初心者ライトノベル作家必見!『「好き」を言語化する技術』で“好き”を創作の力に変える方法

2025年7月31日

三宅香帆著『「好き」を言語化する技術』を読みました。書評家として活躍する著者の「好きを伝える力」に関する本ですが、これが創作者——特にライトノベルを書いている人——にとって、予想以上に刺さる内容でした。

なぜなら「好き」を言語化できない人は、自分の作品の魅力も言語化できないからです。そして自分の作品の魅力を言語化できない人は、その魅力を意図的に作り込むこともできません。『「好き」を言語化する技術』は、あなたの情熱を的確な表現へと導き、創作の原動力に変えてくれる頼もしいガイドブックです。

創作ノウハウ200超|小説の書き方ガイド

「好き」が言語化できないとどうなるか

「好き」を言語化できない問題は、実は創作の至るところに顔を出します。

「自分はどういう物語が好きなのか」を言語化できないと、書くべき作品が定まらない。「なぜこのキャラクターが好きなのか」を言語化できないと、魅力的なキャラクターを設計できない。「この作品のどこが良かったのか」を言語化できないと、良さを自分の作品に取り込めない。

新人賞の選考でも、「面白い」の一言で片づけてしまう人と、「なぜ面白いのか」を構造的に説明できる人では、成長速度に圧倒的な差が出ます。前者は直感で書き続けるしかありませんが、後者は分析と改善のサイクルを回せるからです。

本書は「好きの言語化」の方法を体系的に解説しており、クリエイターにとっての「分析力のトレーニング本」として読めます。

「好き」を分解する5つの視点

本書では、「好き」を言語化するための複数のアプローチが紹介されていますが、創作に特に使える視点を5つに整理します。

視点1:「好き」の瞬間を特定する

「この作品が好き」ではなく、「このシーンが好き」「この台詞が好き」「この展開が好き」と、好きの瞬間を具体的に特定する。

たとえば「鬼滅の刃が好き」ではなく、「炭治郎が鬼になった禰豆子を背負って雪の中を走るシーンが好き」。ここまで絞り込んで初めて、「なぜ好きか」を分析できる。兄妹愛? 必死さ? 雪という舞台装置? 背負うという身体的行為の象徴性?

自分の「好き」を解体する訓練は、物語の魅力をどこに配置すべきかを理解する力につながります。

視点2:「好き」の裏にある感情を掘る

「好き」の正体は、実は別の感情であることが多い。本書では、「好き」の裏にある「憧れ」「共感」「驚き」「安心」「切なさ」などの感情を探ることが提案されています。

これは「推しがなぜ推しなのか」を理解する際にも使えます。「このキャラクターが好き」は入口でしかない。その裏にあるのは「こういう人間になりたい」という憧れなのか、「自分と似ている」という共感なのか、「こういう人間は現実にいない」というファンタジーなのか。

キャラクター設計において、この「好きの裏側の感情」を意図的に設計できれば、読者の感情を狙った通りに動かせるようになります。「読者はなぜこのキャラを好きになるのか」を事前に設計できる人は、キャラクターメイキングの上級者です。

視点3:比較で輪郭を出す

「好き」は、比較対象を持つことで輪郭がはっきりします。「Aが好き」よりも「BよりもAが好き」のほうが、好きの解像度が上がる。

「王道ファンタジーが好き」ではなく、「ダークファンタジーよりも王道ファンタジーが好き。なぜなら善と悪の境界が明確な世界観のほうが、カタルシスを設計しやすいから」——ここまで言えれば、自分の好みが明確になり、作品の方向性がブレにくくなります。

この「比較で言語化する」技術は、書評を書くときだけでなく、自分の作品の方向性を決めるときにも使えます。「自分はこっち側の作品が好きだ」と明確に言える人は、作風が安定します。

視点4:「好き」を構造で語る

感覚的な「好き」を、構造的な言語で表現し直す訓練です。「この展開が熱い」を「主人公が第1幕で失ったものを、第3幕で別の形で取り戻す構造が、カタルシスを生んでいる」と変換する。

これができるようになると、自分の作品に意図的に「熱さ」を組み込めるようになります。感覚的にうまくいった作品を、構造的に再現可能にする。これがプロと趣味の境目です。

視点3:比較で輪郭を出す

「好き」は、比較対象を持つことで輪郭がはっきりします。「Aが好き」よりも「BよりもAが好き」のほうが、好きの解像度が上がる。

「王道ファンタジーが好き」ではなく、「ダークファンタジーよりも王道ファンタジーが好き。なぜなら善と悪の境界が明確な世界観のほうが、カタルシスを設計しやすいから」——ここまで言えれば、自分の好みが明確になり、作品の方向性がブレにくくなります。

