古くてダサいを回避する。若い人に嫌われない作家になろう
「Web小説を書くなら1日1万字書け」
「書籍化したければテンプレ通りに書け」
「投稿は1日2回以上」
SNSで、年に何度かこういった発言が話題になります。確固たる信念を持って後進にアドバイスする人は立派ですが、その「正解」が5年前の正解である可能性は考えたことがあるでしょうか。
この記事では、創作者が無自覚に「老害」になるメカニズムと、それを回避するための思考法をお伝えします。
「常識」には賞味期限がある
社会の常識
昭和から平成にかけて「高学歴・マイホーム・正社員・終身雇用」が人生の正解とされていました。
しかし2026年の現在、この4点セットを金科玉条としている人はどれくらいいるでしょうか。フリーランス、副業、リモートワーク、ミニマルライフ。価値観は確実に変わっています。
Web小説の常識
Web小説の世界も同じです。
• 2019年の「正解」:異世界転生・チート・ハーレム
• 2021年の「正解」:追放ざまぁ・悪役令嬢
• 2023年の「正解」:異世界恋愛・スローライフ
• 2026年の「正解」:?
流行は2年もすれば変わります。「最近のなろうは転生しかない」という感想は、ジャンプといったらドラゴンボールと言っているくらい時代が止まっています。今のなろうのランキングを開いてみてください。風景はまったく違うはずです。
クラスタの閉鎖性が「老害」を生む
エコーチェンバーの罠
SNSでは、自分と考えの近い人をフォローします。インドアの人がナンパ師をフォローすることはないし、初代ガンダム好きは初代ガンダム好きと繋がります。
その結果、クラスタ内の「常識」が固定化されます。初代ガンダムクラスタでは、最強のモビルスーツはいつまでも RX-78-2 です。νガンダムもユニコーンガンダムも存在しないかのように。
同質性の高い集団の中にいると、自分の考えが古くなっていることに気づけません。 これがエコーチェンバー(反響室)効果です。
「毎年恒例のツッコミ」に注意
SNSでは毎年、似たような論争が繰り返されます。
• 「1日何文字書くべきか」論争
• 「テンプレ作品は文学か」論争
• 「AIで書いたら作家じゃないか」論争
これらの論争自体は否定しません。しかし、自分のスタンスが3年前とまったく変わっていないなら、危険信号です。世界は変わっているのに、自分だけ止まっている可能性があります。
「そのツッコミ、まだ必要ですか?」 と自分に問いかける習慣を持ちましょう。
「古くならない作品」に共通する構造
では、何十年たっても古くならない作品には何があるのか。ひとつの答えは「複数の視点」です。
ガンダム(1979年〜)
連邦軍にも正義があり、ジオン軍にも正義がある。どちらの立場で見ても物語として成立する構造が、40年以上にわたるシリーズ展開を可能にしています。
エヴァンゲリオン(1995年〜)
シンジの正義と大人たちの正義が対立する。「いきなさいシンジくん!」と送り出しておいて、次の劇場版では「何をしてくれたんだ」と叱責する理不尽さ。どちらが正しいかは観る人の立場で変わります。
呪術廻戦(2018年〜)
呪術師と呪霊の対立だけでなく、呪術師同士の思想対立が物語を駆動します。正義の形が一つではないから、キャラクターの行動に説得力が生まれます。
複数視点が「論じ甲斐」を生む
「エヴァンゲリオン論」「ガンダム論」という言葉があります。これらの作品が研究対象になり続けるのは、単にヒットしたからだけではありません。
二つ以上の視点が組み込まれているから、時代ごとに新しい解釈が生まれる。
1995年のエヴァンゲリオンは「セカイ系の先駆け」として論じられました。2021年の完結後は「創作者の自己回復の物語」として読み直されています。同じ作品でも、見る人と時代の組み合わせで意味が変わる。これが「古くならない」の正体です。
創作者が実践すべき3つの習慣
1. 自分と正反対の意見を月1回読む
Xのタイムラインだけでなく、自分と異なる考えの人のブログや記事を意識的に読みましょう。
「なろう系は文学ではない」と思っている人は、なろう系を肯定する記事を読む。「AIは創作の敵だ」と思っている人は、AI活用を推進する人の論を読む。
賛同する必要はありません。「こういう考え方もあるのか」と知るだけで、思考の硬直化を防げます。
2. 作品に「対立する正義」を入れる
主人公の正義だけでなく、敵にも敵の正義を持たせる。これだけで作品の寿命は格段に延びます。
50年後の読者が、主人公側を支持するか敵側を支持するかは、その時代の価値観次第です。どちらからでも読める構造にしておけば、作品は時代を超えます。
3. 「自分の常識テスト」を年に一度やる
以下の質問に答えてみてください。
• 今年読んだ作品で「自分には書けない」と思ったものはあるか?
• 今年のなろうランキング上位10作品のうち、5作品は読んだか?
• 3年前と自分の持論が何か変わったか?
すべて「No」なら、常識がアップデートされていない可能性があります。
「アップデート」と「ブレる」の違い
ここまで読んで「でも自分のスタイルを変えたらブレてしまうのでは?」と心配する方もいるでしょう。
大事なのは、核(コア)は変えず、表現は更新することです。
• 「面白い物語を書きたい」→ コア(不変)
• 「異世界転生が面白い」→ 表現(可変)
コアがブレなければ、表現をいくら更新してもスタイルは崩れません。むしろ、表現を固定してしまうと、読者が離れていきます。
まとめ
| 教訓 | 実践 |
|---|---|
| 常識には賞味期限がある | 「正解」を疑う習慣を持つ |
| エコーチェンバーが老害を生む | クラスタ外の意見を意識的に読む |
| 古くならない作品は複数の正義を持つ | 敵にも敵の正義を持たせる |
| アップデートとブレるは違う | コアは守り、表現は更新する |
「古くてダサい」と若い世代から思われるのは、年齢のせいではありません。思考を固定してしまった結果です。
常にアンテナを張り、自分の「当たり前」を疑い続ける人は、何歳になっても新鮮な物語を書けます。
さて、今日も物語を書きましょう。腰は壊しても、筆は折らない。
腰ボロ作家