読者の満足度を高める方法|「予測」×「結果」の4象限で考える

2022年12月25日

「納得感のないバッドエンドは炎上する」——これはWeb小説界隈でよく聞く言葉です。

でも逆に、「予想通りのストーリー」にも読者は退屈します。

じゃあ一体、読者はどうなれば「満足」するのか? この記事では、「予測」と「結果」の掛け合わせで満足度を構造的に分析する4象限マトリクスを提案します。

kosiboro.work ― 腰ボロSEの創作ノウハウ550記事超|小説の書き方ガイド

満足度の4象限マトリクス

横軸に予測(想定内 ← → 想定外)、縦軸に結果の印象(ポジティブ ↑ / ネガティブ ↓)を取ります。このマトリクスを使うと、「わからないけどなんか不満」という漠然とした読者反応を、4つの箱に分類して分析できるようになります。特にWeb小説の作者にとっては、コメント欄の不満の声が「どの象限の問題なのか」を判別できるようになるのが、このフレームワークの強みです。

想定内(予測できた)想定外(予測できなかった)
ポジティブ①「期待通りだけど、期待を上回ってきた!」 → 満足②「予想できたはずなのに、予想できなかった!」 → 感動
ネガティブ③「予想通りのストーリーで退屈」 → 不満④「納得感のないバッドエンド」 → 炎上

この4象限で分類すると、狙うべきは①か②のゾーンだとわかります。

①期待通り×ポジティブ=満足

読者が「主人公は勝つだろう」と予測し、実際に勝つ。ただし、予測を上回る演出がある。

たとえば、ワンピースでルフィが強敵に勝つのは予測通り。でもその勝ち方が「そう来たか!」と思わせるとき、読者は満足します。

②想定外×ポジティブ=感動

読者が予測していなかった展開なのに、結果としてポジティブに感じる。

たとえば、リコリス・リコイルの最終話。錦木千束が生き残るのは予測通りのポジティブ結果(①)ですが、個人的に一番テンションが上がったのはミカの活躍でした。予想できたはずなのに、予想できなかった——こういう展開が②に当たります。まどかマギカのラスト「主人公がいなくなるけど神になる」も、想定外×ポジティブの典型です。

③期待通り×ネガティブ=退屈

結果がネガティブなのに想定内。つまり「あー、やっぱりそうなるよね……」という展開。テンプレ通りすぎて驚きがない。

この象限に近いと感じたら、まずは「読者の予測通りになりすぎていないか」を確認しましょう。展開の大筋は同じでも、あるシーンで予想外の要素を加えるだけで、③から①の象限に移動できることがあります。

④想定外×ネガティブ=炎上

最悪のパターン。読者が予測していなかったうえに、結果がネガティブ。「なんでこうなるの? 納得できない」という不満が爆発します。

決着を先延ばしにするような曖昧な終わり方、突然の打ち切りENDなどがここに分類されます。Web小説で「作者がエタった(未完結のまま放置)」というパターンも、読者にとっては④に該当します。期待して読み続けた時間を裏切られた感覚が、不満を炎上に変えるのです。

4象限にはバフ・デバフがかかる

面白いのは、4象限のどこに当たるかで、満足度にボーナス補正が入ることです。RPGで言うバフ・デバフ。

人によって補正の方向は異なりますが、たとえば——

②想定外×ポジティブにバフが大きい人 → サプライズ好き。どんでん返し作品を好む

①想定内×ポジティブにバフが大きい人 → 安心感重視。王道展開の名作を好む

④想定外×ネガティブにデバフが大きい人 → 裏切られることに耐性がない。ジャンルの約束を重視する

自分の読者層がどのタイプかを想定し、どの象限を狙うかを決めることが、満足度設計の第一歩です。

満足度を高める3つの実践テクニック

1. 早い段階で「予測させる」

満足の前提は予測です。予測がないところに「期待通り」も「想定外」もありません。

物語の序盤で「この物語はどこに向かうのか」を読者に示しましょう。

• 主人公の欲求を早く見せる(「海賊王に、俺はなる!」)

• 物語のゴールを暗示する(「犯人は必ず捕まる」というミステリーの約束)

• ジャンルのタグ・あらすじで期待を方向づける

2. 終盤に向けて可能性の枝を切り落とす

1話目では無限の可能性があった物語が、最終話の手前では2択にまで収束する。

• 「主人公が生きるか死ぬか」

• 「ヒロインと結ばれるか否か」

• 「世界を救えるか否か」

この収束のプロセス自体が、読者に予測をさせる行為です。枝を切り落としながら、最後に①か②のゾーンに着地させる。

3. 「狩野モデル」で考える

マーケティングの世界に「狩野モデル(Kano Model)」という顧客満足度の理論があります。これは物語にも応用できます。

当たり前品質(ないと不満、あっても当然) → ジャンルの約束。なろう系なら主人公が強いこと。恋愛なら相手の魅力

一元的品質(あると満足、ないと不満) → 展開のテンポ、文章の読みやすさ、伏線回収

魅力品質(あると感動、なくても不満にならない) → サプライズ、想定外のポジティブ展開

多くの作者は「魅力品質」ばかり追求しますが、「当たり前品質」を落とすと一瞬で炎上します。まずジャンルの約束を守り、一元的品質をクリアした上で、魅力品質を加えるのが正しい順番です。

これは実感としても納得できるはずです。たとえば「なろう系」で主人公が弱いまま終わる作品は、どんなに文章が上手くても低評価になります。「なろう系」の読者が求めている「当たり前品質」は「主人公が強いこと」だからです。一方、文学ジャンルでは「主人公が弱くても問題ない」。ジャンルによって「当たり前品質」の中身は違うのです。

4象限を使った自作チェック

あなたの物語の主要な転換点(第1話のフック、中盤の危機、クライマックス、結末)を、4象限のどこに配置しているか確認してみましょう。

転換点読者の予測実際の結果象限OK?
第1話のフック(例)平凡な日常が続く異世界に転移する② 想定外×ポジ
中盤の危機主人公が勝つ仲間が裏切る④ 想定外×ネガ⚠️一時的ならOK
クライマックス最終決戦で勝つ予想外の方法で勝つ② 想定外×ポジ
結末ヒロインと結ばれる結ばれる+感動の演出① 想定内×ポジ

最終着地が③か④になっていたら、修正が必要です。中盤に④が入るのは「一時的な絶望」として有効ですが、最後は必ず①か②で着地するのがセオリーです。

さらに深く学ぶなら

• 期待値を6パターンで操る具体的な方法 → 読者の期待値を操る

• 感情曲線のパターンカタログ → 感情曲線6パターン×物語の類型12パターン

• 予想の外し方を体系的に学ぶ → 予想の外し方

• 物語の結末を設計する → セントラルクエスチョンとは

この記事が参考になったら、ブックマーク or シェアしていただけると励みになります。

腰ボロ作家について
創作の「設定資料」と「物語の書き方」を中心に、550記事以上を公開中。
サイトトップX(Twitter)

よく読まれている記事

小説の書き方本をもっと読むなら → Kindle Unlimited