【映画×創作】機動戦士ガンダム『閃光のハサウェイ』から学ぶ「共感させない主人公」の書き方

2026年2月15日

『閃光のハサウェイ』はなぜ賛否両論?新旧ファンの視点から読み解く

機動戦士ガンダム『閃光のハサウェイ』第2部、もうご覧になりましたか? 私は公開初日に劇場へ足を運び、その圧倒的な映像美に打ちのめされてきました。

正直なところ、この作品は「物語を書く人間」にとって、あまりにも劇薬です。 なぜなら、エンターテインメントの定石である「主人公への共感」を真っ向から否定し、それでもなお面白いという離れ業をやってのけているからです。

「主人公に共感できない」 「何を考えているかわからない」

そんな感想も多い本作ですが、実はそこにこそ、我々創作者が盗むべき「大人の群像劇」を描くための技術が隠されています。

今回は、第1部・第2部を通して見えてきた「共感させない主人公の描き方」と、そこから生まれる物語のドライブ感について、書き手の視点から分析していきます。


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第1部が描いたもの — 視点とテーマ

圧倒的な映像美と大人のドラマ

第1部『閃光のハサウェイ』最大の強みは、近年のガンダムシリーズ屈指の映像表現です。サンライズが培った3DCG・背景美術・戦闘アニメーションが融合し、森の戦闘シーンやモビルスーツの質感はまるで実写のようなリアリティを見せました。視覚的インパクトの強さは、旧来のファンにとっての感動ポイントでした。

ハサウェイとギギ、そしてケネスの三角関係。単純な恋愛ではなく、それぞれが抱える正義や使命、過去のトラウマが複雑に絡み合う大人のドラマが展開されます。「子供向けロボットアニメ」という枠を完全に超えた作品として、30代以上のファンから高い評価を得ました。

また、マフティー(ハサウェイ)が行うテロリズムの是非という重いテーマも、現代社会と重ね合わせて考えさせられる内容です。正義とは何か?暴力で世界を変えることは許されるのか?——こうした問いを投げかける姿勢に、作品の深みを感じた視聴者も多いでしょう。

第2部「キルケーの魔女」公開情報まとめ

第1部から時を経て、2026年1月30日、待望の第2部『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』が公開されました。公開決定は2025年6月にアナウンスされ、公式特報映像や場面写真も多数解禁されています。

この第2部は原作小説の第2巻部分をベースにしており、ハサウェイ・ノアのマフティーとしての戦い、エリートパイロットのレーン・エイム、そしてΞ(クスィー)ガンダムを軸とした戦闘シーンが描かれます。主要キャスト・スタッフは第1部から続投し、宇宙世紀シリーズ全体の大きな物語構造を継承しています。

第2部『キルケーの魔女』では、前作で高評価だった映像美がさらに進化しており、人間関係やキャラクターの内面を深く描いた物語はとても見ごたえがあるものでした。

第2部「キルケーの魔女」感想

まず、第一部と比べると、戦闘シーンの画面が全体的に明るく、パイロットがどのようなモニターを通して敵を捉え戦っているのかがわかりやすいと感じました。閃光のハサウェイ第一部では夜襲が主に描かれたこともあり、画面が終始暗く、何をしているのかがわかりづらかったのですが、大幅に改善されています。まるで上質な戦闘機シミュレーターの動画を見ているようで、リアルなモビルスーツ戦とはこういうものかという臨場感を得ることができました。

また、ハサウェイを中心とした人間模様の描き方も深化していたように思います。特に、ハサウェイの今カノ(ケリア・デース・・・途中で頭を丸めてマフティーをやめた方です)との関係が終わってから、マフティーの女性陣がこぞってハサウェイにアピールをかけているところなどは、ドロドロで肉欲にまみれていてよかったですね。ハサウェイ自身は、ギギとの出会いを忘れられずにいて、女性たちからのアピールを全く意に介していないところが、マフティーの女性たちとハサウェイ&ギギの本質的な生きる場所の違いを示しているようで残酷でした。男女はどうしたって、同じレベルのもので惹かれあう運命なのでしょう。

そして、終盤に向けてはハサウェイが今何をしているのかを知らないであろう、ブライトさんの参戦が示唆されたり・・・ハサウェイに待ち構える最悪の最後を想像させるストーリーになっていました。すべてを捨ててハサウェイに合流したギギがどうふるまうのかもとても興味深いです。それでも、マフティーはテロリストですから、最後はきっとケネスにやられてしまうのでしょうね・・・だとしたらブライトさんは息子がしでかしたとてつもない罪と向き合わなければならなくなる・・・という展開が想像できて第三部が楽しみでありながら、胸が苦しくなります。

