小説の「ネタ帳」入門|書く前に始める記録の習慣

2021年9月15日

「小説を書きたい。でも、あんなストーリー思いつかない」

そう思ったことはありませんか? 何百ページものストーリーが、ある日突然ポンっと降りてくる――残念ながら、そんな奇跡はプロの作家にだってまず起きません。

でも安心してください。小説は、ひとつの巨大なひらめきから生まれるものではないのです。

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小説は「小さなネタ」の集積から生まれる

小説を書く人は、日頃から小さなネタを拾い続けています。ふと耳にした言い回し、電車で見かけた人の仕草、夢の断片――そうした「点」をいくつも集め、並べ替え、つなぎ合わせていくうちに、やがて一本の「線」になり、束ねれば「物語」が生まれます。

しかも、必要なネタの量は「書きたい量の10倍以上」。まるで星くずを延々と拾い集めるような作業です。でも、その星くずがいつか天の川になる――そう考えると、ネタ集めは小説づくりで一番ロマンチックな工程かもしれません。

「ネタ」とは何か? ――あなたの頭に浮かぶ、すべてのこと

ネタに「正解」はありません。以下のどれだって立派なネタです。

• 気になった言葉や表現(「夜明けの色は毎日違う」)

• ふと浮かんだキャラクターのイメージ(「父ゆずりの瞳をもつ少年」)

シーンの断片(「雨の駅のホームで傘を差し出す女」)

• 本・映画・音楽からの引用や感想

• 日常の違和感や疑問(「なぜあの店はいつも空いているのに潰れないのか」)

• 趣味・興味・関心事

大切なのは、この段階でふるいにかけないこと。「面白いか?」「使えるか?」と判断するのは後の話です。まずは無心で拾う。拾ったものが脈絡なくバラバラでも、何十個も重なると不思議と「線」が見えてきます。

大切なのは「記憶」ではなく「記録」

ネタ集めで最も重要なルールはたったひとつ。

「思いついたら、その場で書き留める」

アイデアは泡のように浮かんでは消えます。「あとで書こう」は「永遠に書かない」とほぼ同義です。ここがプロとアマの分かれ道だと言っても過言ではありません。

さらにもうひとつ意識してほしいのが、すべてのネタを「ひとつの場所」にまとめること。ごちゃごちゃに書き連ねて構いません。むしろ、無関係に見えるネタ同士が隣り合うことで、思いがけない組み合わせ――つまり新しいアイデアが生まれるのです。

2026年版・ネタ帳におすすめのツール

ネタ帳の形態は自由です。手書きの大学ノートでも、スマホアプリでも、大切なのは「パッと浮かんだ瞬間にすぐ書ける」こと。

スマホメモ系(すぐ書ける重視)

Google Keep ――起動が速く、タグ付けも簡単。通勤電車の中でサッと書くならこれ

Apple メモ / Google メモ ――標準アプリの安心感。端末間の同期も自動

音声メモ → 文字起こし ――歩きながら浮かんだネタは音声で。Whisperなどの文字起こしAIを使えば、あとからテキスト化できます

整理系(ネタを育てる重視)

Notion ――データベース機能でネタにタグ・ジャンル・優先度をつけて管理。育てたいネタをプロジェクト化するのに便利

Obsidian ――ネタ同士を「リンク」でつなげるツール。ネタが増えるほど関連性が可視化される。まさにネタから線を引く作業に最適

Nola ――小説執筆特化アプリ。ネタ帳→プロット→本文まで一貫して管理できる

AIブレスト活用(ネタを広げる)

2025年以降、AIをブレインストーミング相手として活用する作家が増えています。例えば:

• 「『父ゆずりの瞳をもつ少年』から連想されるストーリーを5つ提案して」とChatGPTに投げる

• 手持ちのネタ3つをClaudeに渡して「これらを組み合わせた物語のコンセプトを考えて」と頼む

AIが出してくるアイデアをそのまま使う必要はありません。大切なのは、自分のネタに「揺さぶり」をかけること。「あ、その方向は考えてなかった」という気づきが得られれば十分です。AIは共同著者ではなく、壁打ち相手。そのスタンスを忘れなければ、強力なネタ拡張ツールになります。

ネタを「育てる」3つの習慣

ネタは書き留めるだけでは「素材」のまま。以下の3つの習慣で、素材をストーリーの種に育てましょう。

1. 週に一度、ネタ帳を読み返す

書いた直後は「これ面白いのかな?」と思ったネタでも、一週間後に読み返すと「あ、これとこれ、つながるかも」と発見があります。定期的な読み返しがネタの化学反応を起こします。

2. 「もしも」を付け足す

ネタの横に「もしもこの少年が異世界に行ったら?」「もしもこの仕草の意味が真逆だったら?」と「What if」を書き足す。これだけでネタはストーリーの胚になります。

3. ネタ同士を掛け算する

無関係な2つのネタを無理やりつなげてみる。「キンモクセイの香り」×「逃走中の少女」。ちぐはぐに見える組み合わせほど、ユニークなストーリーが生まれる可能性があります。

まとめ ――「最初の一文字」の前に、ネタ帳を開こう

小説は一日にして成らず。日々集めた小さなネタに、時間と手間をかけることで、はじめて「物語」は生まれます。

だからこそ、小説をこれから書きたいと思っているあなたに最初にお伝えしたいのはこれです。

「一行目を書く前に、ネタ帳を開こう」

今日聞いた音楽の歌詞、電車で見た風景、友人の何気ない一言。それをスマホにメモするだけで、あなたはもう「小説を書く人」の一歩目を踏み出しています。

ネタが集まったら、次はストーリーの骨格を考えてみましょう。


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