2026年に二次創作小説を書く意味はあるのか|それでも書くなら知っておくべきこと

2023年4月12日

正直に言います。2026年の今、「二次創作小説の書き方」を検索しているあなたに、まず伝えなければならないことがあります。

二次創作小説を取り巻く環境は、10年前とはまるで違います。

かつてファンが物語を書き、投稿し、同じ作品を愛する仲間と感想を交わし合った──あの文化は、確実に縮小しています。にもかかわらず「二次創作を始めたい」と思ったあなたには、おそらく何か理由があるはずです。この記事では、その理由に正面から向き合います。

書き方のハウツーだけを並べるのは簡単です。でもその前に、「なぜ今、二次創作小説なのか?」という問いに答えなければ、この記事そのものに意味がありません。


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二次創作小説の「黄金時代」は終わった

まず現実を直視しましょう。

日本における二次創作小説の最大級のプラットフォームだった「にじファン」は2012年に閉鎖されました。その後、受け皿となったサイトはいくつかありますが、かつての規模を取り戻したプラットフォームはひとつもありません。

現在テキスト系の二次創作を投稿できる主な場所を見てみると──。

サイト現状
pixiv(小説)イラスト側は健在だが、小説のブックマーク数はイラストの数十分の一が常態。同じキャラを描いたファンアートが1万ブックマークを集める横で、同じキャラの二次創作小説は100に届けば上出来
ハーメルン老舗で根強いユーザーがいるが、ランキングは固定化され新規参入者が日の目を見にくい構造
カクヨム二次創作投稿可能だが、サイトの主軸はオリジナル作品。二次創作は傍流扱い
AO3世界的には成長中だが、日本語ユーザーはまだ少数。英語圏の文化とタグ体系に馴染めないという声も多い

どこを見ても「二次創作小説を投稿すれば盛り上がる」という状況ではありません。


なぜ衰退したのか──5つの構造的要因

二次創作小説が縮小し続けている理由は、単にブームが去ったということではありません。構造そのものが変わっています。

要因1:ファン表現の主戦場がテキストから映像・画像に移った

2020年代のファン表現の中心は、ファンアート、推し活動画、TikTok編集、切り抜き、MMD、コスプレです。1万字の二次創作小説を書いて投稿するより、1枚のファンアートを投稿するほうが100倍のリアクションが返ってきます。

これは小説が劣っているという話ではなく、SNSのアルゴリズムが「一瞬で消費できるコンテンツ」を優遇する構造になっているからです。タイムラインを流し見する文化の中で、5,000字のテキストは物理的に読まれにくい。

要因2:「推し活」が創作から消費に移行した

かつてのファン活動は「好きな作品について何か作る」が中心でした。同人誌を書く、SSを投稿する、考察サイトを運営する。

2020年代の推し活は、グッズを買う、ライブに行く、配信にスパチャを投げる、聖地巡礼するなど、「お金と時間を使って応援する」方向に大きくシフトしました。創作ではなく消費が、ファンとしての主要な表現手段になっています。

要因3:オリジナル作品への商業的インセンティブが強すぎる

「小説家になろう」発の異世界作品が次々と書籍化・アニメ化される光景を、ここ10年ずっと見てきました。転スラ、リゼロ、無職転生、薬屋のひとりごと……。

この成功例の洪水が、文章を書ける人間に強烈なメッセージを送り続けています。「二次創作を書くくらいなら、同じ労力でオリジナルを書いたほうが書籍化のチャンスがある」。実際、その判断は合理的です。出版社のコンテストも、Web小説サイトのランキング連動書籍化も、すべてオリジナル作品が対象です。二次創作にはそのルートがありません。

要因4:AIが「それなりの文章」を量産できるようになった

2023年以降、生成AIはファンフィクションを「それなりに」書けるようになりました。キャラの口調を指定すれば、それっぽい台詞を返してくれる。プロットを入力すれば、それなりの展開を出力してくれる。

これが二次創作小説にとって何を意味するかといえば、「人間が手で書いた」というだけでは差別化にならない時代が来たということです。読者にとって、AIが書いた二次創作と人間が書いた二次創作を見分けるのは困難ですし、そもそもその区別を気にしない読者も増えています。

要因5:ファン同士の交流が場を選ばなくなった

かつて二次創作小説が担っていた重要な機能のひとつは「ファン同士の交流の起点」でした。投稿作品の感想欄で語り合い、そこから仲間が生まれる。

現在はXのスペース、Discord鯖、配信のコメント欄など、テキスト作品を介さなくてもファン同士がつながる場はいくらでもあります。二次創作小説は、コミュニティ形成の手段としての独占的な地位を失いました。


それでも二次創作を書く理由があるとすれば

ここまで読んで「じゃあ書く意味ないじゃないか」と思った方もいるでしょう。正直、「PVを稼ぎたい」「多くの人に読まれたい」「人気者になりたい」という動機であれば、二次創作小説は2026年において最適な手段ではありません。

では、二次創作小説に残された意味は何か。

私は3つあると考えています。

理由1:「感謝の手紙」として書く

ある作品に出会って、人生が変わった。あのキャラの一言に救われた。あの展開に涙が止まらなかった──。

その気持ちを形にする方法として、二次創作小説は今でも最も誠実な手段のひとつです。ファンアートが「好き」を一瞬で表現するなら、二次創作小説は「好き」を時間をかけて綴る手紙です。

元の記事でも書いた通り、「二次創作があって初めて作品は完成する」と私は考えています。原作者がすべてを描き切ることはできません。読者の中に生まれた「その先の物語」は、読者自身が書くしかない。それは感想文を超えた、原作への応答です。

