読者の声を真に受けては失敗する!?《サラダマックの失敗に学ぶ》
小説家にとってのお客様は読者です。そんな読者に読んでもらえる小説を書きたいと願うあなたへ。読者に読んでもらえる小説を書くためのヒントを紹介します。
この記事では、マクドナルドの大失敗「サラダマック」を取りあげます。「お客様の意見」と「本音」は違う!?という話につながります。
熱心にお客様の声に耳を傾けるあなたは、少し肩の力を抜いても、いいかもしれませんよ。
サラダマックの失敗
マクドナルドの「サラダマック」は2006年5月に登場した商品です。
当時のプレスリリースには「体によいことをムリせず楽しく続け、バランスのいい生活を応援するマクドナルドからの新しい提案として、野菜と果物を使ったカラダにやさしい5種類の新メニュー『サラダマック』を、2006年5月13日(土)から全国のマクドナルドで発売いたします」と記載されていました。
この「サラダマック」はお客様の声を聞く調査から生まれました。
「ヘルシーなサラダが食べたい」
「ダイエットしているからマクドナルドに行かない」
「栄養が偏るのが嫌だ」
そのような意見を聞いた商品開発のメンバーは、ヘルシーで栄養豊富なサラダ「サラダマック」を開発しました。
ですが、サラダマックはほとんど売れず、すぐに販売終了します。
「サラダが食べたい」と言ったのは「お客様」だったはず。なのに、なぜ「お客様」は買ってくれなかったのでしょう。
データはウソをつく
失敗の原因は、お客様の「ヘルシーで健康的なものが食べたい」という声を真に受けたからです。
つまり消費者は本音を話していなかった。
その証拠として、マクドナルドは2008年にクォーターパウンダーを発売し、大ヒットしました。お客様はマクドナルドに「脂っこくて味が濃い、不健康そのものだが、思わずかぶりつきたくなるハンバーガー」を求めていたのですね。
もちろん調査結果として集めたデータは事実です。
ですが人間を相手にデータを収集するなら、そのデータが本音かどうかを疑ってみることが必要です。
自分を良く見せたいという願望が働いて、「キレイなウソ」をついていないか? マクドナルドの例でいえば、ダイエットブームに乗って建前を言っているだとか、マクドナルドに行かないもっともらしい理由を話していないかとか、ですね。
このように、人間の意見には「キレイなウソ」があるという事例を元に、洞察を重ねてお客様の本心にたどり着く必要があります。
小説家になろうに対する読者の意見はホント?
このサラダマックの事例のように、小説家になろうでも読者の声が「キレイなウソをついている」ケースがあると思いませんか?
例えば
「悪役令嬢、乙女ゲーム、婚約破棄、ざまぁ、もう遅い、寝取られ、逆ハーレム、成り上がり、ハッピーエンドは見飽きたよ」
「長文説明型タイトルは読む気をなくす」
「文の決まり事を守って欲しい」
「面白い小説を書いてくれたら読む」
「概要でネタバレするのをやめてほしい」
「100話とかあると読み始めるのに抵抗がある」
「文学的な作品が読みたい」
「もっとリアルな作品が読みたい」
こういった意見は本当に読者の本音でしょうか?一度疑ってみることも、肝心です。
でも実際ランキング上位の作品はつまらないし……みんな言っているし……そう感じるのは、実は流行っている作品が嫌いな自分自身かもしれません。自分自身が「上位の作品がつまらない」と考えていると、データのウソを見破れなくなります。
読者がランキング上位の作品がつまらないというのは、ランキング上位の作品でお腹いっぱいになっている最中だからで、次の日になったら、流行りのジャンルをまた読みたいのかもしれません。
なんなら、ランキング上位が上品な作品ばかりになってきたな、もっと欲望に忠実な作品はないのか?と感じているかもしれません。
思わず評価ポイントを入れたくなるような、願望を充足してくれる作品を探しているかもしれません。
人の欲望は理性を超越する
私などは知的で理性的な作品を読みたいと言います。ですが、それは知的で理性的な作品を書く読む自分が誇らしいのかもしれません。
もしあなたが知的で理性的で、教養深く、自分の人生を長い目で考えられる人ならば、私の作品を読んでみてください。読んだことがステータスになる作品になっています。
ですが理性的なだけでは息苦しくなります。時には欲望に忠実な作品が読みたい!(というより現実が理性的で息苦しい社会だから欲望まみれの本が読みたい!)
そのほうが本音でしょうか。
多くの人の本音に手を差し伸べると、たくさんの人に本を読んでもらうことができます。例えば人が興味を持たずにはいられない10のキーワードを取り入れて、人の欲望をキャッチする作品を書いてみると良いでしょう。
私も氷の国の英雄という作品で、10のキーワードを入れた作品を書きました。驚くほど売れました。
読者は書き手が思うよりも疲れていて、煩悩や欲望に忠実な作品を。それこそマクドナルドのクォーターパウンダーのように、「脂っこくて味が濃い、不健康そのものだが、思わずかぶりつきたくなるハンバーガー」のような作品を求めているかもしれませんよ。
以上、お客様の声を真に受けては失敗するというお話でした。本音の要望とウソの要望を見抜いて、お客様の声を改善につなげられると良いですね。
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