『SAVE THE CATの法則』完全ガイド|15ビートで物語を組み立てる
「起承転結はわかるけど、具体的に何を書けばいいかわからない」
その悩みを解決するために生まれたのが、ブレイク・スナイダー・ビートシート(BS2)です。映画脚本術のバイブル『SAVE THE CATの法則』で紹介された、物語を15のビート(部品)に分解して組み立てるテンプレート。
起承転結が「4分割」、三幕構成が「3分割+ターニングポイント」なら、BS2は「15分割」。驚くほど具体的に「次に何を書くべきか」を教えてくれます。
『SAVE THE CATの法則』とは
ブレイク・スナイダー著『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』は、2005年の初版以来、売上が年々増加し続けている脚本術の超定番書です。
タイトルの「SAVE THE CAT(猫を救え)」とは、物語の冒頭で主人公が猫を危機から救うような読者の好感度を稼ぐシーンを入れるテクニック。ですが本書の真価はこのテクニックではなく、BS2にあります。
脚本術とはいえ、漫画・小説・ゲームシナリオ——ストーリーを扱うすべての創作者に役立つ内容です。2024年には小説版『SAVE THE CATの法則 小説についてではなくて小説について』も刊行され、小説への適用が公式に体系化されました。
ブレイク・スナイダー・ビートシート(BS2)全15ビート
BS2は三幕構成をさらに細かく分解したものです。以下に全15ビートを示します。
()内の数字は映画脚本でのページ番号目安。小説に置き換える場合は、全体を100%として比率で読み替えてください。
第1幕(全体の0〜25%)
1. オープニング・イメージ(1%)
物語の第一印象。主人公の「変化前」の姿を映す。ファイナル・イメージとの対比が生まれるように設計する。
2. テーマの提示(5%)
この物語が何についての話なのか、さりげなく提示する。登場人物の会話の中でテーマがチラッと語られることが多い。
3. セットアップ(1〜10%)
主人公の日常、人間関係、欠点、未解決の問題を一気に見せる。第3幕までに回収する伏線もここで張る。
4. きっかけ(12%)
主人公の日常を壊す「事件」。手紙が届く、誰かが死ぬ、依頼が来る——物語が動き出すトリガー。
5. 悩みのとき(12〜25%)
きっかけに対して主人公が迷う時間。「本当にやるのか?」という逡巡。ここがないと主人公が考えなしに見える。
6. 第一ターニングポイント(25%)
主人公が決断し、行動を起こす。日常を離れ、「非日常の世界」に足を踏み入れる瞬間。第1幕の終わり。
第2幕前半(全体の25〜50%)
7. サブプロット(30%)
Bストーリーの登場。多くの場合は恋愛やバディとの出会い。メインプロットとは異なる角度からテーマを補強する。
8. お楽しみ(30〜55%)
「この映画の予告編で使われるシーン」が入るパート。読者が期待した「面白いところ」を存分に見せる。この作品のジャンル的魅力の見せ場。
9. ミッドポイント(50%)
物語の折り返し地点。「仮の勝利」か「仮の敗北」が起き、状況が一変する。ここからゲームのルールが変わる。
第2幕後半(全体の50〜75%)
10. 迫り来る悪い奴ら(55〜75%)
ミッドポイント以降、敵の反撃が始まる。主人公のチームに亀裂が走り、状況は悪化の一途をたどる。
11. すべてを失って(75%)
主人公が最大の敗北を喫する。大切な人を失う、目標が粉砕される——文字通り「すべてを失う」瞬間。
12. 心の暗闇(75〜85%)
主人公がどん底に沈む時間。ここで主人公は自分自身と向き合い、内面的な変化(成長)のきっかけを掴む。
第3幕(全体の85〜100%)
13. 第二ターニングポイント(85%)
主人公が再起するきっかけ。「心の暗闇」で得た気づきやサブプロットからの助けによって、解決策を見つける。
14. フィナーレ(85〜100%)
クライマックス。主人公は第1幕の自分とは違う「変化した人間」として問題に立ち向かい、解決する。
15. ファイナル・イメージ(100%)
物語の最後の印象。オープニング・イメージとの対比で、主人公が「どう変わったか」を映す。
「ブレイク・スナイダー・ビート・シート(=BS2)」の15ビートを日本語の簡潔な文章で説明されている、こちらのツイートが大変参考になります。
BS2を小説で使うための実践ガイド
