小説の「プレミス」入門|一行で物語の核を定める技術
テーマは見つかった。でも、いざ書こうとすると手が止まる。
「友情の大切さ」がテーマだとしても、具体的にどんな話にするのかは別問題です。テーマだけでは物語は動き出しません。
そこで必要になるのが「プレミス」です。
プレミスとは何か? ――テーマを一文に凝縮する技術
プレミスとは、「プロットとテーマを伝えるたった一つの文」。物語の最小単位であり、作家が「この物語で何をするのか」を宣言するミッションでもあります。
K.M.ワイランド著『アウトラインから書く小説再入門』では、本文→プロット→アウトライン→プレミスという階層構造が示されています。
【より具体的】
本文(実際の文章)
↓
プロット(場面の連なり)
↓
アウトライン(骨格のフローチャート)
↓
プレミス(たった一文の核)
【より抽象的・本質的】
テーマが「コンパス」なら、プレミスは「目的地の座標」です。テーマは方角を示してくれますが、プレミスは「具体的にどこへ行くのか」を教えてくれます。
テーマとプレミスの違い
混同しやすいので整理しましょう。
• テーマ:抽象的な価値観。「勇気」「孤独との向き合い方」「正義とは何か」
• プレミス:テーマを具体的な行動・状況に落とし込んだ一文。「もし○○したら△△はどうなるか」
たとえば私のテーマは「勇気」です。でも「勇気」だけでは物語は書けません。
私の場合、プレミスは「境界を超えて最高のリーダーになる」。
だから主人公は障害を超えていくし、支配者と被支配者の境界を超えていくし、国際連合を率いて国境を超えていく。結果として読者に「勇気」を感じてもらえる――そういう構造になっています。代表作『境界を超えろ!』というタイトルも、このプレミスから来ています。
「もしAしたらB」構文 ――プレミスを生む魔法の一行
プレミスを作る最も強力なフレームワークが「もしAしたらB」(What if構文)です。
例:
• もし「境界を超えて最高のリーダーになる」としたら? → 最悪のリーダーとの戦い、最高のリーダー同士の対決、師匠のもとでの修行……無限にストーリーが広がる
• もし「記憶を売買できる世界」があったら → 貧しい少年は何を売り、何を買うのか?
• もし「死者と7日間だけ話せる電話」があったら → 遺された人は何を聞くのか?
このWhat if構文は、プレミスの作成だけでなくストーリー展開にも使えます。
• もし主人公が村を出るとしたら?
• もし主人公が隣国と戦争をしたら?
• もし主人公が最強の敵と戦うことになったら?
• もし主人公が結婚するとしたら?
• もし主人公が死ぬとしたら?
明言されていなくても、つきつめればどんな小説も「もし〜したら?」から始まっているはずです。
2026年版:AIでプレミスを壁打ちする
2025年以降、AIをプレミスの壁打ち相手にする書き手が増えています。ChatGPTやClaudeに自分のテーマを投げて、プレミス候補を出してもらうのです。
実践例:
「テーマは『孤独』です。異世界ファンタジーで、『もし○○したら』の形でプレミス候補を5つ提案してください」
AIの回答例:
1. もし世界で最後の魔法使いが、魔法を捨てなければ人と暮らせないとしたら
2. もし不老不死の王が、臣下が老いていく中で千年統治し続けるとしたら
3. もし言葉を失った少女が、声の代わりに魔法で意思を伝えるとしたら
もちろんAIの出力をそのまま使う必要はありません。「この方向性は考えてなかった」という気づきが得られれば十分。AIは共同著者ではなく壁打ち相手。そのスタンスは忘れずに。
レッドオーシャンに突っ込まない
プレミスが決まったら、もう一つだけ確認してください。そのプレミスで、既存の人気作と戦えるか?
たとえば「防御力に全振りする」というプレミス。悪くないアイデアですが、『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』という強力な先行作品があります。同じ土俵で勝てるか?
ひとつのプレミスに作品が集中している状況を「レッドオーシャン」といいます。ライバルが多い海域です。できれば自分のこだわりが活きるブルーオーシャンを狙いたい。
私は16年間「境界を超えて最高のリーダーになる」を考え続けてきました。16年間も同じことを考え続けたら、その分野では誰にも負ける気がしません。その自信が作品にもプラスに働きます。
あなたにも、長年考え続けてきたこだわりがあるはず。そのこだわりこそが、最強のプレミスになります。
まとめ ――プレミスがあれば、物語は動き出す
• プレミス = プロットとテーマを伝える一文 = 作家のミッション
• 「もしAしたらB」構文で、テーマからプレミスを導き出せる
• AIの壁打ちでプレミス候補を広げられる(2026年の新常識)
• レッドオーシャンを避け、自分のこだわりが活きるプレミスを選ぶ
テーマとプレミスが定まったら、次は「何を題材にするか」を考えてみましょう。
次の記事 → 面白い題材の選び方5つのヒント
あるいは「そもそも自分が何を書きたいのかわからない」という方は、こちらの思考実験をどうぞ。








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