否定派の声:難解さと原作からの乖離

一方で、批判的な意見も少なくありません。

初見お断り?説明不足な世界観

「逆襲のシャア」を見ていないと理解できない設定、突然現れる専門用語、複雑な政治情勢——初めてガンダムを見る人、あるいはガンダムは知っているけど宇宙世紀シリーズは詳しくない人にとって、本作はかなり難解です。

例えば、ハサウェイがなぜテロリストになったのか(第二部でケリアが誘って次第にのめりこんでいくようなシーンが描かれましたが)、クェスとの関係、地球連邦政府の腐敗——これらの背景を知らないと、ハサウェイの行動に共感することも、物語に入り込むことも難しいんですよね。

原作ファンからの不満

小説版の原作ファンからは「キャラクターの解釈が違う」「重要なシーンがカットされている」といった声も。特にギギのキャラクター造形については、原作とアニメで印象が大きく異なり、賛否が分かれました。

また、三部作ということで、物語が中途半端なところで終わってしまう点も不満の一つです。「え、ここで終わり?」と感じた人も多かったのではないでしょうか。一部が2021年、二部が2026公開ということで、次回は2030年か?などともささやかれています。

【創作論】「共感させない主人公」はなぜ成立するのか

さて、ここからが本題です。

まず問いを正確に立て直しましょう。 「ハサウェイは共感できないのに面白い。なぜ?」——単にこう問うだけでは雑すぎます。

もう一歩踏み込んで考えるべきは:

「主人公への共感に頼らずに物語のドライブ力を生む技法は何か。その技法は小説にも転用できるか。」

この問いに対して、私なりの仮説を4つ並べ、それぞれの妥当性を検証しながら話を進めます。

『閃光のハサウェイ』の最大の特異性は、主人公ハサウェイに「共感」させる気がないことです。これは創作の教科書に真っ向から反しています。

普通、物語の入門書を開けば「主人公には読者が感情移入できる要素を持たせなさい」と書いてあります。目標がある。弱さがある。成長する。読者が「この人を応援したい」と思える造形にしなさい、と。

しかしハサウェイはどうでしょうか。

  • テロリストである(応援しづらい)
  • 動機が複雑すぎる(クェスの死、父ブライトの影、連邦への怒り——しかもほとんど説明されない)
  • 感情を表に出さない(何を考えているかわからない)
  • 第2部では女性関係もドロドロ(聖人ではない)

普通に考えたら、読者がついてこられない主人公です。 なのに、物語は面白い。

なぜか?

技法①:「共感」の代わりに「興味」で引っ張る

ハサウェイに「共感」はできなくても、「この人は次に何をするんだろう」という興味は途切れません。

これは小説にそのまま使えるテクニックです。

共感型の主人公は「私もそう思う!がんばれ!」と読者を引き込みます。 一方、興味型の主人公は「この人、理解できないけど目が離せない」で引き込みます。

後者の方が実は物語のドライブ力は強い。なぜなら「わからない」は最強のフックだからです。

ラノベやWeb小説でも、無口系・何考えてるかわからない系のキャラが人気を集めることがありますよね。あれと構造は同じです。ただしハサウェイの場合は、それをもっと重厚に、もっと痛みを伴う形でやっている。

ここには裏付けがあります。富野由悠季監督自身がハサウェイの造形について「ブライトとミライの子として真剣に考えた。偏屈で、向上心を持っていて、ファザコンでもありマザコンでもある」と語っています。つまり「わかりにくい」のは偶然や手抜きではなく、親から受け継いだ性格の複合体として意図的に設計された結果です。

富野監督はまた、映画の評価について「ここが良かったと言われた映画は失格。全体を観た時に"得したな"と思わせるのが最大の評価」とも発言しています。これは興味型主人公の設計思想そのものです——瞬間的な共感ではなく、全体を通した「得をした感覚」で勝負する。

技法②:周囲のキャラクターが「鏡」になる

ハサウェイ自身は感情を見せません。 でも、ギギやケネス、ケリアといった周囲のキャラクターがハサウェイに強く反応することで、間接的にハサウェイの人間としての重みが伝わってきます。

  • ギギはハサウェイに惹かれ、すべてを捨てて合流する → 「この男にはそれだけの引力がある」と読者は理解する
  • ケネスはハサウェイを敵として追いながら、人間としては認めている → 「対等な敵」として主人公の格が上がる
  • ケリアとの関係が終わり、他の女性のアプローチを無視する → 「ハサウェイの中にはギギしかいない」という一途さが浮かぶ

