陰陽説と五行説|東洋ファンタジーの魔法体系を設計する基礎知識

2022年6月24日

「陰陽説」と「五行説」は、東洋風ファンタジーの世界観を設計する際に欠かせない基礎知識です。西洋ファンタジーが四大元素(地・水・火・風)を基盤にしているのと同じように、東洋ファンタジーでは陰陽と五行が魔法体系の骨格になります。

本記事では、陰陽説と五行説の基本構造を解説し、ファンタジー世界の設定にどう活かすかを具体的に紹介します。西洋の四大元素とは異なる「循環型」の思想を理解すれば、属性魔法に新たな切り口を加えることができます。特に「相生」と「相克」の関係性は、キャラクターの能力設計や国家間の力関係に直接応用できる強力なフレームワークです。

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陰陽説とは

「陰陽説」は、あらゆるものは「陰」と「陽」の二気が調和して成立しているという思想です。古代中国で生まれ、道教を通じて東アジア全域に広まりました。

区分
自然闇・水・地・冬・月光・火・天・夏・太陽
性質静・冷・柔・受動動・熱・剛・能動
生物植物・女性動物・男性

ここで重要なのは、陰は「悪」ではないという点です。陰陽思想において、世界は陰と陽が互いに消長し、調和することで安定しています。どちらか一方を滅ぼせば、もう一方も存在できなくなるのです。

この「善悪二元論ではない対立構造」は、西洋的な「光=善、闇=悪」という構図に慣れた読者に新鮮な驚きを与えることができます。

陰陽の変化 — 太極図が示すもの

陰陽を象徴する太極図(白黒の勾玉模様)をよく見ると、白い部分の中に黒い点、黒い部分の中に白い点が描かれています。これは「陽の中にも陰の種がある」「陰の中にも陽の種がある」ことを示しています。

この概念をファンタジーに応用すると、「最強の光の魔法使いの中に闇が芽生える」「闇の魔王の中にわずかな良心が残っている」というキャラクター設定が、東洋思想に根拠を持つ形で構築できます。

五行説とは

「五行説」は、この世のあらゆるものが「火・水・木・金・土」の五要素で構成されているとする思想です。陰陽説と組み合わさって「陰陽五行説」として体系化されました。

五行方角季節惑星
火星
水星
青(緑)木星
西金星
中央土用土星

五行説の最大の特徴は、五要素が互いに影響し合う「相生」と「相剋」の関係を持つことです。

相生(そうじょう) — 生み出す関係

「相生」とは、ある要素が別の要素を生み出す関係です。

火生土:火が燃えた後には灰(土)が残る

土生金:土が集まって山となり、山から鉱物(金属)を産出する

金生水:金属は腐食して水に帰り、溶融すれば液体になる

水生木:水によって植物(木)が生長する

木生火:木が燃えて火を生じる

相剋(そうこく) — 滅ぼす関係

「相剋」とは、ある要素が別の要素を打ち負かす関係です。

火剋金:火で金属を溶かす

水剋火:水で火を消す

木剋土:木は根を張って土を突き破る

金剋木:金属の斧で木を切り倒す

土剋水:土で水をせき止める

ファンタジーの魔法体系への応用

陰陽五行説をファンタジーの魔法体系に組み込む場合、いくつかの設計パターンがあります。

パターン1:五行属性の魔法使い

魔法使いを五行の属性で分類する方法です。火の術者、水の術者、木の術者といった分類は読者にも分かりやすく、相剋の関係がそのまま「弱点」の設定になります。

• 火の術者は水の魔法に弱い

• 水の術者は土の魔法に弱い

• 相生の関係にある属性同士は、互いに強化し合える

パターン2:陰陽による魔法の二面性

すべての魔法に「陽の側面」と「陰の側面」を設定する方法です。たとえば火の魔法なら、陽の側面は「照らす・温める」、陰の側面は「焼き尽くす・破壊する」というように使い分けができます。

パターン3:五行の循環による制限

魔法体系に「相生の順番でしか魔法を重ねがけできない」という制約を設けることで、戦闘に戦略性が生まれます。火の魔法の後に土の魔法を発動すると威力が増すが、水の魔法の後に火の魔法を使うと相殺される——といった仕組みです。

パターン4:方角と季節の連動

五行は方角や季節とも結びついているため、「季節や場所によって特定の魔法が強化される」という設定も可能です。冬の北方では水の魔法が最も強く、夏の南方では火の魔法が猛威を振るう——こうした設定は、軍事戦略や旅のルート選びにも影響を与えます。

西洋四大元素との違い

五行説は、西洋の四大元素(地・水・火・風)としばしば比較されます。主な違いを整理しておきましょう。

項目五行説四大元素
要素数5(火・水・木・金・土)4(地・水・火・風)
要素間の関係相生・相剋(循環的)対立構造(火⇔水、地⇔風)
独自の要素金・木
思想的背景道教・儒教ギリシャ哲学
方角との対応あり(中央含む5方位)なし(基本的に)

ファンタジー作品で五行説を採用する利点は、要素間の関係が「循環」していることです。単純な対立ではなく、生み出し合い・打ち消し合う複雑な関係性が、魔法体系に奥行きを与えてくれます。

陰陽五行を使った世界観設計の実例

陰陽五行説を世界観に組み込む具体的な例を紹介します。

国家の五行分類

五行を国の特性に割り当てる手法です。たとえば大陸に5つの国家が存在し、それぞれが五行の一つを国の象徴としている設定はどうでしょうか。

国名(例)五行特徴
炎陽国砂漠地帯の軍事国家。鍛冶と武器製造に優れる
蒼波国海洋国家。交易と船舶技術で繁栄
翠林国森に覆われた農業国。薬学と治癒魔法が発達
白金国鉱山資源が豊富な工業国。金属魔法を独占
黄土国大陸中央の大国。五行のバランスを調停する役割

五行の相生・相剋関係がそのまま国家間の同盟・敵対関係になり、政治ドラマが自然に生まれるのがこの設計の強みです。

キャラクターの五行属性

登場人物に五行属性を割り当てると、性格設計の指針になります。火属性のキャラクターは情熱的、水属性は冷静沈着、木属性は成長を象徴する若者——といった具合です。五行の思想はキャラクターの内面を規定する指針としても機能します。さらに、相剋の関係にある属性同士のキャラクターを対立させると、属性に基づいた因縁が物語に厚みを加えます。

まとめ

今回は、陰陽説と五行説について、ファンタジーの魔法体系設計の観点から解説しました。

「陰は悪ではない」という陰陽の哲学、そして五要素が循環する五行の仕組みは、西洋ファンタジーとは異なるテイストの世界観を生み出す強力なツールです。和風・中華風ファンタジーを書く際はもちろん、独自の魔法体系を構築する際にもぜひ参考にしてくださいね。陰陽の調和と五行の循環という発想は、善悪二元論に陥りがちなファンタジー世界に業たな解決策を提示してくれます。


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