ネガティブコンプレックスから人と違う道を選べるのは幸運です
以前、ひろゆきさんと成田悠輔さんの番組でモデルの冨永愛さんが出演されている動画を見ました。冨永愛さんの言葉で、すごく刺さる話があったのでシェアします。
冨永愛さんは小学校1年生のときから身長が高く、背の順ではいつも1番後ろだったそうです。そのため同年代の女の子が一般的に受ける「可愛い」という評価を受けず、大人や同級生から「背の大きいやつ」と言われていた。それによって冨永愛さんは「自分は違うんだ」と感じて、他の子供達の感覚——人と同じことをするのが好き、みんなでボールを追ったり同じ話題で楽しんだりするような集団の感覚——から離れていったそうです。
つまり冨永愛さんは、自分の見た目が他人と違っていたことで、他の人と違う生き方を早くに選べた。
もちろん動画の中でもおっしゃっていましたが、背の大きいことはとてもコンプレックスだったそうです。けれども今の冨永愛さんは、身長179cmを活かしてトップモデルをされています。この生き方自体が「人とは違うコンプレックスが、自分だけの未来をつくる切り口になる」という含蓄を持っている。
今日は、このネガティブなコンプレックスと創作者の関係について書いてみます。
冨永愛さんとイチロー選手、大谷翔平選手の違い
イチロー選手や大谷翔平選手だってきっと、他の人と違うことを子供のときに自覚できたから、自分だけの未来を早くに選べたのだと思います。イチローの小学生時代の作文や大谷翔平選手のマンダラチャートを見ると、両選手が子供の頃から「野球選手になる」という未来を選び、そこに向けて尽力したことがわかります。
でも冨永愛さんとイチロー・大谷の間には、決定的な違いがあります。
イチロー選手や大谷翔平選手が早くに未来を選んだモチベーションは、「人よりうまくできる」というポジティブな点だったのでしょう。周囲から「すごいね」と言われ、自分でも「ここなら勝てる」と感じた。だから子供のうちから野球に全力を注げた。
一方、冨永愛さんの場合は違います。生まれ持った体格で人と違うことを実感せずにいられなかった。それは「うまくできる」ではなく「みんなと同じようにできない」というネガティブなスタートだった。そしてネガティブなコンプレックスにもなっていった。
冨永愛さんは、お姉さんからの偶然の紹介でモデルの世界に入っていったとのこと。ポジティブな才能を自覚して選んだ道ではなく、ネガティブなコンプレックスを抱えたまま偶然たどり着いた道で、結果として世界的なモデルになった。
ここに、私たち創作者にとって大きなヒントがあると感じます。
人とは違うネガティブからでも、一般的じゃない道を早くに選ぶ
冨永愛さんの話を聞くと、自分の考えを具体的に言語化する力が際立っています。早くに人と違う道を選んでいく上では、「みんなと一緒だから(いいじゃん)」が免罪符にできません。そのため、自分の考えが拠り所になり、自分の考え方が先鋭化していった——のだろうと思います。
この能力。つまり自分の考え方を先鋭化していき、具体的に言語化する能力は、創作者にとって最も重要なスキルのひとつです。成田悠輔さんやひろゆきさんのように多くの人に視点を提供できる人たちも、人と違う考え方を先鋭化し続けてきた結果でしょう。
では自分の考え方をどう先鋭化していくか。考えを深めるにはどうすればいいか。
それは「一般的じゃない視点で世界を見た日々の積み重ね」だと感じます。だとすれば、自分の考え方を先鋭化していくきっかけは、ネガティブにせよポジティブにせよ他人との違いを自覚して、一般的じゃない道を早くに選ぶことでしょう。
めちゃくちゃしょうもない話でいうと、私は子供の頃に周りの子供と比べて毛が濃いと言われたことで、人と同じ道は選べないと感じました。笑 そこから人を観察するようになりましたし、自分の中に(様々なIfの人生を歩む)沢山のキャラクターが生まれるようになりました。
ネガティブコンプレックスから人と違う道を選べたのは幸運だったと感じます。
考え方の先鋭化は「物語の個性」になる
2025年から2026年にかけて、生成AIの小説執筆能力は飛躍的に向上しました。テンプレート通りの異世界転生もの、規格通りのラブコメ、定型的なファンタジー冒険譚——こうした「普通の物語」はAIがかなりの品質で書けるようになっています。
しかし、ネガティブなコンプレックスを起点にして先鋭化された考え方から生まれる物語は、AIには書けません。なぜならAIにはコンプレックスがないからです。「自分は劣っている」という痛みも、その痛みから世界を独自の角度で見つめてきた歳月も、AIのデータベースには存在しません。
