小説家のための生成AI入門|使えるツールとルールを整理する
生成AIと小説の話は、もう避けて通れません。
ChatGPTが登場してから、「AIで小説が書ける」という話題は一気に広がりました。書店では「AI時代の文章術」のような書籍が並び、投稿サイトではAI生成作品への規約整備が進み、SNSでは「AIに仕事を奪われるのか」という議論が繰り返されています。
正直なところ、情報が多すぎて何から手をつければいいかわからない、という人も多いのではないでしょうか。
今回は、小説を書いている人に向けて、生成AIの基礎知識・使えるツール・守るべきルールを一本にまとめます。「AIに詳しくなりたい」ではなく「自分の創作にAIを取り入れるかどうか判断したい」という方のための記事です。
そもそも生成AIとは何か
生成AI(ジェネレーティブAI)は、与えられたデータをもとに新しいコンテンツを作り出すAI技術の総称です。「検索」のように既存の情報を探して返すのではなく、テキスト、画像、音声、動画などを「生成」する点が従来のAIと異なります。
小説家にとって関係が深いのは、主にテキスト生成AIです。ChatGPT(OpenAI)、Claude(Anthropic)、Gemini(Google)などの大規模言語モデル(LLM)がこれに当たります。ユーザーがプロンプト(指示文)を入力すると、その文脈に沿った文章を生成して返す。小説のプロット作成、キャラクター設定の壁打ち、文章の推敲支援など、さまざまな場面で活用されています。
技術的な仕組みを簡単にいうと、LLMは膨大なテキストデータから「この単語の次に来やすい単語は何か」を学習したモデルです。たとえるなら、あらゆる本を読んだ人間が「次に何を書くべきか」を確率的に判断しながら文章を紡いでいる状態です。だから流暢な文章を書ける一方で、「事実かどうか」の判断はできない。この特性を理解しておくと、使い方の方針が立てやすくなります。
なお、画像を生成するAI(Stable Diffusion、Midjourney、DALL-E等)や音声を生成するAI(Suno、AIVA等)も生成AIの一種ですが、小説家が直接関わるのはテキスト生成AIが中心です。表紙イラストの生成や朗読音声の作成に興味がある場合は画像・音声系のツールも視野に入りますが、本記事では小説の「文章」に関わるツールに絞って解説します。
小説家が使えるAIツール一覧
2026年現在、小説執筆に使えるAIツールは大きく3つのカテゴリに分かれます。
汎用LLM(大規模言語モデル)
もっとも応用範囲が広いのが汎用LLMです。
• ChatGPT(OpenAI):もっとも知名度が高い。GPT-4o、o1、o3と世代が進み、日本語の出力品質は大幅に向上。無料プランでも基本的な機能は使える
• Claude(Anthropic):長文の読み込みと日本語の自然さに強み。Projects機能で作品ごとの設定管理が可能。小説執筆ではChatGPTと並ぶ有力選択肢
• Gemini(Google):Google検索との連携が特徴。最新情報を踏まえた調査には便利だが、小説本文の生成ではChatGPTやClaudeに一歩譲る印象
これらは「小説専用」ツールではありませんが、プロンプト次第で小説のプロット作成から本文執筆、推敲まで幅広く対応します。汎用だからこそ柔軟性が高く、自分の使い方を工夫する余地が大きいのが特徴です。無料プランでも基本機能は使えますが、出力回数や利用可能なモデルに制限があるため、本格的に使うなら各社の有料プラン(月額20ドル前後)を検討することになります。
ChatGPTで実際に小説を書いた体験記、Claudeの具体的な活用フローについては、それぞれ別記事で詳しく解説しています。
小説特化型AIツール
小説や物語の生成に特化したツールも存在します。
• AIのべりすと:日本語の小説生成に特化。入力した文章の続きを自動生成する「続きを書く」機能が特徴。短編の執筆補助に向いている
• NovelAI:テキスト生成と画像生成の両機能を持つ。英語圏のライトノベル(いわゆるWeb Novel)文化をベースに開発されており、ファンタジーやSFの文体に強い
• AI BunCho:日本語の小説プロット生成と本文生成に対応。起承転結の構造を指定して物語を作れる
これらのツールは、汎用LLMと比べると機能が限定的ですが、「小説を書くこと」に最適化されている分、初心者にとっては取っつきやすい面があります。ただし、ツールによっては開発が停滞しているものや、サービス終了のリスクがあるものもあります。利用する前に最新の運営状況を確認しておくことをお勧めします。ChatGPTやClaudeのような大手LLMと比べると、ユーザー数や開発リソースの面で不安定な部分がある点は意識しておくべきです。
補助ツール
直接小説を書くツールではないものの、創作プロセスを支援するAIツールもあります。
• Perplexity AI:AIを活用した検索エンジン。取材や世界観構築のための情報収集に便利。ただし、出力された情報の正確性は必ず自分で検証すること
• DeepL / Google翻訳:海外の資料を読む際や、英語圏の読者に向けた翻訳に。精度は年々向上しているが、小説の文体を完全に再現できるわけではない
• 文章校正AI:誤字脱字のチェックや文法の修正に使えるツール群。推敲の第一段階として有用
AIでできること・できないこと
ツールの選択と同じくらい重要なのが、「AIに何を期待し、何を期待しないか」の線引きです。
できること
• プロットの骨格を短時間で複数案生成する
