魅力的な3人組の法則|キュート・クール・パッションで関係性を設計する
「鬼滅の刃」の炭治郎・善逸・伊之助。「呪術廻戦」の虎杖・伏黒・釘崎。「ハリーポッター」のハリー・ロン・ハーマイオニー。
名作に登場する魅力的な3人組には、共通する法則があります。それは、キュート・クール・パッションという3つの属性がバランスよく配分されていることです。
この記事では、「アイドルマスターシンデレラガールズ」が発明した3属性フレームワークの本質を解き明かし、あなたの物語の3人組設計に応用する方法を解説します。
キュート・クール・パッションとは何か
3属性の定義
「アイドルマスターシンデレラガールズ」では、各アイドルがキュート・クール・パッションのいずれかの属性に分類されています。この分類の本質は、状況への対処方法の違いに集約されます。
| 属性 | 本質 | 定義 | シンボル |
|---|---|---|---|
| キュート | 受容 | 状況を受け入れ、自らに適応させる力。受け身な性質 | 花(種の落ちた場所に適応する) |
| クール | 泰然 | 状況に動じず、自分のやり方を貫く力。信念を持った性質 | ダイヤモンド(外部の力に耐え、形を保つ) |
| パッション | 支配 | 状況を自らのものにしようとする力。先導する性質 | 太陽(環境さえ変化させる影響力) |
この定義を見た瞬間、私は天才的なフレームワークだと感じました。「受容」「泰然」「支配」——この3つは、人間が状況に対処する根本的な3パターンを網羅しているのです。
鬼滅の刃で検証する
鬼滅の刃の3人組に当てはめてみましょう。
炭治郎=クール(泰然)
禰豆子を救うという信念のため、どんな状況にも動じず、やれることを探して信念を貫き通す。鬼に対しても慈悲を忘れない。泰然の極致です。
善逸=キュート(受容)
異常なまでにネガティブで底抜けに臆病。しかし、追い込まれた瞬間に凄まじい実力を発揮する。環境に流されやすいが、最終的には適応して力を出す。受容型の典型です。
伊之助=パッション(支配)
猪突猛進。場のルールも常識も気にせず、自分の力で状況を変えようとする。先導力があり、時に場の空気そのものを書き換えてしまう。支配型の典型です。
3人それぞれが異なる属性を担当しているからこそ、どんな状況でも「誰かが対処できる」構造になっている。これが3人組の物語的な強さです。
3属性はなぜ「組み合わさる」のか:起承転結との接続
3属性が物語の推進力になる理由を、起承転結の構造で説明します。
「起」:物語の始まり
何もない日常から始まる場合、パッション(支配)の先導力が起点になります。ただし、近年の物語は冒頭で読者を掴む必要があるため、平穏な日常からスタートすることは少なくなっています。
有事から始まる場合、キュート(受容)が最も自然な入口になります。まず状況を受け入れて適応する過程で、読者に世界観を説明できるからです。「アイドルマスターシンデレラガールズ」の主人公・島村卯月がキュート属性なのは、視聴者が感情移入しやすい「受容」の入口だからではないでしょうか。
「承」:物語が動き出す
物語を動かすのは、クール(泰然)の信念と、パッション(支配)の行動力です。
絶望的な状況に直面したとき、クールキャラは「それでも自分のやり方を貫く」と宣言し、物語に軸を与えます。パッションキャラは「自分が状況を変えてやる」と動き出し、物語を加速させます。
「転」:転機
物語の転機——つまり最大のピンチで、クールの信念もパッションの行動力も通用しない壁が立ちはだかります。
ここで力を発揮するのが、意外にもキュート(受容)の適応力です。力で押してもダメ、信念を貫いてもダメ。そのとき、状況を受け入れ、新しいやり方に適応できるキュートキャラが突破口を開く。
「結」:結末
起承転結を経て残るのは、成長したキュート、信念を貫いたクール、意外な一面を見せたパッション。それぞれが異なる形の魅力を獲得し、読者はどのキャラにも魅力を感じられるようになります。
2025年のジャンプ・アニメに見る3人組の法則
呪術廻戦:虎杖・伏黒・釘崎
| キャラ | 属性 | 根拠 |
|---|---|---|
| 虎杖悠仁 | キュート(受容) | 何でも受け入れる器の大きさ。宿儺を体に受け入れるところから始まる |
| 伏黒恵 | クール(泰然) | 自分の信念に基づいて行動する。「不平等に人を助ける」という泰然たる覚悟 |
