「どんでん返し」こそ最初に設計せよ|物語を面白くする「転」の作り方
起承転結の中で、最も面白い部分はどこか。
「転」です。
「転」が面白ければ、読者は「起」から「承」まで物語に付き合ってくれます。そして「転」で衝撃を受け、「結」に感動する。
つまり、「転」の設計が物語全体の面白さを決める。であれば——「転」を最初に決めてから、逆算して「起」「承」を組み立てるのが合理的です。
なぜ「転」を先に決めるのか
多くの書き手は「起」から順番に考えます。世界観を作り、主人公を設定し、冒険に出発させ……そしてクライマックスで行き詰まる。これは「手前の楽しい部分から手をつけて、難しい部分を後回しにする」という人間の自然な傾向によるものですが、物語づくりではこれが裏目に出ます。
「転」を後回しにすると、以下の問題が起きます。
• 盛り上がりに欠けるクライマックスになる
• 無理やりな展開で辻褄が合わなくなる
• 結局「転」がないまま終わる(最も多いパターン)
逆に、「転」を先に決めると:
• 「この衝撃に向かって伏線を仕込めばいい」と構成が明確になる
• 「起」と「承」が無駄なく設計できる
• 物語全体にテンション(張力)が生まれる
「型を知って型を破る」
モーツァルトの言葉とされる「まず型を身につけろ。型を破るのはそれからだ」は、どんでん返しの設計にも当てはまります。
どんでん返しとは、読者が「こうなるだろう」と思っている型を、意図的に裏切ること。型を知らなければ、何を裏切ればいいかもわかりません。
たとえば「ミステリーでは犬神家の主人が犯人のことが多い」という「型」を知っていれば、「じゃあ今回は犬神家の主人が犯人に見えるけど実は被害者だった、という形にしたら面白い」と考えられる。「型破り」は「型知り」の上位技術なのです。
ジャンルの定番展開を100作品分読み込んで初めて、「ここを変えたら面白い」が見えてくる。
どんでん返しの2大パターン
どんでん返しは無限にあるように見えますが、大きく2つの型に分類できます。
パターン①:「目的」に仕掛けるどんでん返し
主人公が追い求めていた目的が、想像と違う形で達成される。
花咲か爺さんの例:
おじいさんが愛犬ポチを失う(喪失)。ポチの墓に植えた木で臼を作り、餅をつくと宝が出る。隣の意地悪爺さんが真似して失敗。怒って臼を燃やす。
おじいさんが灰をまくと——桜の花が満開に咲く。
「ポチは死んだ」……しかし「ポチの命は桜として蘇った」。
目的(ポチと再会する)は文字通りには達成されない。しかし形を変えて達成される。これが「目的に仕掛けるどんでん返し」です。
設計手順:
1. 主人公の目的を設定する
2. その目的を文字通りには達成できない状況を作る
3. 目的を別の形で実現する手段を用意する
パターン②:「敵」に仕掛けるどんでん返し
真の敵が、読者(と主人公)が想定していた人物ではない。
最も強力なのは、真の敵が主人公自身だったというパターン。
二重人格のミステリーが典型例です。主人公が犯人を追い続け、最終的にたどり着いた真犯人は——自分のもう一つの人格だった。
設計手順:
1. 明確な「悪役」を序盤で提示する
2. 読者がその悪役を真の敵だと確信する展開を積む
3. 真の敵は別にいたことを「転」で明かす
このパターンの注意点は、真の敵を早い段階から伏線として登場させておくこと。「転」で急に新キャラが出てきて「こいつが黒幕でした」では読者は白けます。伏線として「そういえばあのとき……」と読者が振り返れる描写を、「起」や「承」の段階で仕込んでおくことが不可欠です。
いちばん強力な伏線は「読者がその時点では気づかないが、ネタバレ後に読み返すと『確かに』と思える」描写です。1回目では気づかないが、2回目では明らかに見える——このバランスが取れているかどうかが、プロとアマチュアの分かれ目です。
AIで「転」の選択肢を量産する
「転」は一発で決める必要はありません。複数の候補を出して、最も効果的なものを選ぶのがプロのやり方です。
AIに以下のプロンプトを投げてみてください。
> 以下の物語設定で、「どんでん返し」の候補を5つ提案してください。
> それぞれ「目的に仕掛けるパターン」と「敵に仕掛けるパターン」のどちらに該当するかも明記してください。
>
> 設定:「〇〇な主人公が△△する物語」
5つの候補があれば、そこから組み合わせたり変形したりできます。AIの提案をそのまま使うのではなく、発想の種として活用してください。
「転」の設計チェックリスト
どんでん返しを思いついたら、以下の5項目をチェックしましょう。
| チェック項目 | NG例 |
|---|---|
| ① 伏線がちゃんと「起」「承」に仕込めるか | 衝撃だけで辻褄が合わない |
| ② 読者が「そうだったのか!」と思えるか | 「は? 意味がわからない」になる |
| ③ 主人公の成長や変化に直結するか | どんでん返しが物語と無関係 |
| ④ ジャンルの暗黙の契約を破っていないか | 純愛ものでヒロイン死亡 |
| ⑤ 「転」の後に収束できるか | 広がるだけで回収できない |
5項目すべてクリアしていれば、そのどんでん返しは機能します。
まとめ
• 「転」を最初に決める → 起承が自動的に整理される
• 型を知ることが「型を破る」前提条件
• 2パターン → ①目的に仕掛ける / ②敵に仕掛ける
• AIで複数候補を出し、チェックリストで選別する
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