読みやすい日本語の語順|主題の「は」と修飾語の長さで文が変わる

2020年1月18日

「なんとなく読みにくい文章」の正体は、多くの場合語順にあります。

日本語は英語と比べて語順の自由度が高い——とよく言われます。これは確かにそうで、主語・目的語・動詞の位置を入れ替えても文法的に成立する場合が多いです。

しかし、自由だからこそ、語順を間違えると一気に読みにくくなるのも事実です。

この記事では、日本語の語順を決めるときに意識すべき2つのポイントを解説します。たった2つですが、これを知っているだけで文章の読みやすさは大きく変わります。

ポイント① 主題の「は」を意識する

日本語には「主語」とは別に「主題」という概念があります。そして、この「主題」を示す助詞が「は」です。

主語と主題の違い

主語 (格助詞「が」)= 動作の主体を示す → 「猫走る」

主題 (係助詞「は」)= 文のテーマ(何について話すか)を示す → 「猫走る」

「猫が走る」は「走っているのが猫だ」という事実を伝えます。
「猫は走る」は「猫について言えば、走るものだ」というテーマ設定です。

この違いは微妙に見えて、文の印象を大きく左右します。

 

「は」の位置が語順を決める

「は」は文のテーマを提示する助詞なので、文の早い段階で出すのが原則です。テーマが提示される前に情報が続くと、読者は「何の話をしているのか」がわからないまま読み進めることになり、認知負荷が上がります。

❌(テーマが遅い)
> 昨日の夕方、駅前の通りで、赤いコートを着た女性が、ずっと探していた喫茶店は、もう閉店していた。

この文は、「喫茶店は」にたどり着くまで20文字以上あります。読者は「何の話?」と思いながら読み進めなければなりません。

⭕(テーマが早い)
> ずっと探していた喫茶店は、もう閉店していた。昨日の夕方、駅前の通りでようやく見つけたのに。

「喫茶店は」が冒頭に来ることで、読者はすぐに「喫茶店の話だな」と理解できます。続く情報は、すでに設定されたテーマに沿って処理されるため、ストレスなく読めます。

もう一つの例


> 去年のクリスマスに母が私にくれた手編みのマフラーは、今でも大切に使っている。


> 母の手編みのマフラーは、今でも大切に使っている。去年のクリスマスにもらったものだ。

前者は「マフラーは」に到達するまでの修飾が長すぎます。後者は主題を先に出し、補足情報を次の文に分けています。

原則:「は」はできるだけ文の前半に置く。

 

ポイント② 長い修飾語は前、短い修飾語は後

日本語の修飾語は、被修飾語(説明される言葉)の前に置くのが基本です。

> 赤いリンゴ (「赤い」→修飾語、「リンゴ」→被修飾語)

問題は、修飾語が複数あるときの順番です。

修飾語の並べ方の原則

結論から言えば、長い修飾語を前に、短い修飾語を後に置くと読みやすくなります。

❌(短→長の語順)
> 美しい、去年の夏にパリの蚤の市で見つけた、アンティークのランプ

⭕(長→短の語順)
> 去年の夏にパリの蚤の市で見つけた、美しいアンティークのランプ

なぜこの順番が読みやすいのでしょうか。

長い修飾語が後に来ると、修飾語がどの言葉を修飾しているのか一時的にわからなくなるからです。文の構造が「宙ぶらりん」になる時間が長くなり、読者は無意識にストレスを感じます。

長い修飾語を先に出しておけば、短い修飾語→被修飾語とつながる距離が近く、文の構造がスッと頭に入ります。

小説での実践例


> 静かな、幼い頃に亡くなった祖母がいつも座っていた、窓辺の椅子


> 幼い頃に亡くなった祖母がいつも座っていた、静かな窓辺の椅子

「幼い頃に〜座っていた」が長い修飾語、「静かな」が短い修飾語です。長い修飾語を前に持ってくることで、「静かな窓辺の椅子」が一つのまとまりとして読め、情景が浮かびやすくなります。

例外:意図的な倒置

もちろん、わざと語順を崩すこともあります。

> 美しかった。 あの、夏の夕暮れに見た、海の色は。

このような倒置法は、語順を崩すことで読者の意識を特定の言葉に引きつけるテクニックです。ルールを知ったうえで崩すのと、知らずに崩すのでは、まったく効果が違います。

 

2つのポイントを組み合わせる

2つのポイントを同時に適用すると、文の読みやすさは劇的に変わります。

❌(両方のルール違反)
> 先月、古本屋で見つけた、学生時代に読んで感銘を受けた、あの作家の最新作は、期待外れだった。

この文は「最新作は」(主題)に到達するまでが長く(ポイント①違反)、長い修飾語が後ろに来ています(ポイント②違反)。

⭕(両方のルールを適用)
> あの作家の最新作は、期待外れだった。学生時代に感銘を受け、先月古本屋で見つけて即買いしたのに。

主題の「は」を文頭に移動し、長い補足情報を次の文に分離しました。2つの文に分けることで、それぞれの文が短くなり、語順の問題も自然に解消されています。

実は「一文を短くする」ことが、語順問題の最も簡単な解決策だったりします。長い一文を2つに割ると、修飾語の順序で悩む必要がなくなることが多いのです。

 

まとめ——語順は「読者への思いやり」

日本語の語順のポイントをまとめます。

1. 主題の「は」は文の前半に置く → 読者が「何の話か」すぐわかるように
2. 長い修飾語は前、短い修飾語は後 → 修飾関係が一目でわかるように

どちらも、読者の認知負荷を下げるための工夫です。語順は文法の話に見えて、実は「読者への思いやり」の話。

迷ったときは、書いた文を音読してみてください。つっかえる箇所は、語順に問題がある可能性が高いです。音読でスムーズに読めれば、語順は正解に近づいています。


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