物語の「型」入門|起承転結・序破急・三幕構成を比較する

2021年9月23日

「物語には型がある」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?

起承転結。序破急。三幕構成。名前くらいは聞いたことがあるかもしれません。でも、それぞれの違いを聞かれると、意外と答えられないものです。

この記事では、物語の3大構成パターンを並べて比較します。「自分の作品にはどれが合うのか?」を判断するための、いわば構成のカタログだと思って読んでください。

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そもそも「型」とは何か?

型とは、物語の展開を一定のルールで並べたテンプレートです。

RPGにたとえるなら、型は「ダンジョンの見取り図」のようなもの。ダンジョンの中で何をするか(戦闘やイベント)は自由ですが、入口と出口の位置、中ボスがいるフロアの場所はある程度決まっている。型を知っておくと、プレイヤー=読者を迷わせずにゴールまで導けます。

では、代表的な3つの型を見ていきましょう。

起承転結 ――日本人にもっとも馴染みのある型

起承転結は、日本の小中学校で教わる構成です。漢詩の絶句から来ているとされ、4つのパートで物語を構成します。

パート役割配分目安
世界と人物の紹介。読者に「どんな話か」を伝える10%
物語を展開させる。伏線を張り、日常から非日常へ40%
物語の方向が急激に変わる。最大の盛り上がり40%
事態を収束させ、読者に満足感を残す10%

起承転結のポイントは、「転」に全体の4割を割くことです。「転」は物語の山場であり、ここが薄いと読者は物足りなく感じます。逆に「起」と「結」は思い切って短くしていい。1:4:4:1がひとつの目安です。

起承転結が向いているケース

• 短編小説(原稿用紙30〜50枚程度)

• 1話完結型のWeb小説

• 日本の文学賞への応募作品

注意点

起承転結は4分割であるがゆえに、「転」の解像度が低いという弱点があります。「何かが起きて変わる」とは言うけれど、具体的にどんなイベントをどの順番で起こせばいいのか——そこは作者に委ねられます。

序破急 ――テンポ重視の3段構成

序破急は、日本の古典芸能「能」を源流に持つ構成です。世阿弥が確立したとされ、3つのパートで構成されます。

パート役割特徴
導入。ゆっくりと物語の空気を作る
テンポを上げて物語を動かす。核心へ向かう
一気に畳み掛ける。最も速いテンポ疾走

序破急の特徴は、テンポの加速にあります。「静→動→疾走」と加速し続ける構成なので、読後にスピード感のある爽快な印象を残します。

序破急が向いているケース

• バトルもの、スポーツもの(テンポの加速と相性がいい)

• アニメの1クール(12話)構成(序3話+破6話+急3話)

• 短いシーン単位の構成にも使える

注意点

序破急には「減速する場所」がありません。テンポが上がりっぱなしなので、読者に考える間を与えにくい。長編で使うには、章ごとに序破急を繰り返す工夫が必要です。

三幕構成 ――ハリウッドが標準化した世界基準

三幕構成は、ハリウッド映画の脚本術として体系化された構成です。シド・フィールドが理論化し、現在も世界中の映画・ドラマ・小説で使われています。

パート役割配分目安
第1幕(セットアップ)主人公と世界を紹介し、「何が問題か」を提示25%
第2幕(コンフロンテーション)障害がエスカレート。主人公は試練に立ち向かう50%
第3幕(レゾリューション)クライマックスと解決。主人公は変化(成長)する25%

三幕構成のポイントは、幕と幕の間にあるターニングポイントです。第1幕の終わりで「日常が壊れるイベント」が起き、第2幕の終わりで「もう後戻りできない選択」が迫られる。この2つの転換点が物語を駆動させます。

三幕構成が向いているケース

• 長編小説(10万字以上)

• Web小説の連載(第2幕を複数章に分けやすい)

• 映画・ドラマの構成分析

• キャラクターの内面的成長を描きたい作品

注意点

三幕構成の第2幕は全体の50%を占めます。ここが「中だるみ」しやすいのが最大の課題。そこを解決するために生まれたのが、三幕をさらに細かく分解したブレイク・スナイダー・ビートシート(BS2)です(→ 詳しくはSAVE THE CATの法則の記事へ)。

3つの型を比較する

ここまで見てきた3つの型を、主要な比較軸で並べてみましょう。「どれが優れているか」ではなく、「どんな状況でどれが機能するか」を見極めるための表です。

比較項目起承転結序破急三幕構成
起源漢詩の絶句日本の能ハリウッド映画
分割数433(+2つのTP)
配分1:4:4:1柔軟1:2:1
強み日本語話者に直感的テンポ加速の爽快感世界標準、応用しやすい
弱み「転」の解像度が低い減速できない第2幕が中だるみしやすい
向いている長さ短編〜中編短編〜中編中編〜長編
向いているジャンル文学、日常系バトル、スポーツジャンル問わず汎用

結局、どれを使えばいいのか?

答えは「どれでもいい。ただし、知ったうえで選ぶこと」です。

初めて長編を書くなら、まずは三幕構成がおすすめです。応用範囲が広く、解説書も多い。「SAVE THE CATの法則」のように、さらに細かいテンプレートに展開する道も開けています。

短編やコンテスト向けの作品なら、起承転結の「転」を意識するだけでも構成はぐっと引き締まります。

テンポ重視のバトルものなら、序破急の加速感が武器になるでしょう。

そして重要なのは、ひとつの作品の中で複数の型を使い分けてもいいということ。物語全体は三幕構成で設計し、各章の中は序破急でテンポを作り、決定的な1シーンだけ起承転結で「転」を叩きつける——そんな合わせ技も可能です。

型は鋳型ではなく、ガイドレールです。まずは一本書いてみて、「自分の手にしっくりくる型」を見つけてください。

さらに深く学ぶなら

• 三幕構成を感情設計の道具として使う → 三幕構成で「感情移入される物語」を書く方法

• 三幕構成をさらに15分割したテンプレート → 『SAVE THE CATの法則』完全ガイド

• 3大構成パターンの源流にある英雄神話 → キャンベルの「英雄の旅」完全ガイド

• AIを使って構成パターンを壁打ちしたいなら → ChatGPTやClaudeに「この物語を三幕構成で分析して」と頼むだけで、自分の作品の構成が可視化できます。まずは好きな作品で試してみてください。

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