スランプの正体|「書けない」が長引く本当の理由と、抜け出せる人の共通点
「スランプです」
この一言で片付けてしまう人が多いのですが、スランプの中身は人によって全然違います。そして中身が違うのに同じ処方箋を飲んでも効くわけがない。「気分転換しましょう」「散歩しましょう」「一度離れましょう」──どれも間違いではありませんが、それで治るスランプは軽傷です。
本当にきついスランプは、気分転換では治りません。
この記事では、元の記事で書いた「スランプの正体」をさらに掘り下げます。あなたのスランプがどのタイプなのかを特定し、タイプ別の処方箋を出すところまでやります。
スランプの正体は「過去の自分とのギャップ」
元の記事で、スランプをこう定義しました。
「過去と同じことをしているのに、今はなぜか楽しめなくて達成感が得られない。その現在と過去とのギャップに悩んでいる状態」
この定義は今でも正しいと思っています。ただし、ギャップの中身を3つに分類できることに、その後気づきました。
| タイプ | ギャップの正体 | 典型的な症状 |
|---|---|---|
| 技術停滞型 | 自分の成長が止まったと感じる | 書いても書いても上手くならない気がする |
| 目標喪失型 | 何のために書いているか分からなくなった | 書く内容はあるのにキーボードに向かう気力が出ない |
| 比較消耗型 | 他人の成果を見て自分が小さく感じる | SNSを開くたびに気力が削られる |
これら3つは、原因が違うので対処法も違います。「一旦離れましょう」が効くのは目標喪失型だけです。技術停滞型に「離れましょう」と言ったら、離れている間にさらに不安が膨らむだけ。比較消耗型に「散歩しましょう」と言っても、帰宅してスマホを開いた瞬間に元に戻ります。
タイプ別:スランプの処方箋
技術停滞型──「成長が止まった」と感じる人へ
これは実は、スランプではありません。プラトー(停滞期)です。
技術は直線的に伸びません。階段状に伸びます。長い踊り場を歩いている最中に「自分は止まっている」と感じるのは、むしろ正常な感覚です。ダニング=クルーガー効果の観点からいえば、「自分は下手だ」と感じられるようになった時点で、実力は確実に上がっています。
処方箋は「量を書くこと」です。踊り場を抜けるには歩き続けるしかない。1日500字でもいい。書く行為を止めないこと。停滞期についてはプラトーの記事で詳しく書いています。
目標喪失型──「何のために書くのか分からない」人へ
これが最もやっかいなスランプです。技術の問題ではなく、動機の問題だからです。
多くの場合、きっかけは外部環境の変化です。Web小説を投稿していたがPVが伸びなくなった。コンテストに落ちた。生活が忙しくなって書く時間が取れなくなった。そうした外部要因が積み重なって、「自分はなぜ書いていたんだっけ?」という問いに答えられなくなる。
元の記事で「なぜ書きたいのか? 書くことで過去に楽しかった記憶があるからではないでしょうか」と書きました。この問いへの答えを、紙に書き出してみてください。スマホのメモではなく、手書きで。
「あの時、あのシーンを書き上げた瞬間が気持ちよかった」「あの感想をもらった時に震えた」──そういう記憶が一つでもあるなら、書く理由はまだ生きています。
比較消耗型──「他人と比べて萎える」人へ
2026年において、これが最も増えているタイプだと感じています。
SNSで「今日1万字書きました」「新人賞一次通過しました」「書籍化決まりました」──こうした報告を毎日浴びていれば、書けない自分が惨めに思えるのは当然です。
ただし冷静に考えてください。あなたがSNSで見ている「成果報告」は、その人の人生のハイライトリールです。書けなかった日、落選した回数、ボツにした原稿の山は見えていません。自分の舞台裏と、他人のハイライトを比較して落ち込むのは、構造的に不公平な比較です。
処方箋は単純です。SNSのミュートかアンフォローを使ってください。情報を遮断するのは逃げではありません。自分の創作環境を守るための合理的な判断です。
イチロー型か、木村沙織型か
元の記事で、スランプの乗り越え方にはスポーツ選手から学べるパターンが2つあると書きました。
イチロー選手のアプローチ:「特に対処をしない。つらいけどそのままやる。今できることを1つずつこなすだけ」
木村沙織選手のアプローチ:「周りの人から数字や映像に基づいた意見をもらい、自分を見つめ直す」
これは「内省型」と「フィードバック型」とでも言えるでしょう。
イチロー型は孤独に強い人、自分の感覚を信じられる人に向いています。「とにかく毎日書く」「淡々と積み重ねる」──これができる人は、時間が解決してくれます。
木村沙織型は、信頼できる読み手やコミュニティがある人に向いています。自分の書いたものを誰かに読んでもらい、「ここが良かった」「ここは伝わらなかった」という具体的なフィードバックを受ける。数字と映像の代わりに、感想と指摘をもらう。
どちらが正解ということはありません。ただし、どちらのタイプかを自覚しておくと、スランプに陥った時の初動が速くなります。
「気分転換」が効くスランプ、効かないスランプ
元の記事で「一旦やめてみる」「気分転換をする」「生活習慣を見直す」の3つを挙げました。これら自体は今でも有効な方法です。ただし、効く条件があります。
気分転換が効くのは、「書きたい気持ちはあるが、疲労で手が動かない」という状態の時だけです。つまり身体的・精神的な疲労が原因のケース。この場合、睡眠を取る、運動する、好きなものを食べる、風呂に入る──これらは確実に効きます。
効かないのは、「書きたい気持ち自体が消えかけている」「書く意味が分からなくなっている」という状態の時。この場合、気分転換は問題の先送りにしかなりません。1週間離れても2週間離れても、戻ってきた時に同じ壁がそこにある。
自分のスランプが「疲労」なのか「動機の喪失」なのかを見極めること。これが最初にやるべきことです。
スランプは「踊り場」だという話を、もう一度
元の記事の最後に「スランプは次の成長の階段を登り始める前の踊り場だ」と書きました。
この考えは今も変わっていません。ただし付け加えたいことがあります。
踊り場にいる間、人は退屈に感じます。成長している実感がないから。でも踊り場では、意識していなくても脳が情報を整理し、技術が身体に定着する時間が流れています。
筋トレでいう超回復と同じです。筋肉は休んでいる間に太くなる。書く技術も、書いていない間に脳の中で再構成されている。
だからスランプの最中に「自分はサボっている」と自分を責めないでください。あなたの脳は、次のステージのために準備をしているだけです。
大事なのは、踊り場にいることを認めた上で、完全に立ち止まらないこと。1日100字でもいい。メモでもいい。「書くことに触れ続ける」という最低限のラインだけ守っていれば、いつか階段は再び上り始めます。
止まない雨はありません。ただし、雨宿りの仕方を間違えると風邪をひきます。正しい場所で、正しく待ちましょう。
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