『エモい古語辞典』が創作者の武器になる理由|古語で表現力を爆上げする方法
新たな表現は古語から生まれる!
「好きなキャラをエモく表現するために、感受性を爆上げしたい! 」
そんなとき、いちばんの味方になってくれるのは、
古来、先人たちが歴史の中で積み上げてきたグッとくる表現の宝庫、"古語"です。
――うそうそ時に逢いましょう ――海月(くらげ)の骨のような恋をした
――可惜夜(あたらよ)を君とすごせたら ――そして二人は泡沫(うたかた)に還る
本書は、こんなふうに、胸がうずく、心がゆれる日本語表現を、
1654語、厳選して詰め込みました。
春夏秋冬、月や星、草花や色、「恋」など人の心を表す美しい言葉だけでなく、
「名おそろしきもの」――怖さやおぞましさで心をつかむ言葉、
様々な物語のイメージソースとなってきた神話や伝説、仏教の言葉、
知る人ぞ知る四字熟語、
現代の文章でも使える伝統的でみやびやかな雅語まで、まんべんなく収集しています。
中身には古文や近代文学からの引用を(現代語訳つきで)できるだけ入れ、
海島千本さんによる美しいイラストを付し、
パラパラと読むだけでも楽しいものになっています。
★小説・マンガ・歌詞などの創作活動全般に。
★お話作りやネーミングのアイデア集として。
★古文や近代文学を楽しむ導入として。
本書をぜひお役立てください。
「エモさにふるえても語彙力を喪失したくない。
むしろ語彙力でエモさを増幅させたい。これはそんな人のための辞典です。」(著者)
目次:
第1部 天文 ――時間/季節/宇宙/気象
第2部 自然 ――生物/植物/元素/色
第3部 人生 ――感情/人の営み
第4部 物語 ――神話・歴史/怪異/中国/仏教/禅
第5部 言葉 ――ことわざ/二字熟語/四字熟語/近世語/雅語
「あの感情、言葉にしたいのにぴったりの日本語が見つからない」——そんな経験はありませんか? 実は、その「ぴったりの言葉」は古語のなかに眠っていることが少なくありません。
書店で偶然手に取った『エモい古語辞典』(堀越英美著、朝日新聞出版)は、まさにそんな言葉の宝庫でした。この記事では、同書が小説を書く人にとってなぜ強力な武器になるのかを解説します。
辞典なのに「世界観」がある
『エモい古語辞典』の最大の特徴は、辞典でありながらエッセイのように読めることです。1654語の古語が収録されていますが、単なる意味の羅列ではありません。各語に古典文学からの引用(現代語訳つき)が添えられ、海島千本さんのイラストが散りばめられています。パラパラとめくるだけで、言葉の引き出しがひとつ、ふたつと増えていく感覚を味わえます。
構成は5部に分かれています。
• 第1部「天文」——時間・季節・宇宙・気象の言葉
• 第2部「自然」——生物・植物・元素・色の言葉
• 第3部「人生」——感情・人の営みの言葉
• 第4部「物語」——神話・歴史・怪異・仏教の言葉
• 第5部「言葉」——ことわざ・熟語・雅語
小説家にとって特にありがたいのは第2部と第3部です。「夕凪(ゆうなぎ)」「朧月(おぼろづき)」「花冷え」といった季節の言葉は風景描写を豊かにし、「恋闕(れんけつ)」「切な」「愛惜(あいじゃく)」といった感情の言葉は心理描写の精度を上げてくれます。
古語が創作に効く3つの理由
理由1:読者の「共感覚」に触れる
古語には、現代日本語では失われた感覚の精度があります。
たとえば「可惜夜(あたらよ)」。意味は「惜しいほど美しい夜」です。「綺麗な夜」とも「素敵な夜」とも言えるのに、「あたらよ」にはそのどちらにもない独特の余韻があります。「惜しい」と「美しい」が同時に存在する感覚——これは現代語の一語では表しにくい。だからこそ、読者はその言葉に触れたとき、普段使わない感覚のスイッチが入るのです。
「泡沫(うたかた)」「朧(おぼろ)」「黄昏(たそがれ)」——これらの語が持つ音の美しさと意味の深さは、文章に一行入れるだけで情景の解像度を上げてくれます。
理由2:ネーミングの素材になる
小説のキャラクター名、技名、地名、組織名——ネーミングに苦労した経験は誰にでもあるでしょう。古語はその素材の宝庫です。
「逢魔時(おうまがとき)」は夕暮れ時の意味ですが、ホラー小説の章タイトルにそのまま使えます。「玉響(たまゆら)」はほんの一瞬を意味する言葉で、技名や呪文名にぴったりです。「群青(ぐんじょう)」は色の名前ですが、キャラクターの名前としても響きが美しい。
実際、多くのアニメ・ゲーム作品が古語をネーミングに採用しています。『鬼滅の刃』の技名は古語的な響きを持っていますし、ゲーム『大神』は日本神話の用語を大量に使用しています。
理由3:「日本語の共通認識」として機能する
新海誠監督は映画の題材に古典文学を参照しています。『君の名は。』は平安時代の『とりかえばや物語』にインスピレーションを得ており、タイトルの元ネタは『万葉集』の歌だとされています。
「誰(た)そ彼と 我(あれ)をな問ひそ 九月(ながつき)の 露に濡れつつ 君待つ我を」
クリエイターはギリシャ神話や聖書を創作の元ネタにしがちですが、それと同じくらい、日本の古典文学は日本人の共通認識になりえます。国語の授業で古い物語を読んで共感できるのは、日本人としての感覚が根底で変わっていないからです。
『エモい古語辞典』は、現代の感覚で「エモい」と感じられる古語を厳選してまとめています。そこから抽出した言葉を物語に使えば、読者の奥底にある和の感覚に直接響かせることができるのです。
実際に創作に使ってみる
具体的な活用例を挙げてみましょう。
風景描写に使う例
• 「朝焼けが空を染めた」→「茜空(あかねぞら)が広がった」
• 「霧がかかった山」→「霞(かすみ)に煙る峰」
• 「月が出た夜」→「月白(げっぱく)の夜」
感情表現に使う例
• 「切ない恋」→「海月(くらげ)の骨のような恋」(※本書の帯にも使われたフレーズ。存在しないものへの憧れを意味する)
• 「懐かしくて泣きたい」→「追憶に胸が塞がる」→ 古語の「偲ぶ(しのぶ)」を活かして「偲ぶ心が溢れた」
章タイトル・技名に使う例
• 「花鳥風月」——和風ファンタジーの章構成にそのまま使える
• 「黄泉還り(よみがえり)」——復活系の技名
• 「常世(とこよ)」——永遠の国。異世界の名前に
読者のレビューから見る共感
同書のレビューには、創作者からの声が多く見られます。
「辞典を最初から最後まで読むなんて初めて」「創作のインスピレーションが刺激される」「古くから美しさにため息が出る感覚を言葉にできる天才が沢山いたことに驚く」——これらの声が示すのは、古語が知識としてではなく感覚として読者に届いているということです。
辞典を面白いと感じた経験がない人にこそ、手に取ってほしい一冊です。
まとめ
『エモい古語辞典』は、古語を「知識」ではなく「感覚」として届けてくれる稀有な辞典です。風景描写、感情表現、ネーミングと、小説家が活用できる場面は幅広い。まずはパラパラとめくって、心に引っかかった一語を自分の原稿に使ってみてください。その一語が、あなたの文章に新しい色を加えてくれるはずです。
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