もし徳川家康が総理大臣になったら|偉人キャラクターが物語に与える3つの武器
あらすじ
2020年。新型コロナの初期対応を誤った日本の首相官邸でクラスターが発生。混乱の極みに陥った日本で、政府はAIで偉人を復活させて最強内閣を作る計画を実行する。徳川家康が総理大臣、坂本龍馬が官房長官になるなど、時代を超えたオールスターで結成された内閣は日本を救えるのか!?
この作品に「やられた」と思った理由
こんにちは。腰ボロSEです。
新聞の広告欄でこの本に出会ったとき、まず思ったのは「やりたいことを全部やられた……」でした。偉人を現代に召喚して政治をやらせる——このアイデアだけで物語が成立する強さがあります。
しかも本作は、単なるアイデア勝負では終わりません。「過去の偉人というキャラクターの強さ」を存分に活かしつつ、「出落ちにならない展開」を見事に設計し、「徳川家康の幕引き」で完璧に締める。この3つの要素がきれいに噛み合っていました。
創作者として、この本から得られた3つの気づきを整理してみます。あなたがオリジナルの物語を書くときにも、きっと使えるはずです。
偉人キャラクターの最大の武器——序盤スキップ
総理大臣に徳川家康。経済産業大臣に織田信長、財務大臣に豊臣秀吉、官房長官が坂本龍馬。
このメンバーリストを見るだけで、歴史好きならワクワクしますよね。コロナ禍で痛めつけられた日本の課題を、彼らなら解決してくれる!——そんなポジティブな期待が湧いてきます。(ワクワクする物語とはで、このワクワクの正体を掘り下げています)
では、なぜ読者は「彼らなら大丈夫」と信頼できるのでしょうか。
答えは圧倒的な名声と実績です。生まれの良さ、人から慕われた人柄、誰よりも優秀であった——という事実が、歴史の教科書を通じてすでに読者の中にあります。(指揮官の名声値を高める4つの考え方も参考にしてみてください)
偉人を使えば「成長パート」を省略できる
これこそが、偉人をキャラクターに据える最大のメリットです。
通常、物語というのは小さな課題解決から始めて、次第に大きな敵に立ち向かっていくものですよね。『鬼滅の刃』の竈門炭治郎も、最初は鬼殺隊の入隊試験からスタートしています。読者にキャラクターの実力を信じてもらうために、段階的な成長描写が必要になります。
ですが偉人を登場させる場合、この段階をまるごとスキップできます。いきなり国家レベルの巨大な課題に立ち向かわせても、「あの徳川家康なら勝てるだろう」と思わせられるのです。
偉人ものを自作に応用するなら
| 要素 | 偉人キャラの強み | オリジナルキャラとの違い |
|---|---|---|
| 序盤の信頼構築 | 歴史的実績で即座に獲得 | エピソードの積み重ねが必要 |
| キャラの言動 | 読者の「イメージ通り」が武器になる | ゼロから個性を建てる必要がある |
| 物語のスケール | 初手から国家・世界規模が可能 | 段階的にスケールアップが必要 |
たとえばあなたが歴史ファンタジーを書くなら、「AI復活」のようなギミックを使わずとも、転生ものや異世界召喚で偉人の実績を持ち込めます。序盤の退屈を回避する有効な手段として、覚えておいて損はないでしょう。
出落ちにならない展開——坂本龍馬という相棒の設計
乱世を生き抜いた英傑たちの、けた外れのリーダーシップ。「最強内閣」が日本の問題をどう解決していくか——これだけで読者は惹きつけられます。序盤の150ページほどは、最強内閣の圧倒的な活躍が描かれていました。
総理大臣の徳川家康、経済産業大臣の織田信長、財務大臣の豊臣秀吉、官房長官の坂本龍馬が、「実際にこんな風にしゃべるだろうな」というイメージ通りの言動で課題を解決していきます。
最強内閣の「内部の問題」が物語を動かす
ですが「最強内閣が凄い!」の一辺倒では、物語をどう収束させるのか見えなくなりますよね。
そこで本作は最強内閣の内部にトラブルの種を撒きます。中盤以降は外の問題と中の問題が並行して描かれ、その中で坂本龍馬が主人公の相棒としてフォーカスされていくのです。
この設計が見事でした。
