テンプレートは命|「邪道」は王道を極めた者だけに許される

2022年4月9日

「テンプレには従いたくない」「王道は避けたい」——こう考えたことはありませんか。しかし、その選択が 遠回りになっている可能性 を考えてみたことはあるでしょうか。

今回は「テンプレート」の真の価値と、それを超えるための正しい道筋について書いてみます。テンプレを「制約」と感じている方ほど、この記事は役に立つはずです。

創作ノウハウ200超|小説の書き方ガイド

テンプレを嫌う人が見落としていること

「テンプレ」と聞くと、Web小説における異世界転生・チート・俺TUEEE的な展開をイメージする人が多いかもしれません。しかしテンプレートとは本来もっと広い概念です。

三幕構成も、起承転結も、ヒーローズ・ジャーニーも、すべてテンプレートでしょう。 「人間が面白いと感じる構造」を体系化したもの がテンプレートの正体と言えます。

こんなネットの名言があります。「テンプレートを使わないのは、砂糖とバターを使わずにケーキを作るようなもの」。面白いと感じるツボは人間に共通している部分が多く、テンプレートはそのツボを確実に押すための設計図と言えるでしょう。

砂糖とバターなしで美味しいスイーツを作ることは不可能ではありません。しかし そのためには通常の何倍もの技術と創意工夫が必要 になる。テンプレを避けるとは、まさにそういうことではないでしょうか。

代表的なテンプレートを整理してみましょう。

テンプレート基本構造代表作
三幕構成設定→対立→解決ほぼすべてのハリウッド映画
ヒーローズ・ジャーニー日常→冒険→帰還スター・ウォーズ、千と千尋
起承転結導入→展開→転換→結末日本の古典から現代創作まで
異世界転生テンプレ死亡→転生→チート→無双なろう系Web小説
ボーイミーツガール出会い→衝突→和解→恋愛ラブコメ全般

どのテンプレートも「人間が物語に求める感情の流れ」を構造化したものにすぎません。テンプレが量産されるのは、それが多くの人に刺さるからです。

「型破り」と「型なし」

歌舞伎役者・中村勘三郎の言葉を紹介しましょう。

「型がある人が型を破ると『型破り』。基本ができていない人が変化をつけようとすると、それを『形無し』と呼ぶ」

この言葉は小説にもそのまま当てはまります。 型を知らずに型を外しても、それは独自性ではなく未熟さ として読者に伝わってしまうのです。

三幕構成を知らなければ、三幕構成を意図的に壊す面白さは出せません。「起承転結を敢えて崩す」作品を書くには、起承転結が何を実現する構造なのかを知っている必要があります。

いわゆる「型破り」な作品として評価される名作は、例外なく王道を知り尽くした上で壊しています。浦沢直樹『MONSTER』は勧善懲悪のテンプレを知り尽くしているからこそ「善とは何か」を問う物語が書けたのでしょう。虚淵玄『魔法少女まどか☆マギカ』は魔法少女テンプレを完璧に理解していたからこそ、第3話のあのシーンで視聴者の期待を根底から覆せました。

音楽の世界でも同じことが言えます。ビートルズが革命を起こせたのは、チャック・ベリーやリトル・リチャードのロックンロールの「型」を完全にマスターしていたからです。型を知らない人間が新しい音を出しても、それは「前衛」ではなく「雑音」として処理されてしまいます。

テンプレの中で勝負する技術

テンプレートに従うことは「没個性」ではありません。 テンプレという共通の土台の上で、どこに自分らしさを加えるか が腕の見せどころです。

料理で考えるとわかりやすいかもしれません。カレーのレシピは共通でも、スパイスの配合、具材の切り方、煮込む時間で味はまったく変わります。物語も同じで、テンプレの骨格を使いつつ キャラクター・文体・テーマ・ディテール で差別化するのです。

具体的に差をつけやすい要素を3つ挙げてみましょう。

要素1:キャラクターの動機。「魔王を倒す」というテンプレでも、動機が「復讐」なのか「誰かを守るため」なのか「自分を証明するため」なのかで物語の色は変わります。テンプレの中で最も個性を出しやすいのが「なぜそうするのか」という動機の部分でしょう。

要素2:文体とリズム。同じ展開でも文章のリズムが変われば読後感は異なります。軽快なテンポで書くか、重厚な描写で書くか。テンプレの展開が同じでも、 読者が感じる「手触り」は文体で決まる のです。

