書く時間は「見つける」ものではなく「設計する」もの

2026年2月17日

こんにちは。腰ボロSEです。

以前、兼業作家のタイムマネジメントについて書きました。15分スプリントや脳内執筆の話です。あの記事には「今の環境の中でいかに時間を捻出するか」を詰め込みました。

今回はその前段階の話をします。そもそも「捻出」しなければならない環境にいること自体が、問題なのではないかという話です。

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「書く時間がない」の3つの正体

「時間がない」と嘆くとき、原因は大きく3つに分かれます。

ひとつ目は、純粋に拘束時間が長いこと。通勤が片道1時間、残業が月40時間ある生活だと、帰宅は21時を回ります。そこから風呂と食事を済ませれば23時。翌朝6時に起きるなら7時間は寝たい。差し引きゼロです。

ふたつ目は、精神的な消耗。拘束時間は短くても、人間関係のストレスや理不尽な仕事で頭の中が占領されている状態です。帰宅してエディタを開いても、異世界の風景が浮かんでこない。脳のメモリが全部、仕事に食われているんですよね。RPGで言えばMP(精神力)がゼロの状態。どんな強力な魔法(文章)も詠唱できません。

みっつ目は、予測不可能性。「今日は20時に帰れそうだ」と思っていたのに、17時に障害が発生して終電コースになる。こういう日が週に1回でもあると、執筆計画が立てられません。連載を抱えている人にとって、「いつ書けるかわからない」というのは致命的です。

この3つのうち、どれに当てはまるかによって、取るべき対策は変わります。ひとつ目だけなら生活の見直しで対処できることもある。でも、ふたつ目やみっつ目が重なっているなら、「環境そのもの」を変えることを真剣に考えたほうがいいかもしれません。

職場を「執筆インフラ」として選ぶ

私は過去に2回、転職をしています。

1回目は、SIerの客先常駐から自社開発の会社へ。理由は「自分のスケジュールを自分で決められないこと」でした。客先常駐という働き方は、顧客の都合で予定が変わります。「今日は早く帰って第3章を書こう」と思った日に限って、「この資料、明日の朝までに」と言われる。ガンダムで言えば、補給線を敵に握られている状態です。戦略もへったくれもありません。自分の時間を自分で設計できない環境で連載を維持するのは、私には無理でした。

2回目は、小さいベンチャーから中堅企業へ。ベンチャーには「社長の思いつきで月曜に全部ひっくり返る」という問題がありました。面白い仕事ではあったんです。刺激もあった。でも「来週から方針変更ね」と金曜の夕方に言われると、週末が消滅します。長編のプロットを3ヶ月かけて練り上げたのに、本業のほうで3ヶ月分の計画がゼロになる経験を何度かすると、心が折れそうになりました。

中堅企業に移ってからは、良くも悪くも予測通りに仕事が進みます。刺激は減りました。でも「来月の水曜日は定時に帰れる」という予測が立つ。それだけで執筆計画が組めるようになりました。

予測可能性。これが兼業作家にとっての最重要ステータスです。

求人票を「作家の目」で読む

転職サイトで求人票を見るとき、一般的には「年収」「勤務地」「事業内容」に目がいきます。兼業作家が見るべき場所は、少し違います。

まず「月の残業時間」。20時間以内なら合格圏です。40時間を超えると平日の執筆はほぼ不可能になります。口コミサイトで実態を確認するのも忘れずに。求人票の「月平均20時間」が実際には「繁忙期60時間・閑散期0時間」だったりしますから。

次に「副業の可否」。これは商業デビューを見据えるなら必ず確認してください。就業規則で副業禁止の会社にいると、受賞して書籍化が決まった瞬間に問題が出ます。「今は趣味で投稿しているだけだから」と思っていても、印税振込が始まったら副業になります。

それから「リモートワーク」の有無。通勤が片道1時間なら、往復で2時間。これがゼロになるだけで、毎日2時間の執筆時間が生まれます。週5日で10時間。月にすると40時間以上。文庫本の短編が1本書ける計算です。

最後に「転勤の有無」。見落としがちですが、転勤で生活環境が変わると、執筆のルーティンが崩壊します。引っ越しで1ヶ月、新しい通勤経路に慣れるのに2ヶ月、気がつけば3ヶ月書いていない——連載をエタらせる原因として、「転勤」は想像以上に多いのではないかと感じます。

年収を下げる勇気と、その算数

正直に書きます。私は2回目の転職で、年収が少し下がりました。前職のほうが残業代込みで手取りが多かった。でもその「残業代」の正体は、小説に使うはずだった時間の対価です。

計算してみます。月の残業が20時間減って、年収が30万円下がったとしましょう。月あたり2万5千円。20時間で割ると時給1,250円。その20時間を執筆に充てて、1年で長編が1本完成したとします。

ラノベの文庫が初版1万部で刷られた場合、定価700円×印税率8%×1万部=56万円。年収減30万円を差し引いても26万円のプラスです。もちろん出版できるかどうかは不確実ですが、「絶対に書けない環境」と「書ける可能性がある環境」を比べたら、後者を選ぶほうが合理的ではないでしょうか。

出版が遠い段階であっても、「書く時間が増える」ということは「作品が完成する確率が上がる」ということです。完成しなければ投稿もできない。投稿できなければ受賞もない。最初のボトルネックは常に「完成させること」であり、そのために必要なのは才能よりも時間でした。少なくとも私の場合は。

「良い会社」の定義は自分で決める

転職サイトの「良い会社ランキング」は、年収と福利厚生と知名度で構成されています。でもそのランキングは、「小説を書き続けたい人間」のために作られたものではありません。

あなたが「書き続けたい」のであれば、職場は執筆を可能にするインフラです。電気や水道と同じで、安定して供給されることが何より重要。華やかさよりも確実さ。

面接で「御社を志望した理由は」と聞かれたとき、心の中では「定時で帰れるからです」と思っています。口に出すのは「安定した就業環境で長期的に貢献したい」ですが。面接官には少し物足りなく映るかもしれません。それでも、帰宅して椅子に座り、エディタを開いて、昨日の続きから書き始められる。その瞬間のために、私は職場を選んでいます。

ここまで読んで頂きありがとうございました。「書く時間がない」と感じている方がいたら、テクニックで乗り切ろうとする前に、一度「そもそも環境は適切か」を問い直してみてください。時間は「見つける」ものではなく「設計する」もの。設計を変えれば、生活の中に自然と執筆時間が生まれます。

さて、今日も物語を書きましょう。腰は壊しても、筆は折らない。

腰ボロSE

ここまで読んで頂きありがとうございました。
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