良いセリフは「事前準備」が9割|良いセリフ2つとNGセリフ3つの違い

2021年10月13日

「良いセリフが書けない」と悩んでいる人の多くは、セリフの書き方ではなく、セリフの前の準備が足りていません。

セリフは物語の「出力」です。キャラクターの性格、人間関係、場面の状況という「入力」が揃って初めて、良いセリフが自然に出てきます。この記事では、セリフが果たす3つの役割を確認し、「良いセリフ」の2パターンと「NGセリフ」の3パターンを具体的に解説します。

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セリフが果たす3つの役割

まず、小説におけるセリフの役割を整理しましょう。セリフにはこの3つの機能があり、良いセリフは必ずいずれか(もしくは複数)を果たしています。

役割1:事実を知らせる

情報伝達としてのセリフです。「敵が来る」「明日は雨だ」「この街では魔法が禁じられている」。

このタイプのセリフは最もシンプルですが、そのまま情報だけを伝えると「説明台詞」になるリスクがあります(説明台詞を避ける3つの方法参照)。情報を伝える際にも、キャラクターの性格や感情を反映させることが重要です。

情報だけ: 「北の塔に敵が10人いる」
キャラが出ている: 「北の塔、10人。多いな……いや、ちょうどいい」

後者は同じ情報を伝えつつ、キャラクターの好戦的な性格も表現しています。

役割2:物語を進展させる

セリフ自体が物語の転換点になるケースです。「付き合ってください」「お前はクビだ」「実は、私がお前の母親だ」。

この役割のセリフは、発する前と後で状況が変わります。物語進展型のセリフは、準備なしに書いても機能します。なぜなら、プロットの中で「ここで告白する」「ここで裏切る」と決まっているから。ただし、そのセリフの「言い方」にキャラクターが出ているかは、事前準備の問題です。

役割3:キャラクターの心理・個性を表す

最も重要な役割です。セリフを通じて、キャラクターがどんな人物かを読者に伝えます。

「了解」「承知しました」「おっけー」「把握した」「りょ」。すべて同じ意味ですが、どれを選ぶかでキャラクターの年齢・性格・社会的立場が変わります。この「選択」こそが事前準備の核です。

良いセリフのパターン1:関係性ベース

良いセリフの第一パターンは「キャラクター同士の関係性から生まれるセリフ」です。

関係性がセリフを決定する

同じキャラクターでも、話し相手が変われば口調が変わる。これは現実の人間も同じです。上司には敬語を使い、友人にはタメ口、家族にはさらに砕けた言葉を使う。

この「相手によって変わる口調」をキャラクターにも設計してください。

AキャラのBに対する口調(幼なじみ):
「おい、テスト勉強したか? してないだろ」

Aキャラの先生への口調:
「はい、ちゃんとやりました」

Aキャラの好きな人への口調:
「あの……もし良かったら、一緒に勉強しない……かな」

同一人物が3つの口調を使い分ける。この設計があれば、セリフを書くときに「この場面で話しているのは誰か」を確認するだけで、自然にセリフが出てきます。

関係性セリフの事前準備チェックリスト

1. 主要キャラ同士の「距離感」を定義する(親密/普通/敬遠/敵対)
2. 各距離感に応じた口調のパターンを決める
3. 物語の進行で距離感が変化する場合、口調の変化もメモする

たとえば、最初は敬語だったキャラが、信頼関係の構築とともにタメ口に変わる。この口調変化は、読者に「2人の関係が変わった」と伝える非言語的シグナルになります。

良いセリフのパターン2:キャラ設定ベース

第二パターンは「キャラクター個人の設定から生まれるセリフ」です。

設定がセリフの語彙を決める

キャラクターの職業、出身地、趣味、教育水準が、そのキャラが使う語彙の範囲を決定します。

医者 → 医学用語が自然に出る(「バイタル安定」「オペ」)

軍人 → 略語・命令形(「オスカー、前方クリア」「了解」)

料理人 → 料理の比喩(「焦げる前に引くのが肝心だ」)

プログラマー → IT用語の日常転用(「それバグってる」「仕様です」)

キャラクターの「語彙データベース」を事前に設計しておくと、セリフを書くたびに迷わなくなります(キャラクター設定の作り方テンプレートで、口調や語彙の項目を埋めてください)。

