小説家の取材方法とは?|5つの取材パターンを使い分けて物語にリアリティを宿す
「満員電車」の風景を書くとき、作者がそれに「乗ったことがある」のか、テレビの中で「見たことがある」のか、「人づてに聞いた」のかによって、言葉の持つ重みと説得力は変わります。
書き手は常に「嘘の作り手」です。でもその嘘の中にどれだけの真実を書き込めるかが、物語の没入感を左右します。真実味のない作中風景は、読者が物語に没入することを拒みます。
だからこそ取材が重要なのです。
「取材」と聞くと、ジャーナリストが現地に飛んでいくような大仰なイメージを持つかもしれません。でも本質はとても単純です。「自分の作品に必要な情報を、何らかの方法で手に入れること」──それが小説家の取材です。
このエントリーでは、小説家が使える取材方法を5つのパターンに分けて紹介します。
パターン1:インタビュー
職人の専門知識、イベントを体験した人の生の声。こうした情報は、インタビューでしか手に入りません。
インタビューの最大の利点は、一般的な小説家はそれをやっていないという点です。ほとんどの書き手はWebや書籍で調べて終わりにします。だからこそ、自らインタビューを行った作家の作品には、他にはないリアリティが宿ります。
インタビューのコツ
一番重要なのは「質問を用意すること」です。特に以下を掘り下げましょう。
• その経験をしたきっかけ
• 良かった点と悪かった点
• 嫌だったこと、予想外だったこと
• その場での具体的な会話
表面的な情報はインターネットにも載っています。せっかくインタビューの機会を得たのに「全部ネットで調べられた」という結果にならないよう、深い質問を準備しておきましょう。
ハードルは高い──だからこそ価値がある
正直に書くと、インタビューはハードルが高い方法です。お金も時間もかかりますし、実績も肩書きもない人に協力してくれる人はなかなかいません。
ただし、「大仰な取材」だけがインタビューではありません。家族や友人、恋人に話を聞くのも立派な取材です。身近な人なら快く協力してくれるでしょう。「お父さんの仕事って、仕事て具体的にどんな一日を過ごすの?」と聞くだけで、会社員キャラクターの描写に使える一次情報が手に入ります。
小説家としてデビューすれば、編集者や出版社の関係者に協力を仰ぐこともできます。有名になれば読者の中から専門家を見つけ出すこともある。「憧れの人にインタビューするために小説家を目指す」──そんな動機があってもいいと思います。
パターン2:口コミ(人づてに聞いた話)
インタビューよりハードルが低いのが口コミです。身近に「直接の当事者」がいなくても、近しい業界で働いている人や、実際に見聞きした知人がいれば、話を聞いてみましょう。
口コミの良い点は、「面白い話・印象に残った話」だけが抽出されて共有されてくるところです。
インタビューでは生の声を得られてもつまらない話も混じります。でも口コミとして人から人へ伝わる話は、自然とフィルタリングされています。「他の人も話したくなる部分とはこういう部分なのか」という勉強にもなります。
SNSで特定の職業の人をフォローするのも、現代版の口コミ収集です。消防士や看護師、自衛官のアカウントが日常をつぶやいている──あれは全部、小説家にとって宝の山です。
パターン3:足を運ぶ
費用も時間もかかるけれど、最も強い一次情報が手に入る方法です。
たとえば「フランスの街中」を書きたいなら、実際にフランスへ行って街を散歩する。石畳を踏んだときの音、空気の匂い、日差しの強さ──これらは文字情報からは絶対に手に入りません。
漫画家が現地取材をするのは、著作権を気にせず使える背景素材を撮影する目的もあります。小説家も同様に写真を撮っておきましょう。加工すれば表紙素材にもなりますし、何より「自分がその場にいた」という記憶が、描写のリアリティを支えてくれます。
とはいえ、「フランスに行ける人」は少数派です。だからこそ次の2つのパターン──インターネットと書籍──を上手く使い分ける必要があります。
パターン4:インターネット
最も手っ取り早い取材手段です。あなたが「取材方法」で検索してこのページにたどり着いたように、あらゆる情報はインターネットで手に入ります。
メリットは明白で、家にいながら速攻で調査を進められること。設定を組み立てながらリアルタイムで検索し、すぐに執筆に反映できます。
ただし注意点がひとつ。インターネットで得た情報は、必ずしも正しいとは限りません。
必ず複数のソース(できれば複数のメディア、複数の情報元)をチェックしてください。Wikipedia一つで済ませるのは危険です。少なくとも3つ以上のソースで裏を取る習慣をつけると、「ネットで調べた嘘」を作品に混入させるリスクを大幅に減らせます。
近年はChatGPTやPerplexityといったAI検索ツールを使って調べものをする人も増えています。AI検索は「膨大な情報を要約して提示してくれる」という点で便利ですが、もっともらしい嘘を自信満々に返してくることがある点には注意が必要です。AIが出した情報を鵜呑みにせず、一次ソースまで辿って裏を取る──この姿勢は、従来のWeb検索以上に重要になります。AIを取材の「入口」として使い、そこから書籍や公式情報で補強していくのが現実的な使い方でしょう。
パターン5:書籍
最後は書籍による取材です。Web検索との最大の違いは、体系的に整理された情報が手に入ること。検索エンジンは「断片」を提供しますが、書籍は「全体像」を提供してくれます。
Kindle Unlimitedは自宅の巨大図書館
書籍での取材を積極的に行うなら、Kindle Unlimitedが便利です。月額980円で和書12万冊以上が読み放題。ヨーロッパの歴史や文化、食や風景をまとめた本が数多く公開されています。
これはまさに「家からアクセスできる巨大図書館」です。ファンタジー作品を書く上で調べたい中世の食文化、貴族の作法、城塞都市の構造──こうした知識が月額980円で手に入ります。
もちろん紙の図書館も有効です。地元の図書館には専門書がありますし、司書に相談すれば関連資料を芋づる式に教えてもらえることもあります。
5つのパターンの使い分け
まとめとして、5つの取材パターンを比較します。
| パターン | 情報の深さ | 独自性 | コスト | 時間 |
|---|---|---|---|---|
| インタビュー | 非常に深い | 高い | 高い | かかる |
| 口コミ | やや深い | 中程度 | 低い | 中程度 |
| 足を運ぶ | 非常に深い | 非常に高い | 高い | かかる |
| インターネット | 浅い〜中程度 | 低い | 無料 | 速い |
| 書籍 | 深い | 中程度 | 低〜中 | 中程度 |
理想は全パターンを組み合わせることですが、現実にはすべてに時間を割けません。物語の核心部分にはインタビューや現地取材を、背景設定にはWebと書籍を、キャラクターの生活感には口コミを──というように、シーンの重要度とシーンの性質に応じて選び分けましょう。
やはり自分の目で見て味わった体験は何よりの財産です。足を運べる取材場所があるなら、実際に現地に赴くことを強くおすすめします。でも行けない場所については、書籍という「知識の映像」で補完する。「見たこともない」のと「知識として知っている」のでは、描写の説得力がまるで違います。
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