異世界シャワー問題を考える|衛生面とご飯はリアル中世派?それとも現代日本派?
ファンタジー小説を書いているとき、「この時代設定でこんな便利なものがあっていいのかな」と手が止まってしまうことはありませんか。
この記事では「異世界ファンタジーにおけるシャワー問題」について解説します。
読者が本当に求めているリアリティの度合いと、あえて非現実的な「現代日本の便利な設定」を組み込む方法がわかります。
異世界シャワー問題とは何か
そもそも「異世界シャワー問題」とは何でしょうか。
数年前にSNSなどで大きく/議論になった、今でも創作界隈で度々話題に上がるこのテーマ。発端は、とあるSF作家の提起でした。
山本弘氏の提起から始まった議論
事の発端は、SF作家の山本弘氏が平坂読氏の『JKハルは異世界で娼婦になった』について言及した一言でした。
「シャワーが終ったら、バスタオルを巻いて出てきた。……異世界にシャワーがある?」
ここから、異世界にシャワーが……?というツッコミが起きたのです。
シャワーといえば、コックを捻れば適温のお湯が安定して出る、極めて高度なテクノロジー装置です。地球の歴史を見ても、私たちが想像するような温水シャワーが一般家庭に普及したのは、給湯器が発達した近現代以降のこと。
山本氏の「それでは中世ヨーロッパの異世界観に合わないのではないか」という指摘は、大きな波紋を呼びました。
賛成派と反対派それぞれの視点
この問題に対して、ネット上では賛成派と反対派、さまざまな声が上がりました。
山本氏の指摘に賛同する人たちは、「それではリアリティが損なわれる。中世ヨーロッパをモデルにするなら、当時の不衛生な環境や、水を得るための苦労をしっかり描くべきだ」と考えました。架空の世界観に現実とのズレが生じると、そこに違和感を覚えて没入感が削がれてしまうからです。
一方で、反対派の人たちは「細かすぎる」と反発しました。「魔法がある世界なら、魔法でシャワーの代替品を作っていいじゃないか」「現代人が転生したなら、魔法やチート能力で現代の快適な生活を再現しようとするのは人間の心理として当然だ」といった意見です。
読者が求めているのは「リアリティ」か「ファンタジー」か
では、ファンタジックな世界観と、現代的な利便性のどちらを優先すべきなのでしょうか。
ここで重要なのは、あなたの小説の「読者層」と「ジャンル」です。
ハイファンタジーや本格的な架空歴史を描くのであれば、世界の技術レベルや衛生概念を緻密に設定することがリアリティを生み出します。
しかし、もしあなたが「異世界系ライトノベル」の読者をターゲットにしているなら、話は別です。
「異世界系ライトノベル」では「現代日本の便利さ」が求められる
結論から言うと、「異世界系ライトノベル」においては、圧倒的に「現代日本の便利さ」が優先される傾向にあります。
なぜ「現代の価値観」が求められるのか?
現実の生活に疲れている読者は、物語の中でまで不便な思いをしたり、不衛生な環境をリアルに想像したりしたくありません。彼らが求めているのは、ストレスフリーな体験です。
たとえば、異世界転生した主人公が、現代日本の知識を使ってマヨネーズや醤油を作ったり、美味しいご飯にありついたりする描写は、異世界系ジャンルの定番中の定番です。
読者は、主人公が魔法やスキルを使って「現代の快適な暮らし」を異世界で再現していく過程を楽しんでいます。そこに、実際の歴史考証や中世ヨーロッパのリアリティは、必ずしも必要ではないのです。
「都合の良さ」と「説得力」の両立
だからといって、「何でもあり」にしてしまうと、今度は物語としての面白さが損なわれてしまいます。異世界に現代のアイテムを登場させる場合は、読者が納得できるような「説得力(言い訳)」を用意することが重要です。
たとえば、「水属性の魔法と火属性の魔法を組み合わせてお湯を出し、風属性の魔法で圧力をかけてシャワーにする」といった設定です。
「水が出せる」「火が出せる」といった基本的な魔法のルールさえ設定しておけば、それを応用してシャワーを再現することは可能です。このように、魔法というファンタジーの要素を使って現代の利便性を説明することで、読者は違和感なく物語を受け入れることができます。
「説得力」を持たせる3つのテクニック
異世界に現代の要素を持ち込む際、読者を納得させるための主なテクニックは以下の3つです。
1. 魔法やスキルの応用: 上記のシャワーの例のように、魔法を組み合わせて現代の技術を代替する。
2. ロストテクノロジー(古代文明の遺物): かつて高度な文明が存在し、現代レベルのアイテムが「発掘」される設定にする。
3. 異世界人の発明: 主人公以外の「過去の転生者」や、異世界の天才的な発明家が、現代に近いアイテムをすでに開発していたことにする。
これらのテクニックを活用することで、世界観を壊すことなく、主人公を快適に活躍させることができます。
世界観設定における「引き算」の視点
とはいえ、何でもかんでも現代の便利さで埋め尽くしてしまうと、それはもはや異世界ではなく、「コスプレをした現代日本」になってしまいます。
あえて「不便さ」を残すことでリアリティを演出する
ファンタジー世界であることを読者に印象付けるためには、意図的に「現代よりも不便な点」を残すことが効果的です。
すべてを便利にするのではなく、「主人公がどうしても我慢できないこと」をひとつかふたつだけ設定し、それを魔法や知識で解決するというストーリー展開は、読者の共感を得やすく、物語の動機付けにもなります。
たとえば、「食事は美味しいが、娯楽が全くない世界」や「魔法で何でもできるが、通信手段だけは手紙のみの世界」といったように、特定の分野だけ技術レベルを下げることで、物語にメリハリが生まれます。
「シャワー問題」が教えてくれること
「異世界シャワー問題」は、単なる揚げ足取りではありません。それは、作者が「この世界はどのような技術レベルで、人々はどのような生活をしているのか」を考えるきっかけを与えてくれる重要な問いかけです。
重要なのは、「中世ヨーロッパはこうだったから」と歴史的事実に縛られることではなく、「あなたが描きたい物語にとって、どのような世界観が最適か」を選択することです。
シャワーを出したければ、堂々と出せばいいのです。ただし、そこには読者を納得させるだけの「説得力」が必要です。
まとめ
本記事では以下の内容を解説しました。
• 異世界シャワー問題とは: ファンタジー世界における現代的利便性の有無を問う議論。
• ライトノベルにおける正解: 読者はリアリティよりも「ストレスフリーな快適さ」を求めている。
• 説得力の持たせ方: 魔法の応用やロストテクノロジーなど、世界観に合わせた「理由」を用意する。
• 引き算の視点: あえて不便さを残すことで、世界観のリアリティと物語の展開を生み出す。
「リアリティ」と「ファンタジー」のバランスは、作品のジャンルや読者層によって変わります。
ぜひあなたの作品に合った世界観を見つけて、読者を没入させる物語を紡いでください。