小説のアクションシーンの描き方|迫力とスピード感を生む4つのポイント

2021年10月17日

小説のアクションシーンには、映画やアニメのような映像も音楽もありません。あるのは文字だけです。

しかし、だからこそ小説には小説にしかできないアクション描写があります。映像では表現しきれないキャラクターの心の中、皮膚感覚、本能的な恐怖——言葉でしか届けられない「迫力」の世界です。

この記事では、小説のアクションシーンで迫力とスピード感を生み出す 4つのポイント を整理します。具体的なテクニックとともに、すぐに実践できる形でお伝えします。


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ポイント1:感情移入できるキャラクターに戦わせる

アクションシーンを書く前に、まず確認すべきことがあります。

そのキャラクターの行く末を、読者は気にかけているか?

戦うキャラクターに対して「この人がどうなるか気になる」と読者が感じていなければ、どれほど華麗なアクションを描いても空回りします。アクション描写の技術は、キャラクター設計の上に成り立つものです。

読者の関心を引くキャラクター3つの条件

1. 未熟さ:まだ成長途上にいること。読者は成長の行く先を見たいと思う
2. 共感できる悩み:多くの人がうなずける等身大の悩みを抱えていること
3. ギャップ:普段の姿と戦闘時の姿に落差があること

この3つが揃えば、読者はそのキャラクターの戦闘結果に一喜一憂します。アクション描写は、そこからが本番です。

2025年の好例:呪術廻戦の虎杖悠仁

呪術廻戦の虎杖悠仁は、普段は底抜けに明るい青年ですが、戦闘になると仲間を守るための覚悟が剥き出しになります。この「明るさ」と「覚悟」のギャップが、彼の戦闘シーンに特別な重みを与えています。


ポイント2:シーンに合った文体で書く

アクションシーンの文体には、通常の地の文とは異なるルールが求められます。

語尾のバリエーションでリズムを作る

同じ語尾が3回以上続くと、文章のテンポが一気に落ちます。

• 「〜である」

• 「〜アスファルトのにおい」(体言止め)

• 「〜が悪い」(形容詞止め)

• 「〜した」(過去形)

これらを意識的に使い分け、リズム感を生み出すことがスピード感の基本です。

短文が最強

アクションシーンでは短い文章が命です。1文あたりの文字数を意識的に減らし、句読点を打つ代わりに改行するくらいの感覚で書きましょう。

NG例
> 彼は剣を抜いて敵の方を向き、足を踏み込んで一気に距離を詰めると、鋭い一太刀を繰り出した。

OK例
> 剣を抜いた。
> 踏み込む。一気に距離を詰める。
> 鋭い一太刀。

後者のほうが、読者の頭の中に映像が浮かびやすいはずです。

地の文が主役、会話は少しだけ

アクションシーンでは地の文が多めで、会話文や心の声を少しだけ挿入するバランスがベストです。ただし、挿入する会話も短くする。スピード感を殺さないように。

不要な描写は削る

文の量が足りないと感じたら、無駄な描写を増やすのではなく、戦闘を二転三転させて戦いの内容を増やしましょう。攻守の入れ替わり、新しい技の投入、戦場の変化——これらで文量を稼ぐのが正しいアプローチです。


ポイント3:「動き」を頭と体で想像しながら書く

小説にしかできないことをしましょう。映画やアニメは「見たまま」を映像で表しますが、小説は 目に見えないもの を言葉で表現できます。

描写すべき3つの「見えないもの」

#### ①キャラクターの心の中

> まるでゴキブリと相対した時のように、目の前のそれが敵であると、虚の本能が警笛を発していた。
> ——『元世界最強の暗殺者』より

戦闘中の恐怖、高揚、冷静な分析——心理描写はアクションシーンに奥行きを与える最大の武器です。

#### ②五感の描写

剣を握る感触。つばぜり合いの重み。高鳴る鼓動。敵の体臭。金属がぶつかる音。

> 「グウゥゥゥ……グッチャ、ゴウゥゥゥ」響いて来るのは事切れた女性の肉を食らう生々しい咀嚼音と、地獄の奥底から響くような、低いうなり声。

五感で書かれたアクションは、読者の体に直接響きます。

#### ③動きの具体性

細かい動きの描写がわからない場合は、実際に体を動かしてみましょう。自分でそのキャラクターになりきって「動いては書く」を繰り返す。自分が動くことで、動きの描写だけでなく新たな心情の描写も生まれます。