冨永愛さんが「背が高い」というコンプレックスを通して世界を見てきたからこそ、彼女にしかない表現ができるように。私たち物語を書く人間も、自分のコンプレックスが先鋭化してきた考え方を物語に注ぎ込むことで、「この人にしか書けない作品」が生まれます。
早くに人と違う道を選んでいく上では、「みんなと一緒だから」が通用しない。その結果、自分の考え方が否応なく鍛えられていく。冨永愛さんの話から学べるのは、コンプレックスそのものが武器なのではなく、コンプレックスによって「人と違う視点で世界を見続けた時間」が武器だということです。
ただ、ネガティブコンプレックスは解消すべき
ここで、とても重要なことを書きます。
「自分の考え方を先鋭化させるために、人とは違うネガティブなきっかけで一般的じゃない道を早くに選んだ場合、ネガティブコンプレックスはどこかで解消すること」です。
冨永愛さんは番組の中ではとくにおっしゃっていませんが、身長179cmの彼女より背の高い、身長188cmの旦那さんを持たれたことがあります。おそらく高身長というコンプレックスを忘れさせてくれる、あるいはそれすら愛してくれる方だったのだろうと想像します。
ネガティブコンプレックスの解消は、とても重要です。なぜならネガティブコンプレックスによって人と違う道を選ぶと、世界を憎しみの目で見てしまうからです。
少なくとも私はずっとそうでした。私は『境界を超えろ!』という作品で誰からも愛されるリーダー、アイン・スタンスラインを描きましたが、本音はその物語を終わらせたケルト・シェイネンに近いです。誰かの成功を妬んで、自分が認められないことを憎んで……誰からも愛されないことを寂しがっていました。
だからこそ、小説が書けたので、感謝はしています。
けれどもネガティブコンプレックスを解消してみると、これまで抱えていた憎悪から解放されて、幸福度が段違いに上がるんですよね。
幸福になると、登場人物が殺し合ったり罵り合ったりする作品じゃなくて、ワイワイ楽しい物語を書いてみようかなと感じられます。2022年頃のアニメランキングを見ても、今の世の中で受ける物語って、そういう優しい物語ですよね(チェンソーマンは除きます 笑)。
コンプレックスの「段階」を創作に活かす
ここまでの話を整理すると、ネガティブコンプレックスには段階があることがわかります。
第1段階:コンプレックスに気づく。 人と違うことを自覚し、一般的な道を選べなくなる。冨永愛さんが「背が高い自分は違う」と感じた時期。
第2段階:考え方が先鋭化する。 「みんなと一緒」が通用しないため、自分の考えが鍛えられていく。独自の視点で世界を見る力が育つ。
第3段階:コンプレックスを解消する。 憎しみの目で世界を見る状態から解放され、優しい物語をかける余裕を得る。
そして創作者にとって面白いのは、この3段階のすべてが物語のテーマになりうることです。第1段階は「自分は何者なのか」という問い。第2段階は「人と違うことの価値」という問い。第3段階は「赦しと解放」という問い。
自分が今どの段階にいるかで、書ける物語が変わります。第1段階にいるなら、葛藤に満ちた生々しい作品が書ける。第3段階に到達したなら、かつての自分を包み込むような優しい物語が書ける。
どちらが上ということではありません。大切なのは、自分のネガティブコンプレックスのどの段階にいるかを自覚したうえで、その段階でしか書けない物語を全力で書くことです。
まとめ:ネガティブでもポジティブでも、人と違う道を選ぶのは幸運
ネガティブにせよポジティブにせよ、他人との違いを自覚して、一般的じゃない道を早くに選び、自分の考え方を先鋭化していく。そしてネガティブコンプレックスを解消して、ワイワイ楽しい物語をかける余裕を得る。そうするとこれからの時代でウケる優しい物語が書けるんじゃないか? というお話でした。
私は、ネガティブコンプレックスから人と違う道を選べるのは幸運だと信じます。もしネガティブコンプレックスに悩んでいる方は、これをチャンスと捉えて、人と違う自分の考え方を先鋭化してみてください。
コンプレックスが消えた日、あなたの中に蓄積された「人と違う視点で世界を見続けた日々」は消えません。それは、あなただけの物語を書くための最高の資産として、ずっとあなたと共にあります。
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