「やり抜く人の9つの習慣」から学ぶ目標達成方法
日々文章と格闘しながら、小説家になれたらいいな……本を出版できたらいいな……と将来を考えるのは楽しいですよね。そんな高い目標が達成できるのは、一握り。目標が達成できるかどうかはその人の「才能の問題」と後ろ向きに考えてしまうことはありませんか?
実は高い目標に向けて何かをやり抜くことができるのは「才能の問題」ではないことがわかってきました。
今回はそんな高い目標を達成した人たちに共通の9つのパターンを紹介します。才能がないからといって物事を諦める必要はないと勇気がでてきますよ。
ハイディ・グラント・ハルバーソン著『やり抜く人の9つの習慣』
ハイディ・グラント・ハルバーソン著『やり抜く人の9つの習慣』は薄い本です。1時間あれば読み終わります。しかし、この本に書かれている内容は、小説を書いている人間にとって驚くほど実用的でした。
「長編小説を完結させたい」「投稿サイトで連載を最後まで書き切りたい」「一次選考を突破したい」——こうした創作者の目標達成に、本書の9つの習慣がどう使えるのかを整理してみます。
習慣1:目標に具体性を与える
本書で最初に語られるのは、「痩せたい」ではなく「3ヶ月で5kg痩せる」と設定すべきだという話です。曖昧な目標は達成できない。
これを創作に置き換えると、「小説家になりたい」という目標がいかに曖昧かがわかります。小説家になりたいのではなく、「6月末までに10万字の長編を1本完成させ、電撃大賞に応募する」と設定する。期限、分量、提出先。この3つが揃って初めて、目標が「やるべきこと」に変わります。
多くのWeb小説作家が「エタる」(連載を途中で放棄する)のは、意志の弱さではなく、目標設計の甘さが原因であることが多い。「面白い小説を書く」は目標ではなく願望です。目標にするなら、「毎日2000字書いて、3ヶ月後に第一稿を完成させる」まで具体化する必要があります。
習慣2:「if-thenプランニング」で行動を自動化する
本書で最も実践的なのが「if-thenプランニング」です。「もしXが起きたら、Yをする」という形式で行動計画を事前に決めておくという手法。
創作に応用するなら、こうなります。
「もし朝6時に目覚まし時計が鳴ったら、コーヒーを淹れてパソコンの前に座り、30分だけ書く」
「もし書くことが思いつかなかったら、前日の最後の段落を推敲することから始める」
「もし1章分書き終わったら、その日は自分にご褒美として好きなアニメを1話見る」
if-thenプランニングの肝は、「意志力に頼らない」ということです。書くかどうかを毎朝判断していたら、判断疲れで書かない日が増えていきます。判断を事前に済ませておくことで、行動が自動化される。これは兼業作家にとって非常に重要な考え方です。
実際にわたしも、「帰宅して着替えたら、まずエディタを開く」というif-thenルールを設定してから、平日の執筆量が安定しました。書く内容も質も、まず「座る」ことから始まるのだと実感しています。
習慣3:目標までの距離を測る
「今どこにいるか」を常に把握することの重要性が語られています。目標を設定しても、進捗を測定しなければ軌道修正ができない。
創作でこれを実践するなら、進捗の可視化が有効です。わたしは長編を書くとき、Excelで章ごとの予定文字数と実績文字数を管理しています。「全40章のうち今12章目。進捗30%」と把握できれば、ペースを計算して「このペースなら4ヶ月後に完成」と見通せる。
逆に、進捗を測定しない人は「あとどれくらいで終わるかわからない」状態で走り続けることになり、ゴールが見えない不安からエタりやすくなります。マラソン選手が距離表示を見ながら走るように、創作者も自分の進捗を数値化する習慣が必要です。
「なろう」で連載している方なら、活動報告に「現在◯◯編 進捗60%」と書くのも効果的です。読者への宣言が、自己管理のツールにもなります。
習慣4:現実的楽観主義者になる
