ゴブリン・オーク・オーガ・コボルドの違い|亜人モンスター6種を徹底比較
ゴブリン、オーク、オーガ、コボルド——ファンタジー作品の定番モンスターですが、その起源と定義は時代とともに大きく変わっています。元はヨーロッパの民間伝承に登場する「悪い妖精(ゴブリン系統)」でしたが、トールキンの『指輪物語』(1954年)とD&D(1974年)が現代ファンタジーのモンスター分類を決定づけました。
この記事では、6種の亜人型モンスターの起源・外見・強さ・知能を比較し、そのルーツと現代での再解釈を整理します。
亜人モンスター6種 比較表
| モンスター | 起源 | 体格 | 知能 | 戦闘力 | 社会性 |
|---|---|---|---|---|---|
| ゴブリン | イギリス民間伝承 | 小柄(人間の半分以下) | 低〜中 | 弱い(群れで補う) | 集団行動。洞窟に住む |
| ホブゴブリン | イギリス民間伝承 | 人間大 | 中〜高 | ゴブリンより強い | 規律正しい軍隊を形成 |
| オーク | トールキン創造 | 人間大〜やや小 | 低〜中 | 中程度(数で圧倒) | 暴力的な部族社会 |
| オーガ | フランス民間伝承 | 人間の2倍以上 | 低い | 高い(怪力) | 単独か小集団。人を食う |
| コボルド | ドイツ民間伝承 | 非常に小柄 | 中程度 | 弱い(罠で補う) | 鉱山や地下に住む |
| 巨人(ジャイアント) | 世界各地の神話 | 巨大(数m〜数十m) | 種類による | 非常に高い | 神話により善悪様々 |
ゴブリン(Goblin)
ゴブリンの語源はフランス語の「ゴブラン(gobelin)」で、ドイツ語の「コボルト(Kobold)」とも関連があります。元々はイギリスの民間伝承で「いたずら好きな小さな精霊」程度の存在でした。
ゴブリンが「醜い小型の敵モンスター」として固定されたのはD&D(1974年)以降です。トールキンの『ホビットの冒険』(1937年)ではゴブリンとオークはほぼ同義語でしたが、現代ファンタジーではゴブリンとオークは明確に別種として扱われることが大半です。
| 時代 | ゴブリンの扱い |
|---|---|
| イギリス民間伝承 | いたずら好きな家の精霊。悪い妖精 |
| トールキン(1937年) | オークの別名。ゴブリン=オーク |
| D&D(1974年) | オークより下位の小型モンスター。雑魚敵 |
| 現代なろう系 | 序盤の敵、または味方・仲間として再解釈 |
『転生したらスライムだった件』でリムルがゴブリンを最初の配下にする展開は、「最弱モンスターが成長する」という現代的な再解釈の代表例です。
オーク(Orc)
オークはトールキンが『指輪物語』で創造したモンスターで、それ以前のヨーロッパ民間伝承には存在しません。トールキンの設定では、冥王モルゴスがエルフを拷問し、堕落させて作り出した存在とされます。ただし晩年のトールキンはこの設定に神学的な矛盾(悪であるモルゴスに創造能力があるのか)を感じ、オークの起源を何度も書き直しています。
| トールキンのオーク | D&D以降のオーク |
|---|---|
| エルフの堕落した姿 | 独立した種族。豚に似た顔 |
| 日光に弱い | 日光に弱い設定は残ることが多い |
| 知能は低くはないが残忍 | 蛮族。力は近い社会 |
| 善のオークは存在しない | ハーフオークなど善側もありうる |
D&D以降、オークは「豚のような顔」というビジュアルが定着しましたが、トールキンのオークは豚には似ておらず、むしろ「醜いエルフ」に近い描写です。ピーター・ジャクソンの映画『ロード・オブ・ザ・リング』(2001年)のウルク=ハイのデザインが現在のオーク像に大きな影響を与えています。
