い可能性があるのです。なぜなら、手に入るものより手に入らなかったものの方が輝いて見えるからです。その輝きを知っている書き手の文章は、同じ経験を持つ読者の心に深く刺さります。
テンプレ的な青春を「自分の武器」にする方法
テンプレは「手垢のついたもの」とネガティブに捉えられがちですが、別の見方もできます。
テンプレとは読者との共通言語です。「文化祭」と書くだけで、読者の頭には準備の忙しさ、いつもと違う教室の空気、好きな人の新鮮な姿——こうしたイメージが自動的に展開されます。ゼロから説明する必要がないのです。
この共通言語の上に、あなただけの感情やディテールを載せてください。
「文化祭のメイド喫茶」というテンプレに、「メイド服を着たヒロインが、照れ隠しに眼鏡を外さないでいる」というディテールを1つ足す。たったそれだけで、テンプレは「あなたの物語」になります。
テンプレ的な青春に興味がない人でも、創作活動をしているなら知っていて損はありません。テンプレ的な青春の追体験は需要がある——この事実を武器にできるかどうかは、あなた次第です。
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