「自分はできる」と信じることと、「簡単にはできない」と理解すること。この2つを両立させるのが「現実的楽観主義」です。
創作者にありがちな2つの極端があります。一つは「自分の才能があればきっとうまくいく」という過剰な楽観。もう一つは「自分なんかが書いても無駄だ」という過剰な悲観。どちらも目標達成の妨げになります。
現実的楽観主義とは、「10万字の長編を完結させることは自分にもできる。ただし、それは簡単なことではなく、計画的な努力が必要だ」と考えること。この心構えがあると、途中で壁にぶつかっても「予想通りだ。ここは頑張りどころだ」と受け止められます。
逆に過剰な楽観主義者は、壁にぶつかった瞬間に「こんなに大変だとは思わなかった」と心が折れます。困難を想定しておくことは、弱気ではなく戦略です。
習慣5:「成長すること」に集中する
本書では「証明ゴール」と「成長ゴール」の違いが解説されています。証明ゴールは「自分の能力を証明したい」、成長ゴールは「新しいことを学びたい」。そして成長ゴールのほうが、長期的なパフォーマンスが高いという研究結果が紹介されています。
これは創作の世界でも痛感します。「ランキング上位に入って自分の実力を証明したい」という証明ゴールで書いている人は、ランキングが上がらないと心が折れます。「今回の作品で三人称の書き方を練習する」「前作よりも感情描写を深くする」という成長ゴールで書いている人は、結果に左右されにくい。
成長ゴールのもう一つの長所は、失敗を「学び」に変えられることです。コンテストで落選しても、「この構成では読者に届かないことが分かった」と次に活かせる。証明ゴールだと、落選は「自分の能力が足りないことの証明」になってしまい、立ち直りに時間がかかります。
習慣6:「やり抜く力」を持つ
いわゆる「GRIT」です。情熱と粘り強さの組み合わせ。長編小説の執筆に最も必要な資質といっていいでしょう。
なろうでもカクヨムでも、ランキング上位に入る作品の多くは「長期連載を続けている」作品です。つまり、やり抜いた作品が評価される構造になっている。才能やセンスより先に「続けること」が問われる世界なのです。
ただし本書が強調するのは、GRITは生まれつきの性格ではなく、習慣によって鍛えられるということ。先に述べたif-thenプランニングや進捗管理を組み合わせることで、やり抜く力は後天的に育てられます。
「自分は飽きっぽいから長編は無理」と決めつける前に、環境と仕組みで自分を支える方法を試してほしい。飽きっぽい人間がやり抜くために必要なのは、根性ではなく仕組みです。
習慣7:筋肉を鍛えるように意志力を鍛える
本書は「意志力は筋肉と同じように鍛えられる」と断言します。腕立て伏せを毎日やれば腕の筋力がつくように、意志力も日常的に使うことで強化できるという研究結果が紹介されています。
具体的な方法は、「気の進まないことを意識的にやる」こと。姿勢を正す、左手で箸を使う、口癖を直す——一見くだらないことですが、こうした小さな自己コントロールの積み重ねが、意志力という「筋肉」を太くしていきます。
創作に応用するなら、「毎日500字でいいから必ず書く」という小さなノルマが意志力のトレーニングになります。書きたくない日にこそ書く。その行為が、意志力を鍛える最高の筋トレです。なろうやカクヨムで毎日更新を続けている作家を見て「鉄人だ」と思うかもしれませんが、彼らは最初から強靭だったわけではなく、毎日の継続によって意志力が鍛えられた結果なのです。
ただし筋肉と同じで、意志力にも疲労があります。仕事で難しい判断を連続で下した日は、帰宅後にエディタを開く気力が残っていない。これは怠けではなく、意志力の消耗です。だからこそ、次の習慣8が重要になります。
習慣8:自分を追い込まない
意志力は鍛えられる。しかし限界もある——本書は続けてこう警告します。筋トレでも、毎日限界まで追い込めばオーバーワークで身体を壊します。意志力も同じです。