なお、「ウルク=ハイ」はトールキンが作った「大型・強化版オーク」で、サルマンが品種改良して生み出しました。日光の下でも活動でき、通常のオークより大きく知性も高い。この「上位種」のアイデアはホブゴブリンとオークの関係にも見られるパターンです。
オーガ(Ogre)
オーガの語源はフランス語の「ogre」で、シャルル・ペロー(1628-1703)の童話集『ペロー童話集』(1697年)で初めて文学に登場しました。「長靴をはいた猫」に出てくる人食い大男がオーガの原型です。
特徴は「巨大で力が強いが知能が低い」という点で、力と知恵が反比例する典型的なパターンです。女性のオーガは「オグレス(Ogress)」と呼ばれます。
映画『シュレック』(2001年、アカデミー長編アニメーション賞受賞)は「心優しいオーガ」という逆転の設定で大ヒットし、オーガのイメージを大きく転換しました。原題の「Shrek」はイディッシュ語で「恐怖」を意味する言葉で、そのギャップがタイトルの妙になっています。
日本のファンタジーでは「鬼」がオーガに訳されることが多く、鬼ヶ島に住む金棒を持った赤鬼のイメージとヨーロッパのオーガが融合しています。『鬼滅の刃』の鬼はヴァンパイア的な要素も含みますが、日本語の「鬼」がオーガ的存在の最もポピュラーな例です。
コボルド(Kobold)
コボルドはドイツの鉱山伝承に登場する小さな精霊です。鉱山で働く鉱夫を手助けすることもありますが、怒ると鉱石を価値のない石に変えてしまうともいわれます。
| 伝承のコボルド | D&Dのコボルド |
|---|---|
| 目に見えない小さな精霊 | 犬顔の小型爬虫類人 |
| 鉱山に住む。家事を手伝うこともある | 洞窟に住む。罠を仕掛ける雑魚敵 |
| コバルト(金属元素)の語源 | ドラゴンを崇拝する種族 |
「コバルト」という元素名はコボルドに由来します。鉱夫が銀だと思って採掘した鉱石がコバルトの化合物で、精錬しても銀が取れなかった——これをコボルドのいたずらだと考えたのが語源です。
巨人(Giant)
巨人は世界中のあらゆる神話に登場する最も普遍的な存在です。
| 神話体系 | 巨人の名称 | 特徴 |
|---|---|---|
| ギリシア神話 | ティターン、ギガース | 神々の前の支配者。ゼウスに敗北 |
| 北欧神話 | ヨトゥン(霜の巨人) | 神々と敵対。ラグナロクで神と相打ち |
| 旧約聖書 | ゴリアテ、ネフィリム | ダビデに倒された3mの戦士 |
| イギリス伝承 | ジャック倒しの巨人 | 「ジャックと豆の木」型。人食い |
| 日本(ダイダラボッチ) | ダイダラボッチ | 山や湖を作った巨人。富士山を一晩で作ったとも |
D&Dでは巨人を属性別に分類し(ヒルジャイアント、ストーンジャイアント、フロストジャイアント、ファイアジャイアント、クラウドジャイアント、ストームジャイアント)、そのまま強さのランクにしました。この分類は多くのファンタジーゲームに受け継がれています。
『進撃の巨人』(2009年連載開始)は巨人を「倒す対象」から「人類存亡の脅威」へと格上げし、巨人モノの常識を覆しました。壁の中で100年間平和に暮らしてきた人類が突如巨人に襲われるという構造は、巨人の恐怖を現代的に再定義した傑作です。
あなたの物語への活かし方
亜人モンスターを設計するなら、以下のポイントを考えてみてください。
• そのモンスターは「敵」固定か、味方にもなりうるか?
• 知能と戦闘力のバランスをどう設定するか?
• 既存のイメージを踏襲するか、逆転させるか?(シュレック方式)
• 群れで出るか、単独で出るか?(物語の難易度に直結する)
まとめ
ゴブリン・オーク・オーガ・コボルド・巨人はそれぞれ異なるルーツを持ち、トールキンとD&Dという二大作品を経由して現在の姿に固定されました。現代のなろう系やゲームでは固定イメージの逆転・再解釈が盛んに行われており、知っておいて損はない定番モンスターの系譜です。