魔法と銃は共存できるか?|ファンタジー戦闘設計の技術
「ファンタジー世界で銃が登場すると幻想の終わりの始まり」
「魔法と銃は共存しない」
——ファンタジー創作者の間で、たびたび話題になる2つの言葉です。
私自身、銃と魔法を作品に共存させたいと思っている人間です。ですが、前述の意見を言う人達の主張が、まるで理解できないわけでもありません。
結論から言えば、銃と魔法の共存は可能です。ただし、それには銃というアイテムが物語の中で持つ「根本的な問題」を正確に理解する必要がある。今日はその問題を分析し、対策を考えてみます。
そもそも銃というアイテム自体が面白くない
いきなり身も蓋もないことを書きます。銃をもちいた物語を書く人を貶めているわけではありません。何が言いたいかというと、銃というアイテムは、物語の「面白さ」の定義から外れやすい存在だということです。
物語の面白さは、大きく分けて2つあります。
• 予想を外すこと ── まず予想させてそれを外す
• 予想通りであること ── 願望充足(「俺TUEEE→ハーレム→魔王討伐」を期待した読者が、そのとおりの展開を得る快感)
銃は、このどちらの面白さも発揮しづらいのです。なぜか。2つの観点から考えます。
銃が面白くない理由①:殺傷力が高すぎる(と思われている)
才能のない人間でも、銃の引き金を引けば、人ひとりを必ず殺せる。どれくらい多くの人を殺傷できるかは銃の性能による——銃に対するこれらの印象は、読者としても当然想像することです。
だとすると、「才能のない俺が世界最強になる!」といった成りあがり・ざまぁ・無双を期待した読者を落胆させませんか?
「銃さえあれば誰でも同じことできるじゃん」
「結局、主人公の才能じゃなくて銃の性能なんだよな」
——そう思われてしまうわけです。
一般の人から見た銃と魔法の殺傷力の印象を並べると、こうなります。銃は「才能のない人間」と「才能のある人間」で殺傷力にほとんど差が出ない。一方、魔法は使い手の才能によって指数関数的に威力が変わる。
つまり、銃が面白くないのは「モブと、銃の才能がある人間の差が小さすぎるから」です。
大前提として、ライトノベルをはじめとする物語で重要なのは、主人公を際立たせること。銃は、これを満たしづらいアイテムなのです。
一方の魔法は、性能にブレもあるし、威力は無限大だし、主人公に使わせたら特別感を出せる。銃と比べれば、魔法のなんとロマンのあることか。一般の人からみた銃と魔法の殺傷力に対する印象は以下の図のような感じでしょう。銃の威力は、銃の性能に依存していてつまらないと感じやすいですね。
銃が面白くない理由②:安定性がありすぎる(と思われている)
面白さをつくるためには、結果にブレが必要です。
魔法使いが精神的要因によって力を発揮できない——これは理解しやすいですね。しかし銃は、撃ってしまえば安定して人を殺せます。結果にブレがない。
……とはいえ実のところ、銃が安定して人を殺せるというのは幻想です。銃がはじめて開発された頃は、弾が真っすぐ飛ばないとか、そもそも弾が出ないといった不調もよくあった。太平洋戦争でさえ、アメリカ人が銃で戦うよりも日本人の切り込みのほうが殺傷数は多かったという記録が残っています。
ですが私たち現代に生きる人間は、「機械が調子を悪くする場面に出会っていません」。機械はいつも一定の成果を出してくれる、というのが現代人の幻想です。
この幻想がある限り、銃は安定しているものであり、物語のギミックとしては面白くないという扱いにならざるを得ません。
銃の「悪手」3パターン——こう使うと失敗する
銃自体が面白くない以上、使い方を間違えるとさらに致命的です。よくある悪手を3つ挙げます。
悪手1:周りが魔法使いばかりの世界で、主人公だけが銃
「魔法の才能がないから銃に手を出した」——ここまではストーリー性があります。しかし、その後どう展開するか。
周囲が火球を飛ばし、雷を落とし、氷の壁を張っている横で、銃をバンバン撃つ主人公。魔法使いが「上位」で銃使いが「下位」に見えるこの構造の中では、主人公がモブに見えてしまう。難しい使い方だと言わざるを得ません。
悪手2:銃の性能のブレを見せる
リアル志向の歴史物語なら有りです。しかし異世界で、銃の性能のブレを丁寧に見せたとき、テンポを維持できるかどうか。
「モタモタするな」と思われたり、「銃に期待してるのってそういうものじゃない」と言われてしまうリスクがある。読者が銃に求めているのは「不安定さのリアリズム」ではなく「一撃の決定力」です。そのイメージを裏切ると、テンポの悪さだけが残ります。
悪手3:銃口を向けた後の感情のブレを描く
敵に銃口を向けて、ハァハァ、と言いながら引き金を引くかを迷うシーン。平成初期のアニメなどによく見られた描写です。
しかし、今の時代のWeb小説でこういった倫理的な迷いが求められているかというと、疑問です。ヘイトを溜めた相手は、容赦なく成敗する。それが平成末期から令和にかけての読者の価値観でしょう。
こぴーらいたー風倉氏も指摘していますが、ネット小説の文化が商業小説より先を行っている要素の1つに「ヘイト処理」があります。昔の商業作品でありがちだった「ヘイトを集めた敵を、よし倒せ!って場面で逃がす」という引き伸ばし。ネット小説がようやくそこに応えて人気を得た経緯がある。
銃口を向けた後にウジウジ迷うのは、まさにこの「ヘイト処理ができていない」パターンに陥りかねません。
銃を活かせる5つの設計
悪手がある一方で、銃を物語の中で活かす方法もあります。5つ紹介します。
設計1:銃はあくまでサブ、主人公は魔法で際立たせる