本書が提案するのは、「困難な目標は同時に2つ以上設定しない」こと。ダイエットしながら禁煙しながら長編小説を書く——全部を一度にやろうとすれば、すべてが中途半端になる。意志力は有限のリソースだから、集中すべき目標を1つに絞る。
兼業作家にとって、これは極めて重要なメッセージです。本業のプロジェクトが佳境を迎えている時期に、新作の連載開始を重ねるのは自殺行為に等しい。「今月は仕事に集中し、来月から書く」と割り切れることも、やり抜くための戦略です。
また、「ちょっとだけなら、いいだろう」という甘えが最も危険だと本書は述べています。「今日だけ書かなくてもいい」が2日、3日と続き、気づけば1ヶ月エディタを開いていない。心当たりのある人は多いでしょう。本書の助言は、やめるなら完全にやめる、やるなら毎日やる、中間を取らない——です。兼業作家にとっての現実解は、ノルマを下げてでも毎日書くか、「書かない期間」を明確に区切るか、どちらかだと思います。
さらに、誘惑に出会いやすい時間と場所を事前に把握しておくことも効果的です。「帰宅後にソファに座るとスマホを触ってしまう」なら、帰宅後はソファに座らずデスクに直行する。環境をデザインすることで、意志力の消耗を最小限に抑えられます。
習慣9:「やめるべきこと」より「やるべきこと」に集中する
最後の習慣は、目標の「表現方法」に関するものです。行動を変えたいとき、「やめたいこと」ではなく「やりたいこと」を目標に掲げるべきだと本書は説きます。
心理学で有名な「シロクマ実験」があります。「シロクマのことだけは考えるな」と言われると、逆にシロクマが頭から離れなくなる。これは行動にも当てはまり、やめようと思えば思うほど、その行動への衝動が強まってしまいます。
創作者が陥りがちな例を挙げましょう。「SNSを見るのをやめる」と決めると、かえってSNSのことが気になって仕方なくなる。これを「執筆中は、調べ物は紙の辞書を使う」に置き換えると、スマホを触る動機そのものが消えます。否定形の目標は脳にとって処理しにくく、肯定形の代替行動を設定するほうが圧倒的に効果的なのです。
もう一つ、「インプットばかりして書かない状態をやめたい」は失敗しやすい目標です。代わりに「インプットしたら、その日のうちに300字のメモを書く」とすれば、自然とアウトプットの習慣が生まれます。「エタるのをやめる」ではなく「毎日500字書く」。「推敲を後回しにしない」ではなく「1章書いたら翌日に読み返す」。
目標をどう表現するかで、結果は大きく変わります。あなたの創作目標をもう一度見直してみてください。否定形で書かれた目標があれば、肯定形の具体的な行動に書き換える。それだけで、目標達成の確率は格段に上がるはずです。
まとめ:創作は「才能」ではなく「習慣」で決まる
『やり抜く人の9つの習慣』が教えてくれる最大の教訓は、成功する人としない人の差は「才能」ではなく「習慣」にあるということです。
小説の世界でも同じことが言えます。天才的なセンスを持つ作家はたしかにいます。しかし、天才でなくても長編を完結させ、コンテストに応募し、読者の反応を受けて次作に活かす——この循環を回し続けられる人が、結果を出す人です。
具体的な目標を設定し、if-thenプランニングで行動を自動化し、進捗を測定し、成長ゴールで取り組み、仕組みで意志力を温存する。この5つだけでも実践すれば、あなたの執筆習慣は確実に変わるはずです。
1時間で読める本です。でも、その1時間が、あなたの次の長編を完結に導くかもしれません。
最後に一つ、本書には書かれていないが重要なことを付け加えます。それは「習慣を実行する仲間を見つける」ことです。一人で習慣を続けるのは難しい。しかし「今日2000字書いた」と報告できる創作仲間がいれば、それだけで継続率は跳ね上がります。Xで執筆報告をしている人たちと繋がるだけでも、「他の人も書いている」という事実が自分を動かす力になります。習慣は一人で作るものですが、一人で続ける必要はないのです。
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