『工学的ストーリー創作入門』書評|才能不要、6つの要素で物語は作れる

2023年11月18日

「才能がないから、小説は書けない」。

そう思っていた時期がありました。でも、この本を読んで考えが変わりました。ラリー・ブルックス著『工学的ストーリー創作入門』は、物語を才能ではなく技術(エンジニアリング)で作ることを教えてくれる一冊です。

帯のコピーは「天才以外は必読」。つまり、直感だけでは書けない私たちのための本です。

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この本が解決する問題

「ストーリーは思いつくけど、小説にまとめようとすると書けない」。

この悩みを抱える書き手は多いはずです。アイデアはある。構想もある。でも実際に書き始めると、途中でグダグダになるか、途中で飽きて放置するか、どこに向かっているかわからなくなる。

『工学的ストーリー創作入門』は、この問題を構造の不在に起因するものだと喝破します。才能の問題ではない。設計図がないから建物が崩れるだけだ、と。

物語を作る6つの要素

この本の核心は、物語を6つの要素に分解していること。

1. コンセプト ── 物語のアイデア。「もし○○だったら?」の核
2. 人物 ── キャラクターの造形と動機
3. テーマ ── 物語が言いたいこと
4. 構成 ── 場面の配置、4幕構造
5. シーンの展開 ── 各場面の役割と効果
6. 文体 ── 文章表現のスタイル

この6つの要素を関連付け、ロジカルに設計する。それが「工学的」アプローチの本質です。

直感で書く天才には不要かもしれません。でも、「何かが足りない」と感じている書き手には、何が足りないのかを特定できるチェックリストになります。

キャラクターの「3つの次元」

この本で特に価値が高いのが、キャラクターを3つの次元(レイヤー)から深掘りする手法です。

第一の次元:表面

キャラクターの外見、職業、口癖、社会的な振る舞い。読者が最初に出会う「見た目」の層。

第二の次元:内面

過去のトラウマ、秘密、本音と建前のギャップ。表面の下に隠された真の動機。なぜこの行動をとるのか、なぜこの嘘をつくのか。

第三の次元:行動

危機的状況で初めて明らかになる本質。「追い詰められたとき、人はどう行動するか」。これが最も深い層であり、物語のクライマックスでキャラクターの真価が問われるのはこの次元です。

この三層構造を意識するだけで、キャラクターに奥行きが生まれます。

4幕構成 ── 設定・反応・攻撃・解決

日本的な「起承転結」とは異なるハリウッド式の構成論も、この本の大きな特徴です。

1. 設定(Setup) ── 世界、キャラ、問題の提示
2. 反応(Response) ── 問題に対してキャラが受動的に反応する
3. 攻撃(Attack) ── キャラが能動的に問題解決に動く
4. 解決(Resolution) ── 最終対決とカタルシス

特に重要なのは反応→攻撃のターニングポイント。主人公が「逃げる立場」から「立ち向かう立場」に変わる瞬間こそが、物語最大の見せ場になります。

各幕には明確な役割があり、「今自分が書いているシーンは4幕のどこに位置するのか」を意識するだけで、構成が崩れにくくなります。

「形容詞の削減」── 文体レベルの実践的助言

この本は構成論だけではなく、文章レベルの具体的なアドバイスも含んでいます。

特に印象的だったのは「形容詞の削減」

> 形容詞を減らすだけで文章は引き締まる

「美しい夕焼け」と書く代わりに、夕焼けそのものの描写を具体的に書く。Show Don’t Tellの実践にもつながる原則です。

2024-2025年の類書との比較

『工学的ストーリー創作入門』以降も、物語創作の名著は続いています。主要な類書を比較します。

『SAVE THE CATの法則 小説のために』

ブレイク・スナイダーの映画脚本術を小説に応用した本。15のビートで物語を組み立てる方法論。4幕構成より細かいステップが特徴で、「次に何を書けばいいかわからない」問題に対する具体的な指示が多い。

『アウトラインから書く小説再入門』

K.M.ワイランド著。プレミス→アウトライン→プロットという階層構造を丁寧に解説。プレミスの技術を深掘りしたい方に最適。

『物語の法則』

クリストファー・ボグラー著。ジョーゼフ・キャンベルの「英雄の旅」を現代のストーリーテリングに応用した古典的名著。

比較まとめ

書籍強み向いている人
工学的ストーリー創作入門6要素×4幕構成の体系的フレーム「何が足りないかわからない」人
SAVE THE CATの法則15ビートの具体的手順「次に何を書けばいいかわからない」人
アウトラインから書く小説再入門プレミスからアウトラインへの展開設計段階で迷う人
物語の法則神話的構造の理解物語の普遍性を学びたい人

この本をおすすめする人・しない人

おすすめする人

• 直感で書いて途中で止まる人

• 「何かが違う」と感じるが何が違うかわからない人

• 創作の基礎教本がほしい初心者

• 経験者で、チェックリスト的に使いたい中級者

おすすめしない人

• すでに自分のスタイルが確立しているプロ

• 理論よりも手を動かしたい「まず書く」派

まとめ ── 才能で落ち込む必要はない

• 書けないのは才能のせいではなく、設計図の不在が原因

• 6つの要素(コンセプト・人物・テーマ・構成・シーン・文体)で物語は組み立てられる

• キャラクターの3次元(表面・内面・行動)を意識すれば奥行きが生まれる

4幕構成で「今自分がどこを書いているか」を常に把握する

小説は才能ではなく技術。この本がその確信を与えてくれます。


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