AIに質問しても物語の核心にたどり着けない理由|問いを立てる創作術

こんにちは。腰ボロSEです。

「AIにプロットを考えてもらったのに、どうもしっくりこない」。

最近、こういう声をよく見かけます。ChatGPTに「面白い物語のプロットを考えて」と投げて、返ってきたものを読んで、「なるほど」と思うけれど、自分の物語としては書く気にならない。何が悪いのかわからないまま、また別のプロンプトを試す。

私も覚えがあります。ITエンジニアとして長年働いてきたので、ツールに頼る癖は人一倍強い。検索して、AIに聞いて、出力をもらう。仕事ではそれで回る。しかし創作では、同じやり方が通用しません。

その理由を整理してみたら、結論はシンプルでした。AIに投げている「質問」と、物語を生み出す「問い」は、構造的にまったく別物だったのです。


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物語が生まれるまでの7ステップ

質のいい物語の核心が見つかるまでには、実は7つのステップがあります。

1. 違和感を抱く——「あれ?」「なんだか気になる」という感覚。書きたい衝動の種。
2. 対象を特定する——自分は何に惹かれているのか。テーマなのか、キャラクターなのか、場面なのか。
3. 前提を確認する——その題材について自分は何を知っていて、何を知らないのか。
4. 問いを言語化する——「自分がこの物語で本当に描きたいことは何か」を言葉にする。
5. 仮説を立てる——「たぶん、こういう構造で描けば伝わるんじゃないか」と想像する。
6. 検証・探索する——資料を調べる。AIに聞く。類似作品を読む。
7. 問いを更新する——得た情報をもとに、問いをさらに深める。

この7ステップを踏まえた上で、「AIにすぐ質問する人」がどうなっているかを見てみます。


スキップされているのは、2〜5のほぼ全部

ステップ1で「なんか書きたいな」と思う。そこまではいい。しかしその瞬間にChatGPTを開いて「ファンタジーの面白いプロットを考えて」と打ってしまう。

ステップ2から5がまるごと消えている。

自分が何に惹かれているのか、特定していない。何を知っていて何を知らないか、確認していない。自分がこの物語で本当に描きたいことを、言葉にしていない。仮説もない。

つまり「モヤモヤする→とりあえずAIに聞く」という高速道路が整備されすぎてしまったのです。

しかも、ステップ7もスキップされがちです。AIからプロットが返ってきた時点で「案が出た」という満足感が生まれてしまい、そこから問いが深まらない。

結果として、7ステップ中2ステップしか踏んでいない。それで「物語の核心」が見つかるわけがありません。


具体例:「主人公が決まらない」とき

すぐAIに聞く場合:

「なんか物語を書きたいな」と思う。ChatGPTに「魅力的な主人公の設定を考えて」と聞く。「孤独な剣士で、実は王族の血を引いていて……」みたいな設定が返ってくる。「なるほど」と思うけど、自分の物語として書く気にならない。別のプロンプトを試す。3回繰り返して、飽きる。

問いを立てる場合:

「なんか物語を書きたいな」と思う。立ち止まって考える。自分は「何に」惹かれているのか。最近読んだ小説で心が動いた場面は?——ああ、あの「能力はあるのに評価されない中年」の話が刺さったな。なぜ刺さったんだ?自分自身がそうだからか。

テーマが見えてくる。「正当に評価されない人間の怒り」を書きたいのかもしれない。

仮説が立つ。もし主人公が、能力を持っているのに身体的な制約で前線に出られない人間だったら。たとえば——腰を壊したITエンジニアとか。

ここで初めてAIに聞く。「身体的制約を持つ主人公が活躍する物語の構造パターンを教えて」。仮説があるから、返ってきた情報を取捨選択できる。自分の物語に使える要素だけを拾える。

同じ「主人公が決まらない」という出発点から、まったく違うところに着地します。


具体例:「書き出しが書けない」とき

すぐAIに聞く場合:

冒頭が思いつかない。「小説の書き出し例を10個出して」とAIに聞く。「朝目覚めると、世界が変わっていた」みたいな例が並ぶ。どれもそれっぽいが、自分の物語に合うものがない。結局書けないまま終わる。

問いを立てる場合:

冒頭が思いつかない。立ち止まる。そもそも、この物語の冒頭で読者に何を感じさせたいのか。期待感か。不安か。共感か。——自分の物語は「日常が少しずつ壊れていく話」だ。だったら、冒頭は「まだ壊れていない日常」を丁寧に描くべきだ。壊れる前の幸福を知っているからこそ、壊れたときに痛みが生まれる。

仮説が立った。「平穏な一日を、五感を使って描写する」冒頭にしよう。AIに聞くなら「日常描写で読者に安心感を与える冒頭の技法」を聞いた方がいい。

問いが具体的だから、AIの回答も具体的になる。物語工学的に言えば、入力の解像度が出力の解像度を決めるのです。


なぜ2〜5をスキップしてしまうのか

理屈はわかる。でもつい聞いてしまう。その理由は3つあります。

もがく時間が不快だから。 ステップ2から5は、答えのない状態で頭を使い続ける時間です。これが苦しい。AIに聞けば一瞬で何かが返ってくる。その誘惑に勝つのは簡単ではありません。

雑な質問でも、それっぽい答えが返ってくるから。 「面白いプロットを考えて」という雑な質問でも、AIはそれなりの回答を出します。職場で同僚にそんな聞き方をしたら嫌な顔をされますが、AIは嫌な顔をしない。だから質問の質が上がらない。

答えが出た=解決したと勘違いするから。 AIからプロットが返ってきた瞬間、脳は「情報を得た」という報酬を受け取ります。「なるほど」と思って満足してしまう。しかし本番はそこからです。


創作者のための「3分ルール」

AIを開く前に、3分だけ自分の頭で考える。それだけで変わります。

1つ目。「自分は何に惹かれているのか」をメモに書き出す。テーマでもキャラクターでも場面でも構いません。

2つ目。仮説を持ってからAIに聞く。「たぶんこういう構造がいいと思うけど、他にパターンはある?」というスタンスで使う。

3つ目。AIの回答が返ってきたら「で、次に気になることは?」と自分に聞く。そこで止まらずに、問いを更新する。

AIは最高の相棒です。私自身、毎日AIと対話しながら記事を書いています。しかし相棒に丸投げしたら、自分の物語にはなりません。

ITの世界でも同じです。要件定義が曖昧なまま開発を始めると、どれだけ優秀なエンジニアがいてもシステムは迷走する。物語の要件定義は、書き手にしかできない。AIはその後の設計と実装を助けてくれる存在です。

問いを立てる力は、AIを使わないことで育つのではありません。AIを使う前の3分を惜しまないことで育つのです。

さて、今日も物語を書きましょう。腰は壊しても、筆は折らない。

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