コンセプトセンテンスから始めるプロット設計|プロ志向の企画工程

2023年4月24日

「面白い設定を思いついた!」そう意気込んで書き始めたのに、途中で「あれ、何を書きたかったんだっけ?」と迷走する——。

この問題は、コンセプトセンテンスを先に作っていれば防げます。

コンセプトセンテンスとは、物語の全体像を100文字以下で表現した一文。プロットよりもさらに上流にある、企画の核です。

この記事では、プロ志向の物語作りの工程——コンセプトセンテンス → ストーリーアブストラクト → プロット → 初稿——を解説します。

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執筆工程の全体像

プロの脚本家やゲームシナリオライターは、いきなりプロットを書きません。

上流から下流へ、段階を踏んで設計します。


コンセプトセンテンス(100文字以下)
 ↓
ストーリーアブストラクト(800〜1,600字)
 ↓
プロット(10,000〜30,000字)
 ↓
プロット + 設定資料
 ↓
初稿

上流が曖昧なまま下流に進むと、途中で迷走します。逆に、コンセプトが明確なら、どの段階でも「この判断はコンセプトに沿っているか?」と確認できます。

コンセプトセンテンスとは

「この物語はどういう話か?」を100文字以下の一文で表現したもの。

• 「世界最弱のスライムが、仲間を取り込む力で最強の国を建てる異世界ファンタジー」

• 「死に戻りする少年が、絶望を繰り返しながら大切な人を守り抜くダークファンタジー」

• 「魔法の代わりに科学で戦う少年が、学園都市の闇に挑む学園バトルSF」

コンセプトセンテンスはログラインと似ていますが、ログラインが「読者に向けた売り文句」なのに対し、コンセプトセンテンスは「書き手が自分のために持つ設計の核」です。

新規コンセプトと既定コンセプト

コンセプトには2つの出発点があります。

新規コンセプト(ゼロから作る)

完全にオリジナルのアイデアから出発する場合。

「魔法が数学の方程式で表現される世界」——こうした独自のアイデアが核になります。

新規コンセプトを開発するときのコツは、「既存ジャンルの常識を一つだけひっくり返す」ことです。「魔法=神秘的」という常識を「魔法=数学」に変えるだけで、独自の世界観が生まれます。ゼロから『完全に新しいもの』を作ろうとするより、既知の要素を「一箇所だけずらす」ほうが、読者に伝わりやすく独自性も出ます。

既定コンセプト(既存作品から抽出する)

既存の作品やジャンルのコンセプトを分析し、応用・変形して使う場合。

「転スラのコンセプト=最弱→最強 × 国造り × スライム」を抽出し、「最弱→最強 × 会社経営 × ゴブリン」に変形する——これが既定コンセプトの活用です。

どちらが優れているということではありません。プロの現場では、新規コンセプト70% + 既定コンセプト30%のバランスが多いと言われています。

積極的コンセプトと消極的コンセプト

コンセプトには「入れるべきもの」と「入れてはいけないもの」があります。

積極的コンセプト(Must Have)

物語に必ず含めるべき要素

• 純愛ラブコメなら → ヒロインの可愛さ、甘い展開、ハッピーエンド

• ダークファンタジーなら → 残酷な世界、重い選択、犠牲

消極的コンセプト(Must NOT Have)

