「これ誰のセリフ?」を解決する5つの方法|話者を明確にする技術

2021年11月20日

「このセリフ、誰が喋ってるの?」

読者にこう思わせた瞬間、物語への没入は途切れます。キャラクターの声が頭の中で再生されていたのに、突然スピーカーが不明になる。映画で言えば、真っ暗な画面で声だけが聞こえる状態です。

話者の不明確さは、セリフの内容がどんなに優れていても台無しにします。この記事では、読者を迷わせずにセリフの話者を伝える5つの方法を解説します。

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なぜ話者が分からなくなるのか

原因1:地の文が少なすぎる

セリフだけが連続すると、3人以上の会話で誰が喋っているか分からなくなります。特にWeb小説では「地の文を減らしてテンポを上げる」傾向が強いため、この問題が頻発します。

原因2:キャラの口調が似ている

全員がですます調、全員がだ・である調。語尾も一人称も同じだと、セリフだけでは判別不能です(語尾でキャラの個性を光らせるで語尾の差別化を解説しています)。

原因3:会話の人数が多い

2人の会話は交互に読めば分かりますが、4人以上になると、地の文なしでの判別はほぼ不可能です。

話者を明確にする5つの方法

方法1:「○○は言った」で直接示す

最もシンプルで確実な方法です。

「行くぞ」と太郎は言った。
「待ってくれ」花子が叫んだ。

メリット: 絶対に間違わない。初心者でも使いやすい。
デメリット: 多用すると単調になる。「○○は言った」「○○は言った」の連続は読みにくい。

「言った」のバリエーション

動詞ニュアンス
言った中立
叫んだ大声、緊急
つぶやいた小声、独り言
囁いた秘密、親密
告げたフォーマル、重要な宣言
吐き捨てた怒り、軽蔑
問いかけた質問

「言った」以外の動詞を混ぜることで、話し方のニュアンスを同時に伝えられます。ただし装飾しすぎると(「彼は不敵な笑みを浮かべながら氷のように冷たい声で囁いた」)かえって読みにくくなります。感情のニュアンスは1つだけ、が目安です。

方法2:一人称で際立たせる

キャラクターの一人称が異なれば、セリフの中に話者情報が含まれます。

「俺は行く」
「僕も行こう」
「あたしはここで待つ」

一人称だけで3人を判別できます。ただし、すべてのセリフに一人称が入るわけではないため、他の方法と組み合わせてください。

一人称のバリエーション

主要キャラには異なる一人称を振り分けましょう。「俺」が2人いると混乱のもとです。

一人称印象
男性的、カジュアル
柔らかい男性、少年
私(わたし)フォーマル、女性全般
あたしカジュアルな女性
わたくし格式高い
自分軍人、体育会系
拙者/わっち/朕特殊(時代・ファンタジー)

方法3:口調・語尾の特徴で判別させる

セリフ自体にキャラ固有の語尾や口調が含まれていれば、地の文なしでも誰が喋っているか分かります。

「行くでござるよ」
「行きますわ」
「行こうぜ」

3つとも内容は「行く」ですが、語尾だけで3人のキャラが判別できます。これが語尾設計の真の目的です。ただし、語尾に頼りすぎるとキャラがテンプレ化するリスクもあるため、語尾以外の要素(語彙、比喩の癖、話題の選び方)も組み合わせてください。

方法4:地の文(動作描写)で示す

セリフの前後に短い動作描写を入れることで、話者を自然に示す方法です。

太郎は剣を鞘に収めた。
「終わったな」
花子がため息をついた。
「まだ5人いるわよ」

「○○は言った」と書かなくても、動作の主語がそのまま話者を示します。この方法の利点は、話者情報と同時にキャラクターの動作や感情(剣を収める→戦闘終了の安堵、ため息→疲労)も伝えられることです。

地の文の挿入タイミング

セリフの前: 動作→セリフの流れ。話者を先に提示するため混乱しにくい

セリフの後: セリフ→動作の流れ。テンポが良いが、長い会話では混乱のリスクあり

セリフの途中: 「待て」太郎は立ち上がった。「まだ話は終わっていない」。セリフに間を作る効果

方法5:字面で印象を変える

同じ日本語でも、漢字・ひらがな・カタカナ・句読点の使い方でセリフの印象は変わります。

「わかった」——柔らかい
「分かった」——標準的
「ワカッタ」——機械的、カタコト
「分かッた……」——感情を押し殺している

これは上級テクニックですが、特殊なキャラクター(AI、外国人、幼児、老人)を描く際に効果的です。カタカナの多用でロボット感を出す、ひらがな中心で幼児感を出す、漢字を多用して硬い印象を出す。字面そのものがキャラクターの声のトーンを伝えます。

Web小説の「地の文なし会話劇」問題

Web小説、特になろう系やカクヨムでは、テンポ重視で地の文を極端に減らした「会話劇」スタイルが見られます。

問題例:
「行くぞ」
「ああ」
「大丈夫か?」
「問題ない」
「本当に?」
「……ああ」

2人なら交互に読めますが、3人目が加わった瞬間に崩壊します。

解決策:最低限のルール

地の文を最小限にしたい場合でも、以下のルールを守ってください。

1. 3人以上の会話では、3行に1回は地の文を入れる
2. 新しいキャラが会話に参加するときは、必ず地の文で示す
3. 話題が変わるタイミングで地の文を入れる
4. キャラの口調を完全に差別化する(語尾・一人称・語彙すべて異なる)

この4つを守れば、テンポを維持しつつ読者を迷わせない会話シーンが書けます。

5つの方法の使い分けガイド

状況おすすめの方法
2人の短い会話方法3(口調)だけでOK
2人の長い会話方法4(地の文)を適宜挟む
3人以上の会話方法1(直接示す)+方法4の併用
感情的なシーン方法4で動作描写を挟み緩急をつける
ギャグシーン方法3でテンポ重視、方法5でカタカナ等を活用
重要な一言方法1で「○○は言った」とあえて直接示し重みを出す

ラノベの会話シーン実例分析

上手い会話シーンは、5つの方法を無意識に組み合わせています。

効果的な3人会話の構造例:

太郎が地図を広げた。(方法4:地の文で話者提示)
「ここを通る」(太郎のセリフと分かる)
「遠回りじゃない?」(方法3:口調で花子と分かる設計が前提)
次郎は腕を組んだ。(方法4:新キャラ参加を地の文で示す)
「俺は太郎に賛成だ」(方法2:一人称「俺」で次郎と分かる)

5行の会話で、方法2・3・4を自然に使っています。読者は「誰が喋っているか」に迷わず、会話の内容に集中できます。

この記事のまとめ

方法技法効果
方法1「○○は言った」確実だが単調になりやすい
方法2一人称の差別化セリフ内に話者情報を埋め込む
方法3口調・語尾テンポを落とさず判別できる
方法4地の文で動作描写話者+感情を同時に伝える
方法5字面の工夫特殊キャラに有効

会話シーンの読みやすさは、話者の明確さで決まります。5つの方法を組み合わせ、読者が「誰のセリフか」を考えなくても自然に分かる会話を目指してください。


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