セリフで説明はNG?|説明台詞を避ける3つの方法と「あえて使う」技術
「お前は俺の幼なじみで、10年前に引っ越してきたんだよな」。
こんなセリフを読んだら、あなたはどう思いますか。「そんなこと当人同士が改めて確認するわけないだろう」と違和感を覚えるはずです。これが「説明台詞」の典型です。
説明台詞とは、本来キャラクターが知っているはずの情報を、読者に伝えるためだけに口にするセリフのこと。キャラクターの口を借りて、作者が読者に直接話しかけているような不自然さを生みます。
この記事では、説明台詞を避ける3つの方法と、「あえて説明台詞を使う」上級テクニックを解説します。
なぜ説明台詞はNGなのか
1. キャラクターの自律性が壊れる
キャラクターは、自分の文脈の中で自然に言葉を発する存在です。しかし説明台詞を吐いた瞬間、キャラクターは「作者の操り人形」に戻ってしまいます。読者は無意識にこの不自然さを感じ取り、物語への没入が途切れます。
2. テンポが悪くなる
説明台詞は基本的に長い。キャラクターの行動や物語の進行を止めて、情報を口頭で並べるからです。読者はセリフに「テンポの良さ」を期待しているため(会話はテンポが命も参照)、長い説明台詞は読みのリズムを壊します。
3. 「見せず に語る」の典型
創作の鉄則「Show, don’t tell」(語るな、見せろ)。説明台詞は、まさに「Tell(語る)」そのものです。情報は、キャラクターの行動や場面描写で「見せる」ほうが読者の印象に残ります。
説明台詞を避ける3つの方法
方法1:セリフに頼らず描写で伝える
最もシンプルな解決策です。キャラクターに言わせるのではなく、地の文や行動描写で情報を伝えます。
NG例(説明台詞):
「この国は100年前に戦争があって、それ以来人口が半分になったんだ」
OK例(描写で伝える):
街を歩けば、廃墟がいくつも目に入る。かつては人で溢れていたであろう広場に、雑草が伸び放題だった。
後者は、同じ情報(戦争後の人口減少)を描写で伝えています。数字こそ明示していませんが、読者は「この国では何かが起きた」と理解し、さらに知りたいという好奇心が生まれます。
方法2:「知らない人」を配置する
情報を受け取るキャラクターを設計することで、説明が自然になります。
「転校生」「異世界から来た勇者」「新人社員」など、その世界のルールを知らない人物がいれば、他のキャラクターが説明するのは自然です。なぜなら「知らない人に教える」行為は日常的に存在するからです。
自然な説明:
「あんた、この街は初めてだね。北区には絶対に近づくな。あそこは5年前に魔物が巣食ってから、住人は誰もいない」
これは「知らない相手に警告する」という自然な文脈があるため、説明台詞には聞こえません。
多くの名作が「無知な主人公」を採用するのは、この技法のためでもあります。『ハリー・ポッター』のハリーは魔法界を知らない。だからハグリッドやハーマイオニーが世界のルールを自然に説明できるのです。
方法3:説明しない
そもそも「その情報を今すぐ伝える必要があるか?」を問い直してください。
読者はすべてを理解しなくても物語を楽しめます。むしろ「分からないこと」が好奇心を生み、ページをめくる原動力になります。
たとえばファンタジー小説の冒頭で魔法体系の全容を説明する必要はありません。キャラクターが魔法を使うシーンを見せるだけで、読者は「この世界には魔法がある」と理解します。体系的な説明は、物語の展開上それが必要なタイミングまで引き延ばせばいい。
「あえて使う」説明台詞の上級テクニック
ここからが本記事の核心です。説明台詞は避けるべきものですが、「100%NG」ではありません。プロの作家は、あえて説明台詞を使って効果を出す場面があります。
テクニック1:キャラクターの職業・立場を利用する
教師 が生徒に歴史を教える。医者 が患者に病状を説明する。探偵 が推理を披露する。
これらはすべて「説明すること自体がそのキャラクターの役割」だから自然です。シャーロック・ホームズの推理説明が説明台詞に感じないのは、推理を語ることが探偵の本質的行為だからです。
テクニック2:説明に感情を乗せる
単なる情報伝達ではなく、キャラクターの感情が語りに乗っている場合、説明台詞は「独白」や「告白」に昇華します。
情報だけの説明台詞:
「この村は10年前に流行病で滅びたんだ」
感情が乗った説明:
「10年だぞ。10年経っても、夜になると聞こえるんだ。あいつらの……咳をする声が」
後者は同じ情報を伝えつつ、語り手のトラウマを描いています。読者は情報と同時に「この人物の過去」を受け取ります。
テクニック3:嘘やミスリードとして使う
キャラクターが嘘をついている場合、その説明台詞はむしろ物語を推進します。
「この国は平和だ。戦争なんて100年起きていない」
読者がこの発言を信じた後で、真実が明かされたときのインパクトは絶大です。ミステリーでは探偵の「間違った推理」として、意図的に説明台詞を配置する手法もあります。
テクニック4:膨大な情報を圧縮する
Web小説や長編シリーズでは、前巻までのあらすじを作中で自然に振り返る必要があります。キャラクターが状況を整理するために口にする説明は、読者にとっても「思い出し」の機能を果たします。
ただし、この場合も「整理すること自体に目的がある場面」を作ることがコツです。会議シーン、作戦確認、報告など、「情報をまとめる行為」が自然な状況に配置してください。
2025年のラノベ・Web小説に見る説明台詞の処理
近年のヒット作では、説明台詞の処理が巧妙になっています。
パターン1:ステータス画面
異世界転生ものでは「ステータス画面」が表示されることで、キャラクターが口頭で説明する必要がなくなります。情報をUI的に提示する手法で、Web小説独自の進化形です。
パターン2:内政チート解説
「俺の前世の知識を使おう」と前世を持つ主人公が知識を語る形式。説明台詞ではあるが、「前世の記憶を持つ人間」という設定上、知識を語ること自体が能力の発揮として自然になっています。
パターン3:AIキャラクター
AI・ナビゲーション系キャラクター(ゲーム的なガイド役)が解説するパターン。このキャラクターの存在理由が「説明すること」なので、説明台詞の不自然さが消えます。
「この説明台詞、大丈夫?」判断基準チェックリスト
以下の質問にすべて「はい」と答えられるなら、その説明台詞は使ってOKです。
1. そのキャラクターがその場面で言う理由があるか? → 知らない人に教える、報告する、警告する等の文脈
2. キャラクター自身の感情や意図が反映されているか? → 単なる情報羅列ではなく、語り方にキャラが出ている
3. 地の文や描写で代替できないか? → セリフでなければ伝わらない理由がある
4. 読者にとって「今」知る必要がある情報か? → 後で自然に分かる情報なら、今は省ける
この記事のまとめ
| 手法 | 内容 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 描写で伝える | セリフではなく行動や風景で | 世界観の提示 |
| 知らない人を配置 | 転校生・新人で質問を自然に | 序盤の情報整理 |
| 説明しない | 読者の好奇心に委ねる | 冒頭、謎の提示 |
| 職業・立場を活用 | 教師・探偵・AIキャラ | 専門知識の解説 |
| 感情を乗せる | 告白・独白に昇華 | 過去のトラウマ等 |
| 嘘・ミスリード | 読者を誘導する | ミステリー展開 |
説明台詞は「悪」ではありません。悪いのは「キャラクターの口を借りた作者の独り言」です。キャラクターが自分の意志でその言葉を発しているか。この基準を常に意識してください。
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