異世界サンドイッチ問題|食文化と地球語の矛盾を解決する5つの方法

2020年7月19日

「異世界で主人公がサンドイッチを食べるシーン……これ、おかしくない?」

──異世界ファンタジーを書いていると、必ず一度はぶつかる問題があります。通称「異世界サンドイッチ問題」。

サンドイッチとは、18世紀イギリスのサンドウィッチ伯爵に由来する食べ物です。つまり地球のイギリス史がない異世界に「サンドイッチ」という名称は存在しえない。でもパンに肉を挟んだ料理を描写したい──。

この問題は食文化にとどまりません。「日本語を話す異世界人」「コーヒーと呼ばれる飲み物」「金曜日という曜日名」──地球の歴史や文化に由来する概念が異世界に持ち込まれるたびに、このジレンマは発生します。

この記事では、異世界サンドイッチ問題の本質と、5つの実用的な解決策を紹介します。


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問題の本質|リアリティラインの設定

異世界サンドイッチ問題の本質は「その作品のリアリティラインをどこに引くか」です。

リアリティラインとは、「この作品はどこまでリアルで、どこからフィクションなのか」の境界線のこと。読者はこの境界線を無意識に感じ取っています。

たとえば『転生したらスライムだった件』ではリムルが普通に日本語由来の言葉を使いますが、読者はそれを問題にしません。なぜなら作品全体のリアリティラインが「楽しさ優先。細かいことは気にしない」に設定されているからです。

一方で『グイン・サーガ』のような重厚なファンタジーで突然「サンドイッチ」と出てきたら、読者はギョッとするでしょう。作品のリアリティラインが「世界観の整合性を重視する」に設定されているからです。

つまり「サンドイッチを出していいかどうか」は一律に答えが出る問題ではなく、自作のリアリティラインをどこに設定するかによって変わるのです。


解決策1. 転生=翻訳スタンス

「主人公は地球の人間なので、異世界の概念を地球の言葉に翻訳して理解している」──このスタンスを明示する方法です。

具体的な実装

地の文やモノローグで、最初に一度だけ触れておきます。

> A国の言葉はなぜか俺に理解できた。脳内で自動翻訳されている感覚だ。だからこの世界の料理も、俺には馴染みのある名前で認識される。パンに肉を挟んだあの料理は──まあ、サンドイッチでいいだろう。

これだけで、以降サンドイッチと書いても読者は納得します。

メリット

• 実装が簡単

• 読者の没入を妨げない

• 転生モノとの相性が抜群

デメリット

• 転生要素がない作品では使えない

• 「翻訳」でごまかしすぎると安易に見えることも


解決策2. 異世界語(造語)を使う

サンドイッチではなく「ブレッドクリップ」とか「ハサミパン」のような造語を作る方法です。

具体的な実装

異世界の食品名を独自に設定し、必要に応じて読者向けの注釈を添えます。

> テーブルに並んだのは「パニーニ・ド・カルネ」──こちらの言葉で「肉挟みパン」の意味だ。

メリット

• 世界観のリアリティが格段に上がる

• 異世界ならではの「食文化」を演出できる

デメリット

• 造語が多すぎると読者が混乱する

• 命名センスが問われる(ダサいとむしろ没入感が下がる)

• FF13の「パルスのファルシのルシがパージでコクーン」問題──固有名詞が多すぎて理解不能になるリスク

造語を使う場合は「1シーンに新出造語は2語まで」のルールを設けると読者に優しい設計になります。


解決策3. 地球が舞台(または地球と繋がっている)設定にする

そもそも舞台を「地球の未来」「地球の過去」「地球と並行する世界」にして、地球の文化が流入している設定にする方法です。

具体的な実装

> この大陸には、千年前に「大移動」で渡ってきた民族の文化が残っている。彼らが持ち込んだ言葉や料理が、今もこの土地に根づいている。

メリット

• サンドイッチどころか何でも使えるようになる

• 「なぜ地球の文化があるのか」自体が伏線になりうる

デメリット

• 「純粋な異世界」を書きたい場合は使えない

• 設定が大がかりになりすぎる可能性


解決策4. 割り切ってそのまま使う

実は最も多くの商業作品が採用している方法がこれです。

深く考えず、サンドイッチはサンドイッチ、コーヒーはコーヒーとして出す。

なぜ成立するのか

読者の多くは「物語のテンポ」を優先しています。いちいち食べ物の名前の由来を気にしながら読んでいるわけではない。もちろんSNSでツッコまれることはありますが、物語が面白ければそれは「ネタ」として消費されるだけです。

このスタンスが有効な作品

• テンポ重視のラブコメ・コメディ

• アクション重視のバトルもの

• 読者層が「細かい設定」より「キャラの魅力」を求めている作品

このスタンスが危険な作品

• 重厚な世界観が売りの作品

• 作品内で「この世界は地球とは異なる」と強調している場合


解決策5. ギャグとして処理する

「サンドイッチ? なんだその名前は?」「いや、こっちの世界では『挟み飯』って言うんだっけ……ややこしいな」

──メタ的に問題自体をギャグにしてしまう方法です。

メリット

• 読者と「あるある」を共有できる

• キャラの個性を出す手段にもなる

デメリット

• シリアスな作品では使えない

• 多用すると寒くなる

このすがた裕も「南無三!」──と叫ぶ『グイン・サーガ』の仏教由来ワードが一時期ネタにされました。逆に言えば、ファンに愛されるほどの作品力があれば、多少の矛盾は「味」になるということでもあります。


サンドイッチ問題チェックリスト

自作の異世界ファンタジーを以下でチェックしてみてください。

1. 自作のリアリティラインを言語化できるか?(「楽しさ優先」or「整合性重視」)
2. 地球由来の単語(食品名、曜日名、度量衡)をどう扱うか決めているか?
3. そのスタンスが作品全体で一貫しているか?
4. 造語を使う場合、読者が混乱しない量に抑えているか?
5. 読者が「おかしい」と感じそうなポイントに先回りして対処しているか?

最も重要なのは「3. 一貫性」です。サンドイッチは出すのにコーヒーは造語にする──のような不統一が、読者の没入感を最も損ないます。


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