ラノベ作家の年収と印税の仕組み|新人からベテランまでリアルな数字

2023年4月27日

「ラノベ作家の年収は8,085万円」——テレビのバラエティ番組でこんな数字が紹介されたことがありました。

もちろん、あれはトップ層の話です。取材対象が偏りすぎている。でも「じゃあ実際いくらなの?」と聞かれると、正確に答えられる人は少ない。小説家の収入構造は複雑で、一言で語れるほど単純ではないからです。ネット上には憶測や極端な事例ばかりが目立ち、構造を正しく理解できる情報が少ないのが現状です。

今回は、印税・前金・原稿料という3つの収入源を軸に、新人からベテランまでのリアルな数字と仕組みを整理します。

創作ノウハウ200超|小説の書き方ガイド

小説家の3つの収入源

小説家の収入は、大きく3つに分かれます。

1. 印税

最も基本的な収入源です。「本の販売価格 × 印税率 × 販売部数」で計算されます。

紙の書籍の印税率は概ね 8〜10% です。たとえば1,000円の本が3,000部売れたら、1,000 × 10% × 3,000 = 30万円。これが印税の基本です。

ここで重要なのが「ブレイクポイント」という概念です。一定の販売部数を超えると印税率が上がる契約が存在します。たとえば1万部までは8%、1万部を超えると10%に上がる。売上で「この本は出版社にとって価値がある」と証明できたご褒美ですね。

電子書籍の印税率は紙とは異なります。Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング(KDP)では最大 70% という高い印税率が設定されています。ただしKDP Selectへの登録が条件であったり、販売価格帯に制限があったりします。

具体的に比較すると、1,000円の本を1万部売った場合:

形態印税率収入
紙の書籍(出版社経由)10%100万円
電子書籍(出版社経由)15〜25%150〜250万円
KDP(セルフ出版)35〜70%350〜700万円

KDPの印税率が圧倒的に高く見えますが、出版社経由には「出版社の販売力・書店への流通・メディア展開」という目に見えない価値があります。印税率だけで比較してはいけません。KDPについて詳しくは別記事で解説しています。

KDP完全ガイド

2. 前金(アドバンス)

出版社が原稿を獲得する際に、著者に前払いされる金額です。

前金は「出版社がその本の売上から得られると予想する最低額」をもとに計算されます。つまり出版社は、前金を払った時点で一定冊数を事前に購入しているようなものです。

新人小説家の場合、前金の相場は 50万〜100万円 です。これが事実上の「初任給」になります。Web小説初の単巻書籍化だと、編集・改稿に数ヶ月かかることを考えれば、月収としては新卒社会人の給料程度。楽して稼げる職業とは言えません。

重要なポイントが2つあります。

• 前金は 販売部数に影響されない。ベストセラーになっても、前金以上の追加支払い義務は発生しない(ただし増刷時に追加印税は発生する)

• 本が売れなかった場合でも、前金が回収されることはない。これは作家にとっての安全網です

新人作家の多くは「前金 > 印税」になります。つまり印税が前金の額に達するほど売れていない。売れない間は、前金が実質的な報酬のすべてです。

3. 原稿料

印税や前金とは別に、原稿の提出時に支払われる一回限りの報酬です。雑誌掲載、アンソロジー参加、Web媒体への寄稿などで発生します。

原稿料は契約内容と著者の実績によって幅がありますが、実績のある著者ほど高額になる傾向があります。新人のうちは、原稿料よりも「掲載実績を積む」ことの方が価値がある場合も多いです。特に雑誌掲載は読者の目に触れる機会が増え、ファン獲得に繋がります。原稿料は「もらえたらラッキー」くらいの位置付けで考えた方が現実的です。

年収のリアル:新人・中堅・ベテラン

新人(作家歴1〜2年)

年収の目安:100万〜200万円

内訳は前金1〜2冊分(50万〜100万 × 1〜2冊)と、わずかな印税です。専業では生活が厳しいため、多くの新人作家は兼業です。

新人にとっての最大の課題は「2冊目が出るかどうか」。初巻の売上が振るわなければ、打ち切りになります。近年は出版点数増加の影響で、単巻打ち切りの例が増えてきました。

出版社側も収益を上げなければならない以上、売れない本に投資し続ける余裕はありません。新人作家が生き残るには、初巻で「続きが読みたい」と思わせる必要があります。つまり、年収を上げるための第一歩は「2巻を出す」ことです。

中堅(作家歴5〜10年)

