詩人ホラティウスの『詩論』から学ぶ「売れる」小説に必要なものとは?
「物語を面白くするもの」が1つあるとしたら、それは何だと思いますか?クィントゥス・ホラティウス・フラックスという古代ローマ時代の南イタリア人の詩人の論文『詩論』をもとに考えていきます。
ちなみに哲学者アリストテレスは「それはプロット」だといっています。ホラティウスはそれとは真逆の意見であるとして、2人はよく対照として挙げられます。「プロット」の反対とは?ホラティウスの考える「物語を面白くするもの」とは?では「売れる」小説とは?早速みていきましょう。
面白くするのは、「キャラ立ち」である
ホラティウスはこんな事をいっています。形式にはとらわれず、人生を感じたままに「ふさわしい(デコールム)形」で共有すべきであると。
この「ふさわしい(デコールム)形」とは、「キャラクターの造形」を指します。物語の中では、「キャラクタ―」が読者に語りかける役を担うためです。人生を感じたままに語るキャラクタ―自身の印象を強化すること、つまり「キャラ立ち」が大切だといういうわけです。
なぜ「キャラ立ち」が物語を面白くするのか?
ホラティウスは、読者を楽しませながら「快と益」が揃っているものが万人の票を獲得する、とにかく読者に受けることが一番であると考えました。
また読者にとっての「快と益」が揃うのは、「ふさわしい形」つまり「キャラクター」が自由に表現し動くことが大切であると考えたわけです。そして、キャラクターを立てるためには、普段から人間観察をしっかり行うことであるともいっています。読者に受けるためには、とにかく読者(人間)を知るということなのかもしれません。
ホラティウスとアリストテレスの違い
ホラティウスとアリストテレスの決定的な違いは、ホラティウスが「感情的」とすれば、アリストテレスは「理論的」なことが物語を面白くすると語っているところではないでしょうか。
もう少し簡単にいうと、ホラティウスが「面白いものができたぞ!あの人にどうやって伝えたらこの良さが伝わるだろう?」と考えたとするならば、アリストテレスが「この物語の『仕組み』は最高に面白い出来だ!これはいい評価が得られる!」 といった感じです。
売れるのは、「読者優先」or「仕組み優先」?
では、これを現代にあてはめて「売れる物語」と考えてみるとどうでしょうか?Twitter・インスタグラム・YoutubeなどのSNSが流行るこの世の中を鑑みると、筆者はやはり「読者」ありきのホラティウスの方に軍配が上がるのかなと考えています。
この時代の流れが早い現代においては、読者が物語(小説)の仕組みを知るほどじっくり読み込むことはどんどん難しくなっています。「売れる小説」という目線で考えると、いかに読者に小説を手にしてもらえるか、いかに読者を惹きつけるか?が大切であり、「つかむ」力のある「キャラ立ち」優先という発想は正しいのかもしれません。
ただ一つ注意しなければいけないのは、今はSNSのインフルエンサーなどによって「嘘が暴かれる時代」だということです。いくらキャラ立ちに成功したとしても中の仕組みがしっかりできていなければ、結局「面白くない」と判断され、その情報を流布されてしまいます。
ホラティスの「キャラ立ち」を優先しつつ、アリストテレスの「プロット(仕組み)」も同時に固めていくというのが一番長く売れるためのコツではないかと筆者は考えます。
まとめ
ホラティウスは、物語を面白くするのは「キャラ立ち」であると考えました。読者に受けることをとにかく一番と考え、読者の「快と益」が揃うのは「ふさわしい形」つまりキャラクターが自由に表現し動くことであるとしたからです。
筆者は、このホラティウスの「読者」優先思考でまずは読者の気持ちを掴み、それと同時にアリストテレスの「プロット(仕組み)」を固めていくというのが、現代においては最良の「売れる方法」だと考えます。ぜひ小説家のみなさん、古代哲学者の教えを参考に執筆してみてくださいね。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません