イメージラフ・ログライン・ナラティブ|プロット作りの3つの道具
プロットを作る前に、3つの「道具」を準備しましょう。
RPGにたとえるなら——
• イメージラフ = ゴールの目印となる「旗」🚩
• ログライン = 道に迷わないための「コンパス」🧭
• ナラティブとレシ = ゴールまでの「地図と道」🗺️
旗を立て、コンパスで方角を確認し、地図を読みながら道を歩く。この順番で物語の設計を進めると、迷子になりません。
道具①:イメージラフ=「旗」
イメージラフとは、完成形のざっくりとしたイメージです。
「この物語が完成したとき、読者はどんな気持ちになっているか?」「表紙にはどんな絵が描かれているか?」「帯にはどんな文句が書かれているか?」
こうしたゴールの雰囲気を先に掴んでおく。それがイメージラフです。
具体的にやること
• 完成した物語を読んだ読者の感想を3つ想像する
• 書店に並んでいるときの表紙イメージを妄想する
• 「こういう作品を書きたい」という参考作品を3つ挙げる
精密な設計図は要りません。あくまで「旗」——遠くに見える目印です。歩いているうちに旗の位置が多少ずれても構いません。
道具②:ログライン=「コンパス」
ログラインとは、物語の面白さを1文で伝える紹介文です。
「どんな人が、どんなことをする、どんな話」——これを面白そうに一言で言い切る。
ログラインの3技法
#### 技法① オーバー表現
誇張して面白さを際立たせる。人間の脳は「極端なもの」に自然と注意を向けます。「少年が成長する」ではアンテナが反応しないが、「落ちこぼれが最強になる」と「どうやって?」と興味が生まれます。
• ✗「少年が成長する話」
• ○「落ちこぼれ少年が魔王を倒して世界を救う話」
#### 技法② 遠い存在の掛け合わせ
普通なら組み合わせない要素を掛け合わせる。人間の脳は「不協和音」に反応します。「殺し屋」と「幼稚園の先生」はそれぞれ単体では平凡ですが、掛け合わせた瞬間に「どういう状況だそれ?」とインパクトが生まれます。2つの要素の距離が遠いほど、掛け合わせたときの意外性が大きくなります。
• 「殺し屋 × 幼稚園の先生」(掛け合わせの意外さ=面白さ)
• 「AIロボット × 俳句師匠」
#### 技法③ ほんの少しだけずらす
既知のジャンルから微妙にずらして興味を引く。
• 「勇者が魔王を倒す話……ただし勇者はスライム」
• 「推理もの……ただし探偵は犯人」
ログラインの機能
ログラインは物語のコンパスです。書いている途中で「今、何を書いているんだっけ?」と迷ったら、ログラインに立ち戻る。「このシーンは、ログラインの面白さに貢献しているか?」と自問するだけで、軌道修正できます。
AIでログラインを生成する
ChatGPTやClaudeに「以下の設定でログラインを5パターン作ってください」と指示するのが効率的です。
プロンプト例:
> 設定:中世ファンタジー、魔法が使えない少年、魔王との戦い
> 条件:ログラインを5パターン作成。3技法(オーバー表現、遠い存在の掛け合わせ、少しだけずらす)をそれぞれ使ってください。
AIが出した候補から「これだ」と思うものを選び、さらに自分の言葉でブラッシュアップする。
AIのログラインをそのまま使う人がいますが、それでは「どこかで見た感」が残ります。AIの出力は叩き台であって完成品ではない。「この言い回し、自分ならどう変える?」と問い直す工程が欠かせません。特に技法②(遠い存在の掛け合わせ)は人間の直感が強い領域なので、AIに倫「対立する2要素を”つ出して」と指示し、その中から直感で「これは面白い!」と感じたものを拾うのがベストです。
道具③:ナラティブとレシ=「地図と道」
ここは少し専門的な概念ですが、知っておくとプロット設計の解像度が上がります。
ナラティブ=「地図」
ナラティブとは、物語の構造そのもの。出来事を時系列に並べた骨格です。
桃太郎で言えば——
(A) 時系列の出来事:
1. 桃から生まれる → 2. 成長する → 3. 鬼退治を決意する → 4. きびだんごを持って出発 → 5. 犬を仲間にする → 6. 猿を仲間にする → 7. 雉を仲間にする → 8. 鬼ヶ島に到着 → 9. 鬼と戦う → 10. 鬼を倒す → 11. 宝物を持ち帰る
これがナラティブ。物語の「地図」です。
ただし、地図通りに歩くだけでは面白くありません。地図を起承転結に再構成する必要があります。
(B) 起承転結に再構成:
• 起:桃から生まれた少年が鬼の悪事を知る
• 承:三匹の動物を仲間にする旅
• 転:鬼ヶ島突入と大将との決戦
• 結:勝利と帰還
(A)の時系列を(B)のドラマ構成に並べ替える。これが「ナラティブの設計」です。
レシ=「道」
レシとは、語り方・表現方法。(B)の構成に演出を加えて、読者に届ける最終形(C)にすること。
(B)と(C)の違いは——
• (B)「桃から生まれた少年が鬼の悪事を知る」
• (C)「むかしむかし、あるところに……」(語り口の選択)
同じ構造でも、「むかしむかし」で始めるか、「鬼が人間を食っていた時代の話だ」で始めるかで、読者の印象はまったく変わります。レシは構造ではなく演出に関する選択です。
実践:ノートの右にナラティブ、左にレシ
アナログでプロットを作るなら、ノートの見開きを使う方法がおすすめです。
• 右ページ → ナラティブ(B)を書く。時系列を起承転結に再構成した骨格
• 左ページ → レシ(C)を書く。各シーンの語り口、演出メモ、冒頭の書き出し
こうすると、「構造」と「表現」を同時に確認できます。
たとえば右ページに「転:真犯人が判明。仕掛けた罠」と書き、左ページに「独白・雨の中の対峙・主人公の内面独白を混ぜる」と書く。右が「何が起きるか」、左が「どう見せるか」。この分離ができていないと、書いているうちに「構造と演出がごちゃ混ぜ」になり、修正が困難になります。デジタル派なら、Notionのカンバンボードで同様の2列構成を作るのもおすすめです。
3つの道具の使用順序
| 順番 | 道具 | やること | 所要時間 |
|---|---|---|---|
| 1 | イメージラフ(旗) | 完成イメージを掴む | 30分 |
| 2 | ログライン(コンパス) | 面白さを1文で定義 | 1時間 |
| 3 | ナラティブ+レシ(地図+道) | 構造設計+表現設計 | 半日〜数日 |
3つが揃ったら、いよいよプロットの詳細設計(「ネタだし40」や「5つの質問」)に進みます。
まとめ
• イメージラフ(旗) → 完成形のざっくりイメージ。方向性を示す
• ログライン(コンパス) → 物語の面白さを1文で定義。迷ったら立ち戻る
• ナラティブとレシ(地図と道) → 構造(時系列→起承転結)と表現(語り口・演出)の設計
次に読むべき記事
• ログラインからさらに本格的に設計するなら → コンセプトセンテンスから始めるプロット設計
• プロットの骨格を作る → プロットを「5つの質問」で描き出す
• ナラティブ(語り方)の学術的背景 → 物語論入門④ ジュネットの叙述理論





