物語の「型」入門|起承転結・序破急・三幕構成を比較する
「物語には型がある」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?
起承転結。序破急。三幕構成。名前くらいは聞いたことがあるかもしれません。でも、それぞれの違いを聞かれると、意外と答えられないものです。
この記事では、物語の3大構成パターンを並べて比較します。「自分の作品にはどれが合うのか?」を判断するための、いわば構成のカタログだと思って読んでください。
そもそも「型」とは何か?
型とは、物語の展開を一定のルールで並べたテンプレートです。
RPGにたとえるなら、型は「ダンジョンの見取り図」のようなもの。ダンジョンの中で何をするか(戦闘やイベント)は自由ですが、入口と出口の位置、中ボスがいるフロアの場所はある程度決まっている。型を知っておくと、プレイヤー=読者を迷わせずにゴールまで導けます。
では、代表的な3つの型を見ていきましょう。
起承転結 ――日本人にもっとも馴染みのある型
起承転結は、日本の小中学校で教わる構成です。漢詩の絶句から来ているとされ、4つのパートで物語を構成します。
| パート | 役割 | 配分目安 |
|---|---|---|
| 起 | 世界と人物の紹介。読者に「どんな話か」を伝える | 10% |
| 承 | 物語を展開させる。伏線を張り、日常から非日常へ | 40% |
| 転 | 物語の方向が急激に変わる。最大の盛り上がり | 40% |
| 結 | 事態を収束させ、読者に満足感を残す | 10% |
起承転結のポイントは、「転」に全体の4割を割くことです。「転」は物語の山場であり、ここが薄いと読者は物足りなく感じます。逆に「起」と「結」は思い切って短くしていい。1:4:4:1がひとつの目安です。
起承転結が向いているケース
• 短編小説(原稿用紙30〜50枚程度)
• 1話完結型のWeb小説
• 日本の文学賞への応募作品
注意点
起承転結は4分割であるがゆえに、「転」の解像度が低いという弱点があります。「何かが起きて変わる」とは言うけれど、具体的にどんなイベントをどの順番で起こせばいいのか——そこは作者に委ねられます。
序破急 ――テンポ重視の3段構成
序破急は、日本の古典芸能「能」を源流に持つ構成です。世阿弥が確立したとされ、3つのパートで構成されます。
| パート | 役割 | 特徴 |
|---|---|---|
| 序 | 導入。ゆっくりと物語の空気を作る | 静 |
| 破 | テンポを上げて物語を動かす。核心へ向かう | 動 |
| 急 | 一気に畳み掛ける。最も速いテンポ | 疾走 |
序破急の特徴は、テンポの加速にあります。「静→動→疾走」と加速し続ける構成なので、読後にスピード感のある爽快な印象を残します。
序破急が向いているケース
• バトルもの、スポーツもの(テンポの加速と相性がいい)
• アニメの1クール(12話)構成(序3話+破6話+急3話)
• 短いシーン単位の構成にも使える
注意点
序破急には「減速する場所」がありません。テンポが上がりっぱなしなので、読者に考える間を与えにくい。長編で使うには、章ごとに序破急を繰り返す工夫が必要です。
三幕構成 ――ハリウッドが標準化した世界基準
三幕構成は、ハリウッド映画の脚本術として体系化された構成です。シド・フィールドが理論化し、現在も世界中の映画・ドラマ・小説で使われています。
| パート | 役割 | 配分目安 |
|---|---|---|
| 第1幕(セットアップ) | 主人公と世界を紹介し、「何が問題か」を提示 | 25% |
| 第2幕(コンフロンテーション) | 障害がエスカレート。主人公は試練に立ち向かう | 50% |
| 第3幕(レゾリューション) | クライマックスと解決。主人公は変化(成長)する | 25% |
三幕構成のポイントは、幕と幕の間にあるターニングポイントです。第1幕の終わりで「日常が壊れるイベント」が起き、第2幕の終わりで「もう後戻りできない選択」が迫られる。この2つの転換点が物語を駆動させます。
三幕構成が向いているケース
• 長編小説(10万字以上)
• Web小説の連載(第2幕を複数章に分けやすい)
• 映画・ドラマの構成分析
• キャラクターの内面的成長を描きたい作品
注意点
三幕構成の第2幕は全体の50%を占めます。ここが「中だるみ」しやすいのが最大の課題。そこを解決するために生まれたのが、三幕をさらに細かく分解したブレイク・スナイダー・ビートシート(BS2)です(→ 詳しくはSAVE THE CATの法則の記事へ)。
3つの型を比較する
ここまで見てきた3つの型を、主要な比較軸で並べてみましょう。「どれが優れているか」ではなく、「どんな状況でどれが機能するか」を見極めるための表です。
| 比較項目 | 起承転結 | 序破急 | 三幕構成 |
|---|---|---|---|
| 起源 | 漢詩の絶句 | 日本の能 | ハリウッド映画 |
| 分割数 | 4 | 3 | 3(+2つのTP) |
| 配分 | 1:4:4:1 | 柔軟 | 1:2:1 |
| 強み | 日本語話者に直感的 | テンポ加速の爽快感 | 世界標準、応用しやすい |
| 弱み | 「転」の解像度が低い | 減速できない | 第2幕が中だるみしやすい |
| 向いている長さ | 短編〜中編 | 短編〜中編 | 中編〜長編 |
| 向いているジャンル | 文学、日常系 | バトル、スポーツ | ジャンル問わず汎用 |
結局、どれを使えばいいのか?
答えは「どれでもいい。ただし、知ったうえで選ぶこと」です。
初めて長編を書くなら、まずは三幕構成がおすすめです。応用範囲が広く、解説書も多い。「SAVE THE CATの法則」のように、さらに細かいテンプレートに展開する道も開けています。
短編やコンテスト向けの作品なら、起承転結の「転」を意識するだけでも構成はぐっと引き締まります。
テンポ重視のバトルものなら、序破急の加速感が武器になるでしょう。
そして重要なのは、ひとつの作品の中で複数の型を使い分けてもいいということ。物語全体は三幕構成で設計し、各章の中は序破急でテンポを作り、決定的な1シーンだけ起承転結で「転」を叩きつける——そんな合わせ技も可能です。
型は鋳型ではなく、ガイドレールです。まずは一本書いてみて、「自分の手にしっくりくる型」を見つけてください。
さらに深く学ぶなら
• 三幕構成を感情設計の道具として使う → 三幕構成で「感情移入される物語」を書く方法
• 三幕構成をさらに15分割したテンプレート → 『SAVE THE CATの法則』完全ガイド
• 3大構成パターンの源流にある英雄神話 → キャンベルの「英雄の旅」完全ガイド
• AIを使って構成パターンを壁打ちしたいなら → ChatGPTやClaudeに「この物語を三幕構成で分析して」と頼むだけで、自分の作品の構成が可視化できます。まずは好きな作品で試してみてください。




