小説の10の落とし穴|初心者が踏みがちなNGパターンとリカバリー術

10年前の自作を読み返し、床を転げ回りました。過去の自分の原稿は、恥ずかしさの塊です。「なぜこれを応募した」「なぜこれが面白いと思った」——そんな痛みを、今日はあなたに共有させてください(道連れ)。

この記事は、私が自分でやらかしてきたNGパターンと、投稿サイトや講評で繰り返し指摘される失敗を、10個に厳選して棚卸し したものです。叱るためではなく、自分の原稿をチェックするリスト として使ってもらえれば。

「あ、これやってる」と思った項目が一つでもあれば、もう今日の収穫は確定です。一緒に原稿を救いましょう。


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冒頭でやりがちなNG(2つ)

NG①:「目覚め」と「鏡」の冒頭テンプレ

「朝の光が差し込み、主人公は目を覚ました」——投稿サイトの1ページ目で最もよく見る冒頭です。そして目覚めた主人公が次にすること。鏡を見る。「鏡に映った俺は、金髪に切れ長の目で、やせ型……」。説明のための鏡。読者は全員気づきます。

なぜダメか。読者が「この人が誰で、なぜ読むべきか」を知らないまま、日常に付き合わされる からです。しかも容姿説明のためだけに鏡を登場させると、「ああ、段取りだな」と読者に構造が透ける。

リカバリー:異変から始める か、行動の途中から始める 。「気がつけば、俺は知らない森で倒れていた」「三秒後、俺は女を殴り倒していた」。容姿は動作で見せる。「前髪が目に入ってうっとうしい」「長身のせいで鴨居に頭をぶつけた」。鏡はいりません。

NG②:情報の洪水で読者を溺れさせる

プロローグで「その世界には魔法があり、人間と亜人種が争い、300年前の戦争で——」と怒涛の説明。あるいは1話目に年表と地図と魔法体系をまとめて投下する。せっかく作ったから語りたい気持ちは分かる。でも読者はまだ主人公に感情移入していないので、情報を受け取る動機がない んです。

「この村では魔法が禁じられている」と説明を先に書くより、「魔法を使ったことが村人に見られた瞬間から物語を始める」ほうが、同じ情報を読者に自然に届けられる。読者はストーリーを見に来たのであって、設定資料集を見に来たのではないのです。

リカバリー:読者が その話で知る必要のある情報だけ を出す。体感としては3割出し、7割は作者だけの秘密。プロローグを削って、第1話で情報を シーンと一緒に 出す。主人公が亜人に遭遇したときに初めて「ああ、この世界には亜人がいるんだ」と読者が知る。体験 > 説明 の原則です。


台詞でやりがちなNG(2つ)

NG③:説明台詞(エクスポジション・ダンプ)

「知っての通り、この国では魔法使いは王家に仕える義務があり、これは300年前の大戦で——」。知ってるなら言うなよ、と読者は思います。

リカバリー:情報を知らない人物 を場に置く。異世界から来た主人公、新人の騎士、田舎から出てきた少女。彼らに質問させれば、説明が自然に生まれます。

NG④:「ふふっ」「クスッ」「ふぅ……」多用

擬音・感嘆詞の多用は、小説を エッセイやチャット風 に見せます。短くは効くが、続くと雑音になります。

リカバリー:感情の表出は 身体の描写 に置き換える。「ふふっと笑った」→「口角が少し上がった」。1シーンに擬音を置くのは1〜2回まで、が個人的なルールです。


展開でやりがちなNG(3つ)

NG⑤:中盤で本筋が行方不明になる

目的地に向かう途中、街に立ち寄って事件を解決し、また次の街で事件を解決し……延々続く。寄り道が面白くても、読者は いつ本筋に戻るんだ とジリジリしています。作者は結末を知っているから寄り道が苦にならない。でも読者は知らない。読者にとって「話が進まない」は基本的にストレスである、という事実を忘れてはいけません。

リカバリー:各エピソードの終わりに 本筋への接続を一行 入れる。「そうして一つの街を後にした俺は、やはり彼の行方を追わねばならなかった」。寄り道しても、読者に「全体のゴールは近づいている」と感じさせれば離脱しません。