戦国武将や並み居る大名の中で、坂本龍馬だけは確かに異質な存在です。規律を守るというより、どちらかというと壊す側に立った人ですし、ゼロから新しい国をつくろうとした志の持ち主でしたからね。家康や信長は仰ぎ見る存在にはなりますが、共に未来を切り開いていく仲間にはなりにくい。読者の「相棒」になれるのは、やはり龍馬です。
出落ちを回避する構成テクニック
本作の構成を整理すると、出落ちを回避する明確なパターンが見えてきます。
| フェーズ | 役割 | キーキャラ |
|---|---|---|
| 序盤(〜150P) | 最強内閣の圧倒的活躍で読者を掴む | 家康・信長・秀吉(仰ぎ見る存在) |
| 中盤 | 内部の問題が浮上し、物語に緊張感が生まれる | 龍馬(相棒として主人公と共に動く) |
| 終盤 | 内部問題の解決と幕引き | 家康(偉人のバックボーンで締める) |
「仰ぎ見る存在で読者の注意を引きつけ、中盤は相棒と共に内部の問題に立ち向かう」——この展開のおかげで、単なる出落ち作品にならずに最後まで駆け抜けられたのだと感じます。
あなたが群像劇やチームものを書くときにも、この「序盤の華」と「中盤の相棒」を分ける構成は応用しやすいのではないでしょうか。
徳川家康の幕引き——偉人のバックボーンが締めの言葉に説得力を与える
龍馬とともに最強内閣内部の問題を解決した後、次の課題は「どうやってこの最強内閣を卒業させるか」です。ここで完璧な幕引きを行ったのが、徳川家康でした。
Web小説であれば「最強内閣」がそのまま居座るストーリーを選んだかもしれません。その方が続編もつくりやすいですからね。ですが本作は一冊で物語を終わらせるために、AIがつくった最強内閣から人間への引き継ぎを描きました。
偉人だからこそ言える「最後の言葉」
徳川家康の最後の言葉は、偉人というキャラクターの強さを存分に活かしたものでした。
たった一冊で描いたエピソードだけでは、最強内閣を納得感をもって幕引きさせる言葉を生み出すのは難しいでしょう。ですがそこには徳川家康という偉人の、260年の太平を築いたバックボーンがあります。だからこそ広い視野の言葉に、グッと説得力が出るのです。
私も、あんなセリフで自分の物語を締めてみたいと思いました。ですがオリジナルのキャラクターにこの言葉を発させるには、本編の中で長い長い積み重ねが必要になります。それをこの本は、偉人のバックボーンを活用して一冊で描いてみせた。素晴らしかったです。
龍馬の言葉が突き刺さる——「わしらがつくりたかったのはこういう平和ではないぜよ」
作家としての気づきとは別に、一読者として深く考えさせられたシーンがあります。
幕末を生き、大政奉還を成し遂げた龍馬が放った言葉です。
> 「わしらがつくりたかったのはこういう平和ではないぜよ。わしらが流した血はこういう国のためではないきに」
現代は幸せな社会ですが、過去の偉人たちが命がけでつくってきた大河の先にある社会です。国会での居眠りや責任のたらい回しに慣れてしまった私たちに、この言葉は刺さりますよね。
物語を書く人間としても、自分のキャラクターにこれほどの重みを持った言葉を言わせられるだろうか——と考えさせられました。
まとめ
『もし徳川家康が総理大臣になったら』から得られた創作の気づきを、改めて整理します。
| 気づき | 内容 |
|---|---|
| 偉人キャラの最大の武器 | 歴史的実績により、序盤の成長物語をスキップできる |
| 出落ち回避の構成術 | 序盤は「仰ぎ見る存在」で掴み、中盤は「相棒」で物語を深める |
| 偉人のバックボーンで締める | オリジナルキャラでは積み重ねが必要な重みを、一冊で実現できる |
偉人ものは「キャラクターの実績を読者が最初から知っている」という、ほかのジャンルにはない強力なアドバンテージがあります。歴史ファンタジーや転生ものを書いている方は、この仕組みを意識するだけで、序盤の構成がグッと楽になるのではないでしょうか。
どうですか、書ける気がしてきましたか?
もし悩むことがあったら、このブログに戻ってきてください。同じように初心者だった私が、基礎から応用まで気づいたことを書き綴っています。
さあ、今日も物語を書きましょう。あなたの傑作を待っています。