スランプの正体|「書けない」が長引く本当の理由と、抜け出せる人の共通点

2021年10月29日

「スランプです」

この一言で片付けてしまう人が多いのですが、スランプの中身は人によって全然違います。そして中身が違うのに同じ処方箋を飲んでも効くわけがない。「気分転換しましょう」「散歩しましょう」「一度離れましょう」──どれも間違いではありませんが、それで治るスランプは軽傷です。

本当にきついスランプは、気分転換では治りません。

この記事では、元の記事で書いた「スランプの正体」をさらに掘り下げます。あなたのスランプがどのタイプなのかを特定し、タイプ別の処方箋を出すところまでやります。


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スランプの正体は「過去の自分とのギャップ」

元の記事で、スランプをこう定義しました。

「過去と同じことをしているのに、今はなぜか楽しめなくて達成感が得られない。その現在と過去とのギャップに悩んでいる状態」

この定義は今でも正しいと思っています。ただし、ギャップの中身を3つに分類できることに、その後気づきました。

タイプギャップの正体典型的な症状
技術停滞型自分の成長が止まったと感じる書いても書いても上手くならない気がする
目標喪失型何のために書いているか分からなくなった書く内容はあるのにキーボードに向かう気力が出ない
比較消耗型他人の成果を見て自分が小さく感じるSNSを開くたびに気力が削られる

これら3つは、原因が違うので対処法も違います。「一旦離れましょう」が効くのは目標喪失型だけです。技術停滞型に「離れましょう」と言ったら、離れている間にさらに不安が膨らむだけ。比較消耗型に「散歩しましょう」と言っても、帰宅してスマホを開いた瞬間に元に戻ります。


タイプ別:スランプの処方箋

技術停滞型──「成長が止まった」と感じる人へ

これは実は、スランプではありません。プラトー(停滞期)です。

技術は直線的に伸びません。階段状に伸びます。長い踊り場を歩いている最中に「自分は止まっている」と感じるのは、むしろ正常な感覚です。ダニング=クルーガー効果の観点からいえば、「自分は下手だ」と感じられるようになった時点で、実力は確実に上がっています。

処方箋は「量を書くこと」です。踊り場を抜けるには歩き続けるしかない。1日500字でもいい。書く行為を止めないこと。停滞期についてはプラトーの記事で詳しく書いています。

目標喪失型──「何のために書くのか分からない」人へ

これが最もやっかいなスランプです。技術の問題ではなく、動機の問題だからです。

多くの場合、きっかけは外部環境の変化です。Web小説を投稿していたがPVが伸びなくなった。コンテストに落ちた。生活が忙しくなって書く時間が取れなくなった。そうした外部要因が積み重なって、「自分はなぜ書いていたんだっけ?」という問いに答えられなくなる。

元の記事で「なぜ書きたいのか? 書くことで過去に楽しかった記憶があるからではないでしょうか」と書きました。この問いへの答えを、紙に書き出してみてください。スマホのメモではなく、手書きで。

「あの時、あのシーンを書き上げた瞬間が気持ちよかった」「あの感想をもらった時に震えた」──そういう記憶が一つでもあるなら、書く理由はまだ生きています。

比較消耗型──「他人と比べて萎える」人へ

2026年において、これが最も増えているタイプだと感じています。

SNSで「今日1万字書きました」「新人賞一次通過しました」「書籍化決まりました」──こうした報告を毎日浴びていれば、書けない自分が惨めに思えるのは当然です。

ただし冷静に考えてください。あなたがSNSで見ている「成果報告」は、その人の人生のハイライトリールです。書けなかった日、落選した回数、ボツにした原稿の山は見えていません。自分の舞台裏と、他人のハイライトを比較して落ち込むのは、構造的に不公平な比較です。

処方箋は単純です。SNSのミュートかアンフォローを使ってください。情報を遮断するのは逃げではありません。自分の創作環境を守るための合理的な判断です。


イチロー型か、木村沙織型か

元の記事で、スランプの乗り越え方にはスポーツ選手から学べるパターンが2つあると書きました。

イチロー選手のアプローチ:「特に対処をしない。つらいけどそのままやる。今できることを1つずつこなすだけ」

木村沙織選手のアプローチ:「周りの人から数字や映像に基づいた意見をもらい、自分を見つめ直す」

これは「内省型」と「フィードバック型」とでも言えるでしょう。

イチロー型は孤独に強い人、自分の感覚を信じられる人に向いています。「とにかく毎日書く」「淡々と積み重ねる」──これができる人は、時間が解決してくれます。

木村沙織型は、信頼できる読み手やコミュニティがある人に向いています。自分の書いたものを誰かに読んでもらい、「ここが良かった」「ここは伝わらなかった」という具体的なフィードバックを受ける。数字と映像の代わりに、感想と指摘をもらう。

どちらが正解ということはありません。ただし、どちらのタイプかを自覚しておくと、スランプに陥った時の初動が速くなります。


「気分転換」が効くスランプ、効かないスランプ

元の記事で「一旦やめてみる」「気分転換をする」「生活習慣を見直す」の3つを挙げました。これら自体は今でも有効な方法です。ただし、効く条件があります。

気分転換が効くのは、「書きたい気持ちはあるが、疲労で手が動かない」という状態の時だけです。つまり身体的・精神的な疲労が原因のケース。この場合、睡眠を取る、運動する、好きなものを食べる、風呂に入る──これらは確実に効きます。

効かないのは、「書きたい気持ち自体が消えかけている」「書く意味が分からなくなっている」という状態の時。この場合、気分転換は問題の先送りにしかなりません。1週間離れても2週間離れても、戻ってきた時に同じ壁がそこにある。

自分のスランプが「疲労」なのか「動機の喪失」なのかを見極めること。これが最初にやるべきことです。


スランプは「踊り場」だという話を、もう一度

元の記事の最後に「スランプは次の成長の階段を登り始める前の踊り場だ」と書きました。

この考えは今も変わっていません。ただし付け加えたいことがあります。

踊り場にいる間、人は退屈に感じます。成長している実感がないから。でも踊り場では、意識していなくても脳が情報を整理し、技術が身体に定着する時間が流れています。

筋トレでいう超回復と同じです。筋肉は休んでいる間に太くなる。書く技術も、書いていない間に脳の中で再構成されている。

だからスランプの最中に「自分はサボっている」と自分を責めないでください。あなたの脳は、次のステージのために準備をしているだけです。

大事なのは、踊り場にいることを認めた上で、完全に立ち止まらないこと。1日100字でもいい。メモでもいい。「書くことに触れ続ける」という最低限のラインだけ守っていれば、いつか階段は再び上り始めます。

止まない雨はありません。ただし、雨宿りの仕方を間違えると風邪をひきます。正しい場所で、正しく待ちましょう。


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