要素3:一箇所だけズラす。テンプレの80%は維持し、残りの20%で読者の予測を裏切る。『ワンパンマン』は「主人公が苦戦して成長し、強敵を倒す」テンプレの「苦戦して成長」部分だけを壊しました。たった一箇所のズラしが、作品を唯一無二にしたわけです。

あなたの物語に活かすなら

テンプレートとの付き合い方を、段階別に整理してみましょう。

入門期:まずは王道テンプレに忠実に一作品を書き上げる。「ありきたり」で構いません。完結させることが最優先です。

成長期:テンプレに従いつつ、動機・文体・ディテールで差をつけることを意識する。「テンプレ内での個性発揮」を練習する段階です。

発展期:テンプレの一箇所だけを意図的にズラしてみる。80%は王道、20%だけ自分のオリジナル。これが「型破り」の入り口になります。

熟練期:テンプレを自在に組み合わせたり、複数のテンプレを融合させたりする。ここまで来れば、テンプレは制約ではなく武器になっているはずです。

テンプレ活用の判断フロー

「テンプレに従うべきか、崩すべきか」で迷ったときの判断基準をまとめました。

状況判断理由
初めてそのジャンルを書くテンプレに従う型を知らずに型を破るのは「型なし」
そのジャンルで完結作が3作以上ある1箇所だけズラしてみる型を理解した上で崩すのが「型破り」
ズラした部分が好評だった複数箇所を実験する読者の反応が証明した破り方を広げる
ズラした部分が不評だったテンプレに戻す型の理解が足りない可能性が高い
「テンプレばかりでつまらない」と感じる動機・文体で差別化する型の骨格を変える前にディテールで差をつける

鍵は「崩す前に従い、従った経験を踏まえて崩す」という順序です。この順番を守れば、「型なし」ではなく 「型破り」 の領域に入れます。

テンプレートを「制約」と感じる人は多いでしょう。しかし俳句が「五・七・五」という制約の中でこそ傑作が生まれるように、テンプレートという「枠」があるからこそ その中で個性を探る創意工夫 が生まれます。制約なしの自由は、実は「何をしていいかわからない」という不自由と表裏一体なのです。

この「制約の中の自由」という考え方は、創作全般に応用できます。文字数制限があるからこそ無駄を削る技術が磨かれる。ジャンルの約束事があるからこそ、その中で読者の期待を裏切る驚きが生まれる。テンプレはゴールではなくスタートラインです。そのスタートラインに立つことを恐れず、そこから自分だけのゴールを目指してください。

テンプレートに「制約だ」というネガティブな感情を持つ必要はありません。テンプレは「先人たちが嗅ぎ取った『面白さのエッセンス』」を体系化したものであり、それを学ぶことは「巨人の肩に乗る」行為です。肩に乗った先の景色は、地面から見上げるよりはるかに広い。その景色の中に、あなただけの「邪道」が見えてくるはずです。そしてその「邪道」は、王道を歩んだ経験があるからこそ、「型なし」ではなく「型破り」として読者に認められるのです。王道の中にこそ、あなただけの可能性が眠っています。

テンプレートを「制約」と感じるか「武器」と感じるかは、型の理解度に比例するでしょう。砂糖とバターの使い方を熟知した人だけが、砂糖とバターなしでも美味しいスイーツを作れる。 テンプレを愛せる人だけが、テンプレを超えられる のです。

まとめ

「邪道」とは最初から道を外れることではありません。王道に従い、王道を理解し、王道を使いこなせるようになった先に初めて見える道です。

まずはテンプレートを信頼して、一作品を完成させてみてください。その経験の中で「ここをこう変えたらもっと面白くなるのに」と感じるポイントが必ず出てきます。 その「変えたい衝動」こそが、あなただけの邪道への入り口 でしょう。

関連記事

物語の「型」入門|起承転結・序破急・三幕構成を比較する

なろう系Web小説の人気ジャンル完全ガイド|14の定番テンプレを徹底分析

三幕構成で「感情移入される物語」を書く方法

カタルシスを生む最強プロット集|テンプレートで学ぶ感情の高低差

この記事が参考になったら、ブックマーク or シェアしていただけると励みになります。

腰ボロ作家について
創作の「設定資料」と「物語の書き方」を中心に、550記事以上を公開中。
サイトトップX(Twitter)

よく読まれている記事

小説の書き方本をもっと読むなら → Kindle Unlimited