NG⑥:クライマックスが短すぎる/長すぎる

ラスボス戦が3行で終わる、もしくは40話続く。どちらも読者の感情曲線を裏切ります。

リカバリー:伏線回収の数 × 1シーン を目安にする。伏線を5本回収するなら5シーン、2本なら2シーン。積み上げた分だけ、読者は長い決戦を許してくれます。

NG⑦:急に主人公が覚醒する

ラスボスに追い詰められた主人公が、突然「覚醒」して勝つ。これ、読者は 書き手が困ったから と分かります。

リカバリー:覚醒には 代償 を必ず付ける。寿命、記憶、仲間の命。代償がある覚醒は感動、代償がない覚醒は白けます。


キャラ・設定でやりがちなNG(3つ)

NG⑧:完璧すぎて摩擦ゼロの主人公

容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群、性格温厚、誰からも愛される——一見理想的ですが、読者は完璧なキャラに感情移入しにくい。なぜなら 自分との共通点がない からです。物語が動くのはキャラクターの欠点が世界と摩擦を起こしたとき。摩擦ゼロのキャラは、世界を滑っていくだけです。

これは「チート能力でどんな敵も瞬殺」パターンにも言えます。作者は気持ちいいかもしれませんが、読者は緊張感を失います 。強さは制約とセットで初めて輝く。「ドラゴンボール」でも最初は気を溜めないと撃てない。

リカバリー:一つだけ致命的な欠陥 を与える。極度の方向音痴、赤面症、特定の食べ物だけ極端に苦手、幼少期のトラウマで声が出ない夜がある。強さには 使用回数、時間制限、代償、制御不能な暴走 のどれかを付ける。欠陥と制約が魅力を立ち上げ、読者が「分かる」と感じる接点が生まれます。

NG⑨:モブキャラ全員が敵

主人公の周りにいる脇役が、全員主人公を嫉妬・嫌悪する。物語が 被害者劇 になります。

リカバリー:脇役に 主人公と関係ない独立した目的 を与える。酒場の店主は娘の結婚を気にしている。騎士団長は昇進の裏取引に悩んでいる。主人公の物語と 並走する小さな物語 を脇役に持たせれば、世界が生きます。

NG⑩:貨幣・距離・時間の単位がブレる

ある章では「1ゴールドでパンが買える」、別の章では「100ゴールドで宿に泊まれる」、さらに別の章では「金貨一枚で馬が買える」。読者は経済感覚を掴めず、世界が嘘くさくなります。

リカバリー:小さな表 を一枚作っておく。パン1個=10銅貨、宿1泊=50銅貨、剣1本=3銀貨、馬1頭=10金貨。これだけで全体の経済が立ち上がります。

『狼と香辛料』の世界が生き生きしているのは、ホロとロレンスが 具体的な数字と通貨で経済を語る からです。数字の背後に欲望と危険があり、それが物語の燃料になっている。設定の厳密さは、物語の推進力そのものです。


NGチェックリスト(印刷用)

最後に、原稿チェックに使えるリストを置いておきます。

#チェック項目OK/NG
1冒頭は「目覚め」「鏡」で始まっていないか
2設定はその話で必要な3割だけ出しているか
3説明台詞を「知らない人物」経由にしているか
4擬音・感嘆詞を多用しすぎていないか
5中盤で本筋のゴールバーを読者に見せているか
6クライマックスの長さは伏線数に見合っているか
7覚醒に代償を付けているか
8主人公に致命的な欠陥を一つ付けたか。強さに制約があるか
9脇役に独立した目的を与えているか
10通貨・距離・時間の単位を統一しているか

まとめ

• 冒頭NGの鉄板は 目覚め+鏡のテンプレ/情報の洪水 。最初の1ページで決まる
• 台詞NGは 説明台詞/擬音過多 の2つ
• 展開NGは 本筋行方不明/クライマックスの尺/急覚醒 の3つ
• キャラ・設定NGは 摩擦ゼロの完璧主人公/脇役全員敵/単位のブレ の3つ

NGって、書いているときは意外と気づかないんです。自分の作品にあまりに近いから。でも一度印刷して、3日寝かせて、他人のつもりで読むと、過去の自分が書いた「冒頭の目覚めシーン」が地雷のように現れます

落ち込む必要はありません。NGに気づけたということは、あなたの目がそれを見抜けるレベルに育ったということ。NGの数だけ、あなたの書き手としての感度は上がっています

腰は壊しても、筆と自己ツッコミ力は折らない。今日もコルセットを締めて、過去の原稿と一緒に床を転げ回りましょう。そして、明日はちょっとだけマシな一行を書きましょう。


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