つまり主人公の内面を、主人公以外のキャラクターに語らせているのです。

これは小説において非常に強力な手法です。特に三人称で書いているとき、主人公の独白に頼らずに人間性を伝える技術として覚えておいて損はありません。

技法③:「正しくない主人公」は読者の思考を起動する

ハサウェイはテロリストです。民間人を巻き込んでいます。 この「正しくなさ」が、実は物語に深みを与えています。

正義の味方が悪を倒す物語は気持ちいいですが、読者は「考える」必要がありません。 一方、「主人公は正しいのか?」という疑問を持ったまま物語を追う体験は、読者の脳を能動的にします。

受動的な「消費」から、能動的な「思考」へ。

これがいわゆる「語れる作品」の正体です。SNSで感想が割れて議論が起きる作品は、だいたいこの構造を持っています。閃光のハサウェイが公開後にXで大量の考察ポストを生んだのも、まさにこのメカニズムでしょう。

自分の小説でこれをやるなら、主人公に「読者が簡単に是非を判断できない選択」をさせることです。「敵を殺す」のではなく「味方を見捨てる」。「悪を倒す」のではなく「小さな悪を選ぶ」。そうすることで、読者は物語の外から「自分ならどうするか」を考え始めます。

技法④:ターゲットを絞る勇気

『閃光のハサウェイ』は、すべての人に愛される作品を目指していません。 「逆襲のシャア」を知っている人、宇宙世紀の政治構造を理解している人、大人のドラマを求めている人——そこに向けて、一切の妥協なく作られています。

これは作品の良し悪しではなく、「誰に向けて作られたか」「何を優先したか」という制作姿勢の結果だと感じます。

そしてこの戦略は、数字にも表れています。

第1部は初動3日間5.2億円からスタートし、最終興行収入22.3億円を記録しました。そして第2部『キルケーの魔女』は431スクリーンで公開され、初動3日間8.4億円、11日間で15.3億円を突破——前作超えが射程に入っています。

比較すると、SEED FREEDOMの初動は10.6億円、ジークアクスの最終は33.4億円。ハサウェイは「ガンダムIPの中堅〜上位」に位置しており、万人向けでない作品が商業的にも成立することを証明しています。

映画.comでの評価は3.9/5.0(500件超のレビュー)。レビュー傾向を見ると「映像美は素晴らしいが映画としては評価しづらい、でも好き」という反応が多く、これはまさに「共感できないが惹かれる」という興味型主人公の効果そのものです。

ジークアクスや水星の魔女でついた新規ファンも、宇宙世紀の重厚な雰囲気をちゃんと楽しもうとしている空気があります。ギギやケネスはキャラクターとしても魅力的ですし、音楽も素晴らしい。物語がわからなくてもハサウェイとギギとケネスの三角関係を追うだけで面白い作品になっています。

特定の読者に深く刺さる作品を作る勇気——それが、強い作家性を生み出す。

自分の小説のターゲットが「全員」になっている人は、一度立ち止まって考えてみてください。「この物語を最も必要としている読者は誰か?」と。


この分析で分かること・まだ分からないこと

創作論は「正解がない領域」です。だからこそ、分かる範囲と分からない範囲を正直に分けておきます。

確認できること(ファクト):

  • 第2部の興行成績は前作超えペース → 「ターゲットを絞った作品」が商業的にも成立した実例
  • 映画.comの評価3.9/5.0(500件超) → 極端な低評価ではなく「刺さる層には深く刺さる」パターン
  • 富野監督自身がハサウェイの「わかりにくさ」を意図的に設計したと発言 → 偶然の産物ではない

筆者の解釈(ここからは仮説です):

  • 上の4技法の分類は私の整理であり、制作チームの公式見解ではありません
  • 「興味型主人公」は映像(戦闘シーンで目が離せない)と文章(読者はいつでもページを閉じられる)で効果が異なる可能性があります

まとめ:閃光のハサウェイから盗める4つの創作技法

技法 内容 あなたの小説での応用
興味型主人公 共感ではなく「次どうなる?」で引っ張る 主人公の動機を最初から全部見せない。謎を残す
鏡キャラ配置 周囲が主人公の人間性を語る サブキャラの反応で主人公の魅力を間接描写する
正しくない選択 読者の思考を起動させる 主人公に「簡単に是非を判断できない選択」をさせる
ターゲット絞り 全員に好かれようとしない 「この物語を最も必要としている読者は誰か」を決める

どうですか、使えそうですか?

もちろん、この4つすべてを自分の作品に入れる必要はありません。一つだけでも意識すれば、物語の奥行きはぐっと変わるはずです。

ぜひ次に映画を見るときは、「この主人公は共感型か、興味型か?」という視点で見てみてください。きっと新しい発見がありますよ。

閃光のハサウェイ

ここまで読んで頂きありがとうございました。
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