物語に絶対に入れてはいけない要素

• 純愛ラブコメなら → NTR(寝取られ)、ヒロインの死、鬱展開

• 少年漫画の王道なら → 主人公の永続的な敗北、仲間の不可逆的な裏切り

消極的コンセプトは、ジャンルの暗黙の契約と深く関わります。読者が「このジャンルでそれはやらないでしょ」と思う要素が消極的コンセプトです。

→ ジャンルと読者の期待値については → 読者の期待値を操る

4種類のコンセプト

コンセプトを深掘りする際は、4つの観点から整理すると網羅的になります。

① 世界観コンセプト

物語の雰囲気・空気感を定義する。

• 「中世ファンタジーだがテクノロジーが魔法と共存する、スチームパンク的世界」

• 「現代日本だが妖怪が日常的に存在する世界」

② 特筆コンセプト

物語のサプライズ・どんでん返し・謎・秘密に関する要素。

• 「主人公は実は敵側の人間だった」

• 「ヒロインは記憶を毎日リセットされている」

• 「黒幕は読者が最も信頼しているキャラクター」

特筆コンセプトは物語の武器です。ここが弱いと「設定は面白いけど、展開が平凡」と言われがち。

③ ストーリーコンセプト

テーマ・主張・メッセージ・ジャンル・語り口に関する要素。

• テーマ:「才能がなくても努力で届く場所がある」

• ジャンル:少年漫画的バトルもの

• 語り口:一人称、軽快な文体、RPG的な比喩を多用

④ 企画条件コンセプト

メディア・ボリューム・対象読者などの外部条件。

• カクヨムコンテスト応募:10万字以内

• なろう連載:1話3,000字、週3更新

• ライトノベル:新人賞応募、1巻完結

企画条件は創作の「制約」ですが、制約は創造力を引き出します。「10万字以内」と決まっていれば、壮大すぎる設定を自然に排除できる。

コンセプト整理シート

4種類のコンセプトを書き出すためのテンプレートです。


【コンセプト整理シート】

■ コンセプトセンテンス(100文字以内):


■ 世界観コンセプト:
• 雰囲気:
• 魔法/技術体系:
• 社会構造:

■ 特筆コンセプト:
• サプライズ/どんでん返し:
• 隠された秘密:
• 読者を驚かせるポイント:

■ ストーリーコンセプト:
• テーマ:
• ジャンル:
• 語り口:
• メッセージ:

■ 企画条件コンセプト:
• 投稿先/応募先:
• ボリューム:
• ターゲット読者:

■ 積極的コンセプト(Must Have):
1.
2.
3.

■ 消極的コンセプト(Must NOT Have):
1.
2.
3.

コンセプトからストーリーアブストラクトへ

コンセプトが固まったら、ストーリーアブストラクトを書きます。

ストーリーアブストラクトとは、物語の概要を800〜1,600字でまとめたもの。起承転結の骨格を散文で書きます。

プロットとの違いは粒度です。プロットは各シーンの詳細を書きますが、ストーリーアブストラクトは「大まかな流れ」だけ。

コンセプトセンテンス(100字)→ ストーリーアブストラクト(800〜1,600字)→ プロット(10,000字〜)と、段階的に粒度を上げていく。各段階で「コンセプトに沿っているか?」を確認します。

たとえばコンセプトセンテンスが「死に戻りする少年が、絶望を繰り返しながら大切な人を守り抜くダークファンタジー」なら、ストーリーアブストラクトは「少年が異世界に召喚され→絶望的な死を経験→死に戻りでやり直す→反復の中で仲間を得る→最大の危機で仲間を守り抜く」という流れを800字程度で書く。この時点で「ダークファンタジー」の要素が入っていなければ、コンセプトからずれているとわかります。

AIでコンセプトを網羅的に出力する

4種類のコンセプトをAIに出力させる方法が効率的です。

プロンプト例:

> 以下のコンセプトセンテンスから、4種類のコンセプト(世界観/特筆/ストーリー/企画条件)をそれぞれ3案ずつ提案してください。また、積極的コンセプトと消極的コンセプトも各3つ提案してください。
>
> コンセプトセンテンス:「〇〇〇〇」

AIの提案をすべて採用する必要はありません。「あ、この視点は重要だけど忘れていた」という気づきを得るのが目的です。

AIは特に「消極的コンセプト」の洗い出しに威力を発揮します。「このジャンルで読者が『これだけはやめて』と思う要素をリストアップして」と指示すると、自分では気づかなかった地雷が見つかることがあります。純愛ラブコメで寝取られ展開を書いてしまう——といった「ジャンルの暗黙の契約違反」は、意外と自覚なくやってしまうものです。

まとめ

コンセプトセンテンス → 100文字以下で物語の全体像を定義する

新規/既定 → ゼロから作るか、既存作品から変形するか

積極的/消極的 → 入れるべき要素と入れてはいけない要素を明確にする

4種類 → 世界観/特筆/ストーリー/企画条件の4観点で整理する

• この工程を経てからプロットに進むのがプロの手順

次に読むべき記事

• コンセプトの手前にある3つの道具 → イメージラフ・ログライン・ナラティブ

• プロットの基本 → プロットとは何か

• テーマの設計 → テーマ・キャラクター・プロットの三位一体

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