年収の目安:300万〜700万円

シリーズが続いている作家は、印税が安定収入になります。ただし700万円という数字は「ベテランの上位層」であり、中堅の平均ではありません。

ある作家歴20年のベテランでも「年収は700万円程度」と語っています。内訳は過去の刊行物の印税、過去のヒット作の電子書籍印税が主で、新刊は年に2〜3冊。つまり過去の資産が現在の収入を支えている構造です。

トップ層

年収の目安:数千万〜億超え

「年収億超えの作家が普通にいる」という話もあります。どの業界にも3%はとてつもなく稼いでいる人がいると言われますが、小説業界も例外ではありません。

ただし、トップ層の多くはメディアミックス(アニメ化、コミカライズ、映画化)の恩恵を受けています。書籍の印税だけで億に到達するのは極めて稀です。

メディアミックスが決まると、原作の販売部数が爆発的に伸びます。アニメ放送開始で既刊がランキングに再登場し、コミカライズが100万部を超えるケースも珍しくありません。小説家の「年収」は、このメディアミックスの有無で桁が変わるのです。

賞の受賞と収入の関係

電撃小説大賞、角川小説賞、新潮社の各賞——こうした賞を受賞すると、知名度が跳ね上がり、発行部数が増え、結果として印税も増えます。

しかし、賞の最大の効果は賞金ではなく「宣伝力」です。受賞作は書店で平積みされ、帯に「○○賞受賞」と刷られ、メディアに取り上げられる。この露出効果が継続的な売上に繋がります。

一方で、権威ある賞を受賞するには何年もの研鑽が必要です。公募に投稿し続け、選考を突破するプロセス自体が、作家としての実力を磨く訓練になっている側面もあります。

なお、賞を受賞しなくても「最終選考に残った」という事実だけで、出版社からの注目度は格段に上がります。選考の過程で編集者の目に留まり、別の形での出版に繋がるケースも少なくありません。賞は「取るか取らないか」ではなく、「挑戦し続けること自体が価値」を持つ仕組みです。

「成功を維持する」ことの難しさ

小説家にとって最も難しいのは、長期にわたって収入を維持することです。

1冊目が成功しても、2冊目以降でその勢いを保てるとは限りません。本には著者の個性が反映されるため、似たような作品を出し続ければファンにも飽きられます。かといって作風を変えれば、既存のファンが離れるリスクがある。

さらに、出版社側の事情も変化しています。Web小説の台頭により、編集者の役割が「作家と二人三脚で作品を作る人」から「投稿サイトで売れそうな作品をスカウトする人」にシフトしつつあります。既存作家との打ち合わせよりも、Webで新人を発掘する方がコスト効率が良い。結果として、作家に寄り添わない傾向が出てきています。

このような環境では、作家自身がブランドを持つこと が重要になります。作品だけでなく「この作家の新作なら読みたい」と思わせるファンベースの構築。それがなければ、デビューしても消耗戦に巻き込まれるだけです。

近年はコミカライズ前提のスカウトも増えています。出版社が求めているのは「小説家」ではなく「漫画原作者」というケースすらある。編集者の選抜によって、いま受けている作品しか市場に出回らなくなると、作家としてやりたいことができなくなるリスクもあります。

だからこそ、KDPやFANBOXなどのセルフ出版・ファンコミュニティといった、出版社に依存しない収入源を持つことが保険になります。年収の安定は、収入源の分散から始まるのです。

3つのキャリアを掛け算

一発逆転の可能性も忘れずに

暗い話ばかりではありません。

Web小説から書籍化する道は、おすすめの副業を紹介するサイトでもYouTuberやインスタグラマーと同列で紹介されるほど一般化しています。文字を書ける人なら誰でもチャレンジでき、書籍化のチャンスがある。この参入障壁の低さは、小説家という職業の大きな魅力です。

また、「絵が描けない」コンプレックスから小説を始め、成功したケースも少なくありません。本当は漫画を描きたかった人が「小説が書きたい人」に実力的に全然引けを取らない——作家界はそういう魔境でもあります。

収入面で安定しているとは言えない職業です。しかし、好きなことで一発逆転できる可能性があること、その日まで兼業で続けられることは、他の夢の職業にはない強みです。

まとめ:数字を知ることは武器になる

小説家の年収構造を理解することは、夢を諦めるためではなく、戦略的に夢を叶えるため です。

• 新人の前金は50〜100万円。兼業を前提にキャリアを設計する

• 印税のブレイクポイントを意識し、売上部数を伸ばす施策を考える

• メディアミックスが桁を変える。そのチャンスを掴むには、まず「続刊を出す」

• 長期的なブランド構築なくして、安定収入なし

年収のリアルを知った上で、戦略的に動く。具体的な収益化の方法は、別記事で深掘りしています。

小説家の収益化戦略
ラノベ作家の年収の「本当の話」

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