• キャラクター設定の壁打ち相手になる
• 「続きが書けない」ときに初稿のたたき台を出してくれる
• 自作の文章に対して改善点をフィードバックする
• 世界観構築のための調査を効率化する
• 異なるジャンルの文体を試すサンプルを出力させる
要するに、「案出し」と「素材作り」にはめっぽう強い。一人で黙々と書いている兼業作家にとって、いつでも応答してくれる壁打ち相手がいるというのは、それだけで大きな価値です。例えばキャラクターの設定などについてもClaudeやGeminiは面白いアイデアをくれます。
できないこと
• 「なぜこの物語を書くのか」というテーマの核を作ること
• 読者の感情を揺さぶる「間」や「余白」を設計すること
• 作者自身の経験にもとづく独自の視点で場面を描くこと
• 作品全体の一貫したトーンを最初から最後まで維持すること
• ハルシネーション(もっともらしい嘘)を自ら検知すること
• 「この展開は面白いか」を判断すること
ひとことでまとめるなら、AIは「量と速度」を提供し、人間は「選択と判断」を担う。この分業が、現時点でのもっとも現実的なAI活用の形です。
私自身、ChatGPTを使って実際に小説を執筆したことがあります。そのとき感じたのは、AIが出力した文章の中から「これは使える」「これは違う」と選ぶ作業こそが、実は創作の核心に近い行為だということでした。
著作権とプラットフォーム規約
AIを創作に使う上で、避けて通れないのが著作権と投稿規約の問題です。
著作権の基本的な考え方
現時点では、「AIが自動生成したコンテンツ」に著作権が認められるかどうかは国・地域によって判断が分かれています。日本においては、文化庁が「AI生成物に著作権が認められるかは、人間の創作的寄与の有無・程度による」という見解を示しています。つまり、AIにプロンプトを投げて出力された文章をそのまま使った場合と、AIの出力を土台にして大幅に加筆・修正した場合とでは、著作権の扱いが異なる可能性があります。
また、AI学習に使用されたデータの著作権問題も継続して議論されています。自分の作品がAIの学習データに含まれることへの懸念は、多くの創作者が共有している問題です。この領域の法整備はまだ発展途上であり、今後も状況は変わっていく可能性が高いです。
いずれにせよ、「AIの出力をそのまま自分の作品として公開する」行為には、法的にも倫理的にもリスクがあることは認識しておくべきです。
プラットフォームごとの規約
pixiv、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスなど、主要な創作プラットフォームはそれぞれAI生成作品への対応方針を打ち出しています。全面禁止のサービスもあれば、条件付きで許容するサービスもあり、対応は統一されていません。
各プラットフォームの最新規約を整理した記事を別途書いています。AI生成コンテンツを含む作品を投稿する前に、必ず確認してください。
→ 関連記事:創作プラットフォームのAI禁止規定の現在|pixiv・なろう・カクヨム・アルファポリスの最新ルールを整理する
AI時代の小説家として
ここまで読んで「結局、AIを使うべきなのか使わないべきなのか」と迷っている方もいるかもしれません。
答えは「どちらでもいい」です。AIを使わずに書くことは、まったく恥ずかしいことではありません。むしろ、一文字ずつ自分の手で紡ぐ行為には、AIでは生み出せない「手触り」があります。
一方で、AIを使うことも「手抜き」ではありません。道具は道具です。ペンで書こうがワープロで書こうがAIで下書きを作ろうが、最終的に「この物語は面白いか」を決めるのは読者であり、その物語に魂を込めるのは作者です。
IT企業で長く働いてきた人間としていえるのは、道具は使う人の意図を増幅するだけだということです。良い意図を持って使えば良い結果が出るし、雑に使えば雑な結果が出る。ExcelもGitもAIも、この原則は変わりません。
ひとつ確実にいえるのは、「AIについて何も知らない」状態で判断するのは危険だということです。使うにせよ使わないにせよ、生成AIが何をできて何をできないのかを自分の目で確かめた上で、自分の創作スタイルに合った距離感を選ぶ。それが、AI時代の小説家に求められる最初の一歩ではないでしょうか。
もし「とりあえず触ってみたい」と思ったなら、まずはChatGPTの無料プランで、今書いている作品のキャラクター設定を壁打ちしてみることをお勧めします。「このキャラクターの弱点を3つ考えて」と投げるだけで、AIとの付き合い方の感覚が掴めるはずです。
まとめ
小説家が生成AIについて知っておくべきことを整理しました。
• 生成AIはテキスト・画像・音声などを「生成」する技術。小説家にはテキスト生成AIが直接関係する
• ツールは汎用LLM(ChatGPT、Claude、Gemini)、小説特化型(AIのべりすと、NovelAI等)、補助ツールの3カテゴリで、汎用LLMに統合されていく流れあり
• AIは「量と速度」を提供し、人間は「選択と判断」を担う
• 著作権とプラットフォーム規約は必ず確認すること
• 使うか使わないかよりも、自分の創作にとってベストな方法を自分で選ぶことが大切
AIの進化は止まりません。だからこそ、振り回されるのではなく、自分の創作の軸を持った上で道具として付き合っていく。それが2026年の小説家に求められる姿勢ではないかと思います。
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