小説家は不動産サイトで間取りを見る。物語のリアリティを底上げする「意外な」サイト活用術

2020年8月16日

最近、デュアルモニターの配置を変えたら首の痛みがマシになったのですが、代わりに腰への負担が増えました。人体のバグを直すパッチはいつ配信されるんでしょうか。

さて、今回のテーマは「創作者を助ける、意外なサイト活用術」です。
この記事を読めば、あなたの物語のリアリティを一段階引き上げる、まったく新しいアプローチが手に入ります。

「小説に役立つサイト」と聞いて、どんなものを思い浮かべますか?
類語辞典、世界観の用語集、あるいは名前ジェネレーターかもしれません。もちろん、それらはすべて素晴らしいツールです。私が小説を書き始めた頃も、ブラウザのブックマークはそういった「The・創作支援」のツールで埋め尽くされていました。

ですが長年書いていると気づくのです。
本当に物語の「生々しさ」を作ってくれるのは、創作とはまったく無関係な、現実の生活に密着したサイトであることに。

今回は、私が実際に『LinkAuter Chronicle Xceed』などの執筆で使ってきた、少し変態的……もとい、実践的なサイト活用法をご紹介します。

創作ノウハウ200超|小説の書き方ガイド

なぜ「無関係なサイト」がリアリティを作るのか

物語に説得力を生むのは、ファンタジーの壮大な歴史設定だけではありません。
キャラクターが「今、確かにそこで生活している」という微視的な手触りなのです。

例えば、「彼は安アパートに住んでいる」と書くよりも、「駅から徒歩十五分、木造築三十年の1Kで、結露のひどい北向きの窓がある部屋」と設定したほうが、キャラクターの生活感や苦労が読者に伝わりやすくなります。
しかし、いざそれを書こうとしたとき、頭の中の想像だけで具体的なディテールをひねり出すのは至難の業です。

そこで活躍するのが、現実世界のデータが集まる実用サイト群です。

不動産情報サイトは「最高の設定データベース」

まず真っ先におすすめしたいのが、SUUMOやHOME’Sといった不動産情報サイトです。
引っ越しの予定がなくても、小説を書くならぜひ定期的に覗いてみてください。

間取り図が「動線」と「生活感」を生む

小説の中で、キャラクターの部屋でおしゃべりさせたり、あるいは敵が襲撃してくるバトルシーンを描いたりすることがありますよね。
そんなとき、「この部屋の間取りはどうなっているのか?」が視覚化されていないと、キャラクターの動きに矛盾が生じます。

不動産サイトで間取り図を見ると、以下のようなことが具体的にイメージできます。

• 玄関を開けてからリビングまでの距離

• キッチンとトイレの位置関係

• クローゼットの大きさ(ここに人を隠せるか?)

• 窓の位置と、そこから入る光の向き

アニメ『リコリス・リコイル』でも、千束とたきなが同居する部屋や喫茶リコリコの店舗など、生活空間の動線が非常に緻密に描かれていました。
間取りが決まっていると、「キッチンからお茶を持ってくるまでに交わす会話の長さ」まで自然と計算できるようになります。

家賃相場からキャラクターの「経済力」を設定する

東京の新宿区に住んでいる設定なのか、あるいは地方都市なのか。
不動産サイトで家賃相場を調べると、そのキャラクターが「月にいくら稼いでいて、生活にどれくらい余裕があるか」がリアルに浮き彫りになります。

「家賃七万円の部屋に住むために、このキャラクターは毎月どれだけアルバイトをしているのか?」
たった一つの情報から、キャラクターのバックボーンが芋づる式に設定できるのです。経済的な制約は、物語を動かす強力なエンジンになります。

地図サイトで「距離」と「疲労」を計算する

次に重宝するのが、Googleマップをはじめとする地図サイトやストリートビューです。

徒歩の所要時間が「ドラマ」を作る

キャラクターがA地点からB地点へ移動するシーン。
「急いで走った」と書くのは簡単ですが、実際にGoogleマップでルート検索をしてみましょう。「徒歩で四十分」と出たとします。

四十分間、真夏の炎天下を全力で走った」としたら、到着したときキャラクターはどうなっているでしょうか?
息は切れ、服は汗で張り付き、まともに喋ることもできないかもしれません。そこに「疲労」というリアリティが生まれます。

読者は、作者が適当に誤魔化した距離感を意外と敏感に察知します。正確な距離と所要時間を知ることで、シーンに緊張感と質量を与えられるのです。

ストリートビューで「視界」を奪う

ストリートビューを使えば、その場所に立ってみたときの「視界の抜け具合」や「建物の圧迫感」も疑似体験できます。
「この路地は暗いから、待ち伏せには最適だ」「ここに自動販売機があるから、隠れながら様子を窺える」といった、具体的なアクションのアタリをつけるのに最適です。

気象庁の過去データで「空気を共有する」

現代劇を書くなら、気象庁の「過去の気象データ検索」は隠れたチートツールです。

「十年前の夏のあの日」を回想するシーンを書くとします。
そのとき、適当に「よく晴れた暑い日だった」と書くのではなく、データで「2014年8月の東京の天気」を調べてみましょう。もしその日が激しいゲリラ豪雨だったなら、物語の風景をそれに合わせるのです。

あの日はひどい土砂降りで、スニーカーが泥だらけになったんだ

こう書かれた瞬間、同じ時代を生きていた読者の記憶の奥底と、あなたの物語がリンクする瞬間が生まれます。
天気という誰もが共有できる現実は、フィクションを現実の世界に繋ぎ止める強力な錨(アンカー)になるのです。

「あなたの物語でこう使えますよ」——ファンタジーへの応用

「でも、自分が書いているのは中世ヨーロッパ風のファンタジーだから、現代のサイトは関係ないかな」
そう思ったあなた。実はファンタジーにこそ、これらのツールが猛威を振るいます。

例えば、王都から隣街までの距離を決めるとき。
日本の地図を使って「東京から鎌倉くらいの距離」とアタリをつけてみます。Googleマップで徒歩ルートを検索すれば、中世の旅人が馬や徒歩で何日かかるか、道中どんな地形(山越えなのか、平野なのか)を経験するかのリアルなシミュレーションが完了します。

あるいは、冒険者ギルドや宿屋の構造を考えるとき。
不動産サイトで「シェアハウス」や「ペンション」の間取りを検索し、それを木造建築に脳内で変換するだけで、立体的で矛盾のない空間設定が完成します。魔法が飛び交うファンタジーであっても、土台となる物理法則と生活感は現実の応用で補強できるのです。

まとめ

今回紹介した「意外なサイト活用術」を振り返ります。

不動産情報サイト:間取りと家賃相場で、生活動線と経済事情を構築する

地図・ストリートビュー:正確な距離と疲労感、視界のリアリティを掴む

気象庁のデータ:現実の天気を使って読者と記憶を共有する

「小説を書く」ということは、どこか遠い世界の話を妄想するだけではありません。
現実世界のルールや制約をうまく借りてくることで、嘘の物語はどんどん本当の顔を持ち始めます。

どうですか、少しだけ世界観づくりが楽しくなりそうな気がしてきましたか?
もし設定に行き詰まったり、キャラクターの生活感が薄いなと感じたら、ぜひSUUMOやGoogleマップを開いてみてください。そしてまた悩んだら、このブログに戻ってきてくださいね。


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