キャラ設定セリフの事前準備チェックリスト

1. キャラの一人称を決める(俺/僕/わたし/あたし/我/拙者)
2. 語尾パターンを決める
3. よく使う口癖・決まり文句を2〜3個設定する
4. 絶対に使わない言葉を1つ決める(禁句)
5. 感情的になったときの口調変化を決める

特に5番目は重要です。普段は丁寧語のキャラが、怒ったときだけ地が出る。この「切り替わり」が読者に与えるインパクトは絶大です。

NGセリフの3パターン

NG1:説明台詞

「お前は俺の弟で、5年前に家を出て行ったんだよな」。当人同士が知っている情報を改めて確認する不自然なセリフ。回避方法は説明台詞の記事で詳しく解説しています。

NG2:独白の長台詞

「俺はこう思った。なぜなら昔こんなことがあって、あのとき俺は〜」と、キャラクターが延々と過去を語り続けるパターン。

独白そのものはNGではありませんが、長すぎると以下の問題が起きます。

• 物語のテンポが停滞する

• 「聞き手」がいないため、セリフとしての緊張感がない

• 地の文(回想シーン)で処理したほうが自然なケースが多い

独白を使うなら、「誰かに向かって吐露する」形にするか、短く切って地の文と交互に配置してください。

NG3:英会話テキスト型

「I’m going to the store.」の日本語版です。
「今日はいい天気ですね」「はい、そうですね」「散歩に行きませんか」「ええ、行きましょう」

文法的には完璧ですが、キャラクターの個性がゼロ。教科書の例文のようなセリフです。この問題が起きる原因は、キャラクター設定ができていないから。「このキャラなら、天気の話をするときにどう言うか」を考える設定がないと、デフォルト的な標準語で書いてしまいます。

セリフの「プロット化」手法

ここで実践的な手法を紹介します。物語全体のプロットを作るように、重要な会話シーンのセリフもプロット化しておくと、執筆がスムーズになります。

ステップ1:会話シーンの目的を定義する

「このシーンの会話で何を達成するか」を一文で書きます。

例:「AがBに裏切りの事実を告げ、Bの信念が揺らぐ」

ステップ2:感情の開始点と到着点を決める

各キャラクターの感情が、会話の冒頭と末尾でどう変化するかをメモします。

例:

• A:冷静→罪悪感

• B:信頼→動揺→怒り

ステップ3:キーセリフを先に決める

シーンで最も重要なセリフ(ターニングポイントになる一言)を先に決めます。

例:「お前が信じていたものは、全部嘘だ」

ステップ4:キーセリフに至る流れを設計する

キーセリフがいきなり出てくると唐突に感じます。そこに至るまでの会話の流れを設計してください。最初は関係ない話題から始まり、徐々に核心に迫る。この「寄せていく」構成が自然さを生みます。

AIで会話ラフ案を生成する方法

生成AIを使ってセリフのラフ案を出す方法を紹介します。AIは大量の台詞パターンを短時間で生成できるため、「叩き台」として有効です。

プロンプト設計のコツ

AIに指示する際、以下の情報を必ず含めてください。

1. キャラAの性格・口調・一人称
2. キャラBの性格・口調・一人称
3. 2人の関係性
4. 場面の状況
5. この会話で達成したいこと

「AとBの会話を書いて」だけでは、英会話テキスト型のセリフが出てきます。キャラクター情報を詳しく指定するほど、AIの出力は改善します。

AIの弱点を補完する

AIが生成したセリフには以下の傾向があります。

• 全員が同じ語彙レベルで喋りがち

• 感情表現が直接的すぎる(「嬉しい」「悲しい」と言わせがち)

• テンポが均一になりやすい

これらをリライトで修正してください。AIは大量の選択肢を出す機械、最終判断は人間。この分業が最も効率的です。

この記事のまとめ

分類パターンポイント
良いセリフ関係性ベース相手との距離感がセリフに反映
良いセリフキャラ設定ベース職業・語彙・口癖が個性を出す
NGセリフ説明台詞作者の都合で情報を喋らせている
NGセリフ長独白テンポ停滞、地の文で代替可能
NGセリフ英会話テキスト型キャラの個性がゼロ

良いセリフを書くコツは、書く前の準備に9割があります。キャラクターの設定を深め、関係性を設計し、会話の目的とキーセリフを先に決める。あとは、キャラクターが勝手に喋り始めるのを待つだけです。


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