視点4:「好き」を構造で語る

感覚的な「好き」を、構造的な言語で表現し直す訓練です。「この展開が熱い」を「主人公が第1幕で失ったものを、第3幕で別の形で取り戻す構造が、カタルシスを生んでいる」と変換する。

これができるようになると、自分の作品に意図的に「熱さ」を組み込めるようになります。感覚的にうまくいった作品を、構造的に再現可能にする。これがプロと趣味の境目です。

視点5:自分だけのフェティシズムを見つける

本書で最も創作に使えるのがこのポイントです。「みんなが好きなもの」ではなく、「自分だけが異常に好きなもの」を言語化する。

たとえば「窓際の席が異常に好き」「雨の日の電車の音が好き」「強い女性が弱さを見せる瞬間が好き」「敗者が勝者を称えるシーンが好き」——こうした個人的なフェティシズムこそが、作品のオリジナリティの源泉です。

なぜなら、テンプレートは「みんなが好きなもの」の集合体です。テンプレに自分だけのフェティシズムを注入することで、「テンプレなのにこの作者にしか書けない」という作品が生まれます。 しかし自分のフェティシズムを言語化できなければ、それを意図的に作品に盛り込むこともできません。だから「好きの言語化」がクリエイターにとって死活的に重要なのです。

実践:自分の「好き」を言語化してみる

本書を読んだあと、実際にやってみてほしいワークがあります。

ステップ1:好きな作品を3つ挙げる
ステップ2:各作品から「最も好きなシーン」を1つ選ぶ
ステップ3:そのシーンの「何が」好きなのかを3行で説明する
ステップ4:3つのシーンに共通する要素を探す

ステップ4で見つかった共通要素が、あなたの「フェティシズム」です。それは「逆転の構造」かもしれないし、「静かな別れのシーン」かもしれないし、「絶望的な状況での笑い」かもしれない。

この共通要素を自覚できれば、次に書く作品で意図的にそれを設計できるようになります。

「好き」の解像度が上がると、作品の解像度も上がる

「好き」を言語化する力は、そのまま「自分の作品を客観視する力」に直結します。

自分の作品の1章を読み返して、「ここが好き」「ここは好きじゃない」を言えるか。言えるなら、次のステップとして「なぜ好きか」「なぜ好きじゃないか」を言語化する。それができれば、「好きな部分を増やし、好きじゃない部分を改善する」という推敲の方向性が明確になります。

多くの初心者が推敲で苦しむのは、「何を直せばいいかわからない」からです。しかし「好きの言語化」ができれば、直すべき場所は自然と見えてきます。好きじゃない理由が「テンポが遅い」なら削る。「キャラの反応が薄い」なら感情描写を足す。「好き」の言語化は、推敲の羅針盤になるのです。

「好き」を伝える力=作品を売る力

もう一つ重要なことを書いておきます。「好きを言語化する力」は、そのまま「自分の作品の魅力を説明する力」になります。

Xで新作を告知するとき、「新作書きました。読んでください」だけでは人は動きません。しかし「『強い女性が弱さを見せる瞬間』が好きな人に読んでほしい。文章でその瞬間が来ます」と書ければ、同じフェティシズムを持つ読者に刺さります。自分の「好き」を言語化できる人は、その「好き」に共鳴する読者を確実に引き寄せられるのです。

『「好き」を言語化する技術』は、表面的には書評の書き方の本ですが、本質的には「自分の感性を武器にする方法」を教えてくれる本です。感性を言語化できないクリエイターは、自分の最大の武器を使いこなせていないということ。この本で、まず「好き」を言葉にする筋肉を鍛えてみてください。その筋肉は、必ずあなたの次の作品に反映されます。「好き」を書ける人の文章は、「好き」を書けない人の文章とは、熱量が決定的に違うのです。


関連記事

エンタメとしての文章とは|恥ずかしさを削ぎ落とすか、受け入れるか

普通のことを普通に書く技術|抽象化を手放して読者に届く文章にする方法

凡人がライトノベル中級者に上がるための心構え。努力しない天才の時代は終わった

小説家に必要な能力とは|『小説家という職業』に学ぶ5つの力

この記事が参考になったら、ブックマーク or シェアしていただけると励みになります。

腰ボロ作家について
創作の「設定資料」と「物語の書き方」を中心に、550記事以上を公開中。
サイトトップX(Twitter)

よく読まれている記事

小説の書き方本をもっと読むなら → Kindle Unlimited