| 釘崎野薔薇 | パッション(支配) | 自分のスタイルを押し通す。場の空気を変える存在感 |
呪術廻戦の3人は、鬼滅の刃の3人と属性の配分が同じです。ジャンプ漫画の3人組が成功しやすい理由は、この3属性が無意識にバランス配分されているからかもしれません。
ダンダダン:3人目の追加で安定する構造
ダンダダンは当初オカルンとモモの2人体制でしたが、ターボばあちゃんや星子の加入で3人以上のグループになっていきます。2人だけの緊張関係に「第3の視点」が入ることで、物語の幅が一気に広がるのを感じた読者は多いでしょう。
これは、2人の関係性に3人目が加わることで初めて「受容・泰然・支配」の3属性が揃うという構造的な安定を示しています。
サブタイプの存在:属性の中の多様性
同じ「クール」でも、沈着冷静なクールもあれば、感情を押し殺しているクールもあります。同じ「パッション」でも、明るい先導型と、怒りで突っ走る暴走型があります。
属性の中でサブタイプを意識することで、3人組の個性をさらに際立たせることができます。
| 属性 | サブタイプA | サブタイプB |
|---|---|---|
| キュート | 天然適応型(周囲になじむ) | 繊細適応型(気を遣って合わせる) |
| クール | 冷静分析型(感情を出さない) | 信念固執型(感情はあるが折れない) |
| パッション | 陽気先導型(明るく引っ張る) | 暴走突破型(力ずくで状況を変える) |
1人のキャラに3属性を統合する:リコリス・リコイルの革命
ここまで「3人に3属性を配分する」話をしてきました。しかし、1人のキャラクターが3属性すべてを持つことも可能です。
リコリス・リコイルの錦木千束を分析してみましょう。
キュート(受容)の千束
自分の寿命が短いことを受容し、やりたいことを最優先にして生きる。状況に適応する柔軟さ。
クール(泰然)の千束
有事の際に冷静に判断する。真島に肩を撃たれても「救世主であること」を貫く。信念の強さ。
パッション(支配)の千束
ピンチに機転を利かせ、場の空気を変える。12話でイッヌを早川フキに見せつけて防御を促す瞬間の判断力。
錦木千束が「今までにないキャラクター」「現実にいそうな生々しさがある」と評される理由は、3属性を1人で持っているからです。現実の人間は状況に応じてキュートにもクールにもパッションにもなる。その多面性を1キャラに統合したのが、リコリス・リコイルの革命でした。
実践:3人組設計ワークシート
あなたの物語の3人組を設計するとき、以下の表を埋めてみてください。
| 項目 | キャラA | キャラB | キャラC |
|---|---|---|---|
| 属性 | キュート | クール | パッション |
| 本質 | 受容 | 泰然 | 支配 |
| 性格キーワード | |||
| 「起」での役割 | |||
| 「承」での役割 | |||
| 「転」での活躍 | |||
| 「結」での到達点 | |||
| サブタイプ |
設計のチェックリスト
• [ ] 3人が3属性にきちんと分かれているか
• [ ] 「起」で自然に世界観を説明できるキャラがいるか
• [ ] 「転」の突破口を開けるキャラが、「承」では目立たない設計になっているか(意外性のため)
• [ ] 3人の中に「読者が自己投影できる入口」が1人いるか
まとめ:魅力的な3人組の設計公式
キュート・クール・パッションの本質
• キュート=受容:状況を受け入れて適応する力
• クール=泰然:状況に動じず信念を貫く力
• パッション=支配:状況を自分のものにする力
3人組が機能する理由
• 起承転結のそれぞれで異なるキャラが活躍できる
• 読者の共感ポイントが3倍になる
• どんな状況にも対処できる「最強の構造」が生まれる
応用の2つの方向性
1. 3人のキャラに3属性を配分する(王道)
2. 1人のキャラに3属性を統合する(リコリス・リコイル型の革命)
あなたの物語の3人組は、どの属性をどのキャラに配分していますか。もし設計に迷ったら、まずは鬼滅の刃を参考にしてみてください。炭治郎(泰然)、善逸(受容)、伊之助(支配)。この黄金比が、あなたの物語の出発点になるはずです。
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