周りが銃使いばかりの世界で、主人公だけが魔法。この構造では、銃は主人公の特別感を引き立てるための背景装置になります。
悪手1の真逆の発想です。銃が「普通」の世界だからこそ、魔法を使う主人公が異質で面白い。
設計2:銃の威力を主人公の魔力に左右させる
銃の威力が一定ではなく、使い手の特殊能力によってブレが出る——この設計なら、銃の「安定しすぎ問題」を解消できます。
『幼女戦記』がまさにこのタイプです。作中に登場するエレニウム九五式という演算宝珠は、魔力を最適化し術式制御を容易にすることで高度な魔術行使を可能にする装置。銃器と魔法が融合したことで、威力にブレが生まれ、「使い手の力量」が物語にドラマをもたらしています。
設計3:一般人が銃を使えない世界にする
ゴルゴ13やシティハンターの世界観です。一般人には銃が手に入らない、または使いこなせない。だから銃を使える主人公が特別な存在になる。
この設計のポイントは、銃が「誰でも使える」という前提を潰すことにあります。銃を希少化・特権化することで、モブとの差を作り出せる。
設計4:主人公を指揮官にして、部下に銃を使わせる
主人公自身の戦闘力ではなく、マネジメント能力を際立たせる方法です。部下の兵隊に銃を持たせ、主人公はその運用で差を見せる。
「銃を誰が撃つか」ではなく「銃をどう使わせるか」が主人公の能力になる。戦略SLG的な面白さを物語に持ち込めるアプローチです。
設計5:銃を名誉の象徴にする
かつて陸軍大学校の卒業者(首席1名と優等5名)には、恩賜の軍刀が送られたそうです。それと同じように、何かを達成した見返りに特別な銃をもらえるという世界観にしてしまえば、銃を持つことが名誉の証になります。
銃が「武器」ではなく「勲章」として機能する世界。この設計なら、銃の取得自体がドラマになり、物語の動力になります。
「共存しない」への回答——魔法使えるひとの割合で変わる
ここで冒頭のふたつの言葉に立ち返りましょう。
「ファンタジー世界で銃が登場すると幻想の終わりの始まり」
これは、銃の安定性に要因があると考えられます。銃は殺傷能力が安定しすぎており、主人公を特別な存在にしづらい。銃の使い方について詳しく述べないといけなくなったり、銃を使うモブキャラの運用を考えなければならなくなったりする。何も考えず楽しみたい読者からすると「現実的で嫌だ」になる。理解できる意見です。
「魔法と銃は共存しない」
こちらは少し毛色が違う意見です。「魔法という優秀な攻撃ができるなら、全員が魔法使いになるはずだ」——という主張でしょう。
しかし、ここで重要なのは「その世界で魔法が使える人の割合」です。
• 魔法使いが少数の世界(全人口の1%以下)→ 銃は非魔法使いの標準兵器として自然に共存する
• 魔法使いが多数の世界(全人口の30%超)→ 銃の存在意義が薄れ、共存が不自然に見え始める
• 全員が魔法使いの世界(100%に近い)→ 銃を出す必然性がほぼなくなる
「共存しない」と主張している人は、おそらく魔法使いの割合が非常に高い世界を想定しているのでしょう。全員が火球を撃てる世界で銃が出てきたら、そりゃおかしいでしょうと。
逆に言えば、魔法使いの割合を低く設定すれば、銃と魔法は自然に共存できます。世界設計の段階で「この世界の魔法使い比率は何%か?」を決めておくだけで、共存の不自然さは解消されるのです。
もちろん、全員が魔法使いの世界であっても、「銃を使うほうが魔法より楽に成果が出せる」という設定にすれば、魔法世界の住人が全員銃を使うようになる物語も書けます。魔法を捨てて銃を取る——その転換自体がドラマになりえます。
成功例に見る共存の設計思想
具体的な作品で、魔法と銃(または物理兵器)の共存がどう設計されているかを見てみましょう。
幼女戦記:魔法+銃=演算宝珠
設計2の典型。魔法と銃器が融合したことで、「使い手の魔力」がそのまま「銃の威力」に反映される。銃の安定性問題を魔法のブレで解消した好例です。
Fate/Zero:衛宮切嗣の銃
切嗣は魔術師でありながら銃を主武装とします。「魔術師は銃を使わない」という魔術師社会の暗黙ルールを逆手に取り、ルールの裏をかく戦術的意味として銃が機能しています。銃が「異端の証」として主人公を際立たせている設計です。
進撃の巨人:立体機動装置
銃ではありませんが、「物理兵器で超常存在に挑む」構造はまさにこの議論の延長線上にあります。巨人という圧倒的脅威に対して、人間が技術で対抗する。「技術=民主化された力」という位置づけが社会論としても機能しています。
まとめ
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 銃が面白くない理由 | モブとの差が出にくい+安定しすぎ |
| 悪手 | 主人公だけ銃/性能ブレ描写/銃口迷い |
| 活かす設計 | サブに徹する/魔力連動/希少化/指揮官型/名誉化 |
| 「共存しない」への回答 | 魔法使い比率で共存可能性が変わる |
| 最重要原則 | 主人公を際立たせられるかが全て |
冒頭の2つの言葉——「幻想の終わりの始まり」「共存しない」——に対しては、理解はできるものの、対策は可能ですというのが回答です。
ただし対策するにも、銃自体が持つ「面白くなさ」の構造を把握しておく必要がある。「銃はカッコいいから入れよう」で止まると、主人公の特別感が消えます。なにより重要なのは、主人公を物語の中で特別な存在にすること。銃を入れるなら、そのための設計を怠らないでください。
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