ただし、誰もいない部屋で一人で試すことを強くおすすめします。

鬼滅の刃に学ぶ五感描写

鬼滅の刃のバトルシーンが圧倒的なのは、五感描写が徹底されているからです。

炭治郎は「匂い」で敵の感情を読み取り、善逸は「音」で相手の強さを測る。柱たちの呼吸法はそれぞれ異なる身体感覚と結びついている。視覚的な動きだけでなく、嗅覚・聴覚・触覚で戦闘を描いたことが、漫画でありながら小説的なアクション描写を実現していました。

小説家はこれをさらに深く追求できます。なぜなら、文章なら五感のすべてを自由に行き来できるからです。


ポイント4:熱いセリフを叫ばせる

「これはちょっと恥ずかしくない?」と思わずツッコミを入れたくなるくらい、やりすぎの熱いセリフ を叫ばせましょう。

ただし重要な条件があります。ポイント1で設計した「感情移入できるキャラクター」に言わせること です。

感情移入できないキャラクターが熱いことを言うと、読者は一瞬で冷めます。しかし応援したいキャラクターが、追い詰められた状況で覚悟を込めた一言を放つとき——その破壊力は計り知れません。

熱いセリフの3つの法則

①短いこと
長々とした演説は戦闘中にはふさわしくありません。長くても2文。理想は1文。

②そのキャラクターにしか言えないこと
汎用的な名言ではなく、そのキャラクターの経験・信念・覚悟に裏打ちされた言葉であること。

③行動が伴うこと
セリフだけで完結するのではなく、直後の行動がセリフの意味を証明すること。言葉と行動のセットが、読者の感情を最大限に動かします。

呪術廻戦の戦闘中のセリフ

呪術廻戦では、戦闘中のセリフが極限まで短く研がれています。状況を変える一撃の直前に放たれる一言が、読者と一緒に拳を握りしめさせる。セリフの短さとタイミングの良さが参考になる作品です。


アクション描写の上達法

4つのポイントを押さえたうえで、さらに上達するための方法を紹介します。

方法1:アニメの戦闘シーンを「言葉」で実況する

好きなアニメの戦闘シーンを見ながら、目に映る動きを文章化してみましょう。映像→文章への変換トレーニングです。

方法2:名作のアクション描写を模写する

プロの小説家のアクション描写を書き写し、語尾のバリエーション、文の長さ、五感の配分を分析します。

方法3:第三者に読んでもらう

アクションシーンの良し悪しを決めるのは読者です。特に戦闘描写は、動きが読者の頭の中で正しく映像化されているかどうかが生命線。自分以外の誰かに読んでもらい、「どこが分かりにくかったか」を聞くことが最も効果的な改善方法です。

方法4:AIに壁打ちする

2025年の強力なツールとして、AIとの壁打ちがあります。書いたアクションシーンをAIに読ませ、「この文章から戦闘の動きが映像として想像できるか」を確認する。AIの回答は完璧ではありませんが、自分では気づかない「伝わっていない部分」を発見するきっかけになります。


まとめ

小説のアクションシーンは、4つのポイントで設計できます。

1. 感情移入できるキャラクター に戦わせる
2. 短文・語尾バリエーション・地の文主体 の文体で書く
3. 心理・五感・動き の見えないものを言葉で表現する
4. 熱いセリフ を、応援したいキャラクターに言わせる

映像がない小説だからこそ、読者の想像力を最大限に刺激するアクション描写が可能です。文字だけで読者の心臓を鳴らす——それが小説のアクションシーンの醍醐味です。


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