BS2はもともと映画脚本(110ページ)用のテンプレートです。小説に置き換えるには以下のように考えてください。
文字数への置き換え目安
| ビート | 割合 | 10万字の場合 | 5万字の場合 |
|---|---|---|---|
| 第1幕(1〜6) | 25% | 25,000字 | 12,500字 |
| 第2幕前半(7〜9) | 25% | 25,000字 | 12,500字 |
| 第2幕後半(10〜12) | 25% | 25,000字 | 12,500字 |
| 第3幕(13〜15) | 25% | 25,000字 | 12,500字 |
Web小説(30〜40話で1章)への適用
なろう系のような30〜40話で1章を構成するWeb小説では、1章=BS2の1サイクルとして設計できます。以下の配分は目安であり、ジャンルやテンポ感に応じて調整してください。特になろう系では「お楽しみ」パート(ビート8)に厚めに話数を割くのが定石です。読者が「これが見たくて読んでいる」パートをたっぷり見せるのが、PV維持の最大の武器です。
1〜3話 → オープニング・イメージ、テーマの提示、セットアップ
4〜5話 → きっかけ、悩みのとき
6〜7話 → 第一TP
8〜10話 → サブプロット、お楽しみ前半
11〜15話 → お楽しみ後半
16〜17話 → ミッドポイント
18〜25話 → 迫り来る悪い奴ら
26〜28話 → すべてを失って、心の暗闇
29〜30話 → 第二TP、フィナーレ
なろう系「俺TUEEE」との相性
BS2の「すべてを失って」は主人公がどん底に落ちるビートなので、「主人公最強系」と相性が悪いと思われがちです。しかし、ここを「主人公のピンチ」ではなく「ヒロインのピンチ」に置き換えると、主人公が華麗に救出する展開になり、最強系とBS2を両立できます。
10のジャンル
BS2と並んで、『SAVE THE CATの法則』が紹介するもうひとつの重要概念が「10のジャンル」です。
1. 家のなかのモンスター ――閉鎖空間×怪物
2. 金の羊毛 ――旅と成長
3. 魔法のランプ ――願いが叶う+代償
4. 難題に直面した平凡な奴 ――巻き込まれ型
5. 人生の節目 ――転機と変化
6. バディとの友情 ――相棒もの
7. なぜやったのか? ――犯罪・動機の解明
8. バカの勝利 ――愚者が賢者を打ち負かす
9. 組織のなかで ――集団と個の葛藤
10. スーパーヒーロー ――特別な力とその代償
自分の作品がどのジャンルに属するかを意識すると、BS2の各ビートで「何を書くべきか」がさらに明確になります。
たとえば「金の羊毛」(旅と成長)ならビート8「お楽しみ」は旅先での出会いや異文化との遭遇が中心になり、「家のなかのモンスター」ならビート8は怪物との一進一退の攻防戦になる。ジャンルを決めることで、BS2の各ビートを「どんな雰囲気で書くか」まで具体化できます。迷ったら、自分の作品に最も近いジャンルの代表作をBS2で分解してみてください。「あの作品のあのシーンはビート8だったのか」と気づくはずです。
AIでBS2を活用する方法
2026年現在、BS2はAIとの相性がきわめて良いツールです。
プロット壁打ちの方法:
ChatGPT/Claudeへのプロンプト例:
「以下の設定で、SAVE THE CATのビートシート(15ビート)を
作成してください。
ジャンル:〇〇
主人公:〇〇
テーマ:〇〇
セントラルクエスチョン:〇〇」
AIが出力したBS2を叩き台にして、自分の手で削り、足し、磨いていく。テンプレートの生成はAIに、選択と深化は人間に。これが現時点でのベストなワークフローです。
まとめ
BS2は「次に何を書けばいいかわからない」を解消する最強のテンプレートです。
• 三幕構成が「ざっくりしすぎて困る」→ BS2で15分割すれば解決
• 第2幕が中だるみする → ミッドポイントで折り返し点を作る
• 最強系主人公と相性が悪い → ピンチをヒロインに振れば両立可能
• AIでテンプレを自動生成 → 自分の言葉で書き直す
まずは好きな映画やアニメを15ビートに分解してみてください。驚くほど多くの作品がこのパターンに当てはまることに気づくはずです。
さらに深く学ぶなら
• 3大構成パターンの比較 → 物語の「型」入門
• 三幕構成を感情設計として使う → 三幕構成で「感情移入される物語」を書く方法
• 感情曲線を戦略的に操る → 読者の期待値を操る
• BS2の源流にある英雄神話 → キャンベルの「英雄の旅」完全ガイド