理由2:「制約の中で書く」訓練として最強

二次創作は自由なようでいて、実は一次創作よりはるかに不自由です。キャラの性格は変えられない。世界観は変えられない。呼称を間違えればファンに一瞬で見抜かれる。

元の記事で引用したニケさんのポスト──「この要素を一点だけ変えるとこうなるはずです!」を全力でやる──これが二次創作の本質です。そして「この要素を変えたからといって、ここは釣られて動きません」が多いほど、読んで面白い。

この制約下で面白い物語を書く訓練は、一次創作にも直結します。「キャラの性格が矛盾する」「世界観に穴がある」という一次創作でよくある失敗は、二次創作で他人の作ったキャラと世界に向き合った経験があれば、自然と避けられるようになります。

理由3:商業ルートに乗らないからこそ、純粋に書ける

裏を返せば、二次創作小説には書籍化もアニメ化もありません。PVランキングも実質的に意味がありません。

だからこそ、純粋に「書きたいから書く」が成立します。

マーケティングを考えなくていい。読者層のペルソナを想定しなくていい。タイトルにキーワードを詰め込む必要もない。「五条悟が封印される前日に一人で散歩する話」が書きたければ、それだけを書けばいい。

商業的な利益がゼロだからこそ、創作の原点──「この物語を世に出したい」という衝動だけで机に向かえる。それは2026年において、むしろ贅沢な体験かもしれません。


じゃあ、書くと決めたなら──最低限のガイド

ここからは「理由は分かった、書く」と決めた方のための実践パートです。

前提:ガイドラインを確認する

二次創作を始める前に、その原作が二次創作を許可しているかを確認してください。多くの作品は個人のファン活動としての二次創作を黙認していますが、明確に禁止・制限している作品もあります。公式サイトやガイドラインの確認は最低限のマナーです。

ステップ1:原作を「書き手の目」で読み直す

元の記事で強調した通り、呼称の確認は最優先です。主人公がヒロインを「君」と呼ぶのか「お前」と呼ぶのか「名前」で呼ぶのか──これを間違えた瞬間、ファンは一気に冷めます。

確認すべきことを最小限に絞ると:

• 各キャラの口癖・語尾のパターン

• キャラ同士の呼称(表にまとめることを推奨)

• 物語の時系列で描かれていない空白期間

• ファンの間で特に人気の高いシーン

ステップ2:書く内容を一行で決める

「○○(キャラ名)が、△△の状況で、□□する話」

例:「フリーレンが、ヒンメルの誕生日に魔法具店を覗く話」「たきなが、千束が南の島に逃げた後の夜に手紙を書く話」

元の記事でリコリス・リコイルの例を挙げましたが、錦木千束が最終決戦後に南の島に逃げた際のたきなの心情は、原作で描かれていない空白です。多くのファンがあの空白を埋めるために二次創作を書きました。原作が描かなかった「余白」を見つけること──それが二次創作のネタの原石です。

ステップ3:プロットは3行でいい

1. 始まり:どんな状況から始まるか
2. 転機:何が起きるか(何に気づくか)
3. 終わり:どんな気持ちで終わるか

壮大な敵をオリジナルで設定する必要はありません。むしろ原作が完結していない場合、独自の強敵を出すのは避けたほうが安全です。二次創作のスケールは、日常の一場面で十分です。

ステップ4:「1点だけ変えて、残りは動かさない」

二次創作で最も支持されるのは、原作の要素を1点だけ変えつつ、他のすべてを原作に忠実に保つ作品です。

新キャラクターを登場させるのは、できる限り避けましょう。どうしても必要な場合は、原作キャラより弱い立場(ファン、昔負けた相手など)に留めてください。原作キャラの恋人や血縁者をオリジナルで作ると、原作のバランスが崩壊します。

ステップ5:2,000字で完成させる

初めての二次創作は2,000字で十分です。5万字の大作は必要ありません。

「完成させた」という事実が、次の創作へのエネルギーになります。書きながら推敲しないでください。★マークを付けて先に進み、最後まで書き切ってから直す。これが完成への最短ルートです。

ステップ6:投稿先は割り切って選ぶ

先述の通り、二次創作小説の投稿先に理想的な場所はもうありません。割り切りが必要です。

• pixiv小説:タグ検索で同じファンに見つけてもらいやすい。反応は少なくても、確実に届く相手がいる

• X(旧Twitter):超短編やワンシーンならここ。投稿のハードルが最も低い

• ハーメルン:長編を書く覚悟があるなら。ただし新規の壁は厚い

「多くの人に読まれること」を期待しすぎないでください。この記事の前半で述べた通り、二次創作小説を読む層そのものが縮小しています。10人に読まれて3人が反応してくれたら、それは2026年においては十分な成果です。


二次創作小説は「不要」か?

最後に、この記事全体の問いに答えます。

PVや承認欲求を目的とするなら──はい、二次創作小説は2026年において効率の悪い手段です。同じ時間でファンアートを描いたほうが、オリジナル小説を書いたほうが、TikTokに推し動画を上げたほうが、よほど多くの反応が返ってきます。

でも、「あの作品に出会えてよかった」という感謝を、自分の言葉で、自分の物語として綴りたいのであれば──二次創作小説は、いまだに唯一無二の手段です。

元の記事で「二次創作があって初めて作品は完成する」と書きました。その考えは今も変わっていません。ただし、完成させるのは「市場」や「プラットフォーム」ではなく、あなた個人の中でのその作品の物語です。

たとえ読む人が5人しかいなくても、たとえAIでも似たような文章が出力できるとしても、あなたがあの作品を愛して、あのキャラの声を頭の中で再生しながら一文字ずつ書いたテキストには、あなたにしか宿せない温度があります。

その温度を届ける「手紙」として、二次創作小説は生き残ればいい。私はそう信じます。


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