読点を打つ4パターン|論理的に読点の位置を決める方法

2020年1月12日

「読点って、どこに打てばいいんですか?」——この質問、実は文章の専門家でも答えるのが難しい問いです。

なぜなら、日本語の読点には英語のカンマのような厳密な文法規則がほとんどないからです。教科書に載っている「息継ぎの場所に打つ」というアドバイスも間違いではありませんが、それだけでは体系的に使いこなせません。

この記事では、読点の打ち方を4つのパターン(流派)に分類し、それぞれの考え方と具体例を解説します。自分に合ったパターンを見つけ、読点を感覚ではなく論理で打てるようになることが目標です。

(感覚的な読点テクニックについては、姉妹記事「強調の読点|太宰治に学ぶ感覚派のための読点テクニック」をご覧ください。)

パターン① 長さ派——文が長くなったら打つ

最もシンプルな考え方です。一定の文字数ごとに読点を打って、読者の息継ぎポイントを作る。

目安

16〜20文字を超えたら読点を入れることを検討する。

❌(読点なし・43文字)
> 昨日の夜遅くに帰宅した彼は冷蔵庫を開けて残り物のカレーを温めてリビングで一人黙々と食べた。

⭕(長さで分割)
> 昨日の夜遅くに帰宅した彼は、冷蔵庫を開けて残り物のカレーを温め、リビングで一人黙々と食べた。

メリットとデメリット

メリット: 機械的に適用できるので迷わない。長い文の可読性を確保できる。

デメリット: 文の意味に関係なく打つため、意味の区切りとずれることがある。

長さ派は最低限の読みやすさを確保するのに有効です。特に、初稿を書くときの「とりあえずの読点」として使えます。

パターン② 意味派——意味のまとまりで打つ

内容の区切り(意味の境目)で読点を打つ考え方です。

基本ルール

「場面・時間・条件」が切り替わるタイミングで読点を入れます。

> 朝起きたら窓の外が真っ白だった。

「朝起きたら」(条件)→「窓の外が真っ白」(結果)の境目に読点を打っています。

意味派が特に有効な場面——誤読防止

意味の区切りが曖昧だと、読者が誤読する可能性があります。

❌(誤読の危険がある)
> 彼女は笑いながら走る弟を追いかけた。

この文は2通りに読めます。

• A:彼女は笑いながら、走る弟を追いかけた。(笑っているのは彼女)

• B:彼女は、笑いながら走る弟を追いかけた。(笑っているのは弟)

読点1つで意味が確定します。これは長さ派では解決できない問題で、意味派の読点が真価を発揮する場面です。

メリットとデメリット

メリット: 誤読を防げる。読者の理解を正確に導ける。

デメリット: 「意味のまとまり」は書き手によって判断が分かれるため、絶対的なルールにはならない。

パターン③ 分かち書き派——主語に打つ

何がどうした」の「何が」の後に打つシンプルな考え方です。

> 猫は窓辺で日向ぼっこをしていた。
> 私は昨日読んだ本のことが頭から離れなかった。

なぜ主語の後に読点を打つのか

日本語は主語が文頭に来ても途中に来ても文法的に問題ないため、地の文では主語を見失いやすいという特徴があります。主語の後に読点を打つことで、「ここまでが主語ですよ」という印を残せます。

メリットとデメリット

メリット: ルールが明確で迷わない。主語と述語の関係が見えやすくなる。

デメリット: 主語が短い場合(「私は、」など)に読点が過剰に見えることがある。

実用的なコツ: 主語が3文字以下の場合は読点を省いても問題ありません。

> 「私は昨日映画を見た。」 ← 自然
> 「田中先輩は、昨日映画を見たそうだ。」 ← 読みやすい

パターン④ 構造派——文の構造に従って打つ

4つのパターンの中で最も体系的な考え方です。文法的な構造に基づいて読点を打ちます。

構造派の主なルール

① 接続詞の後に打つ
> しかし彼には別の考えがあった。
> たとえば次のようなケースが考えられる。

② 条件節の後に打つ
> もし雨が降ったら試合は中止になる。
> 彼が来なければ計画は変更だ。

③ 並列する要素を区切る
> 赤黄色の旗が並んでいた。
> 読んで書いてまた読む。それが文章力の基本だ。

④ 挿入節の前後に打つ
> 彼は誰もが認める天才だったが努力を怠らなかった。

メリットとデメリット

メリット: 最も再現性が高い。他の人が読んでも「なぜここに読点があるか」が理解できる。論理的な文章(論文、技術文書)に特に向いている。

デメリット: 小説では、構造に厳密に従うとリズムが堅くなることがある。

どのパターンを選ぶべきか

結論から言えば、4つすべてを使い分けるのが理想です。

しかし、いきなり4つを同時に意識するのは難しいので、以下の段階を推奨します。

ステップ1:長さ派で「とりあえず」打つ

初稿や下書きでは、長い文に読点を入れて息継ぎポイントを作る。

ステップ2:意味派で「誤読防止」をチェック

推敲時に、2通りに読める文がないか確認し、読点で意味を確定させる。

ステップ3:構造派で「骨格」を整える

接続詞の後、条件節の後、並列要素——文法的な読点を適切に配置する。

ステップ4:最後に「引き算」する

打ちすぎた読点を削る。音読して、不要な「間」がないか確認する。

読点は足すより引くほうが難しい」というのが、多くの文章指南で語られる格言です。足す段階(ステップ1〜3)は論理で対処できますが、引く段階(ステップ4)は感覚とリズムの問題になります。ここで姉妹記事「強調の読点」の知識が活きてきます。

読点の悩みに対するFAQ

Q. 読点が多すぎるとどうなる?

テンポが悪くなり、文章が「ぶつ切り」に感じられます。読者は一つ一つの区切りで立ち止まるため、文のスピード感が失われます。

Q. 読点が少なすぎるとどうなる?

文が長く見え、読者の目が滑ります。特にスマートフォンで読む場合、読点がないと「壁のような文」に見えてしまいます。

Q. プロの作家は読点をどう打っている?

作家によって千差万別です。村上春樹は読点が少なめ、太宰治は独特のリズムで多め。大切なのは「自分のスタイル」を持つことであり、そのためにはルールを知った上で、意図的に崩すことが必要です。

まとめ——読点は「読者のための道しるべ」

読点の4パターンをまとめます。

1. 長さ派 → 16〜20文字を超えたら打つ。初稿向き。
2. 意味派 → 意味の区切りで打つ。誤読防止に最強。
3. 分かち書き派 → 主語の後に打つ。シンプルで堅実。
4. 構造派 → 接続詞・条件節・並列で打つ。最も体系的。

読点は、読者が文章の中で迷わないための道しるべです。「ここで一呼吸」「ここが主語」「ここで意味が切り替わる」——そのサインを、論理的に配置していく。

感覚で打てるようになるのは、論理を身につけた「その先」にあるものです。まずは4つのパターンを意識するところから始めてみてください。


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