文調とは?|です・ます調とだ・である調の違い&選び方を例文で解説
「です・ます調」と「だ・である調」——日本語を書く人なら誰もが選択を迫られる、最も基本的でありながら最も深い問題です。
「どっちで書けばいいの?」という疑問に対して、この記事では3種類の文調の特徴と使い分けを解説します。
文調とは何か
文調(ぶんちょう)とは、文末の表現パターンによって決まる文章全体の「調子」のことです。文体の一部であり、読者が最初に受ける印象を大きく左右します。
日本語の文調は大きく3種類に分けられます。
1. です・ます調(敬体)
文末が「です」「ます」「でしょう」「ません」で終わる文調です。
> 今日の天気は晴れです。公園にはたくさんの人がいます。桜はまだ咲いていませんが、来週には開花するでしょう。
特徴
• 丁寧で柔らかい印象を与える
• 読者との間に適度な距離感を保つ
• 語りかけるような親しみがある
向いているもの
• ブログ記事、ビジネス文書、解説記事
• 一人称が「僕」「私」の小説
• 読者に語りかけるスタイルのエッセイ
注意点:単調さとの戦い
です・ます調の最大の弱点は、文末が「〜ます。〜です。〜ます。」と連続して単調になりやすいことです。
❌(単調な例)
> 空は青いです。風は穏やかです。鳥が飛んでいます。花が咲いています。
⭕(変化をつけた例)
> 空は澄んだ青でした。穏やかな風が吹いています。鳥のさえずりが聞こえ、足元には小さな花が揺れていました。
体言止め(「〜青でした」→「澄んだ青」)、連用中止法(「聞こえ、」)、過去形と現在形の混合——こうしたテクニックで、です・ます調でも単調さを回避できます。
2. だ・である調(常体)
文末が「だ」「である」「だった」「ない」で終わる文調です。
> 今日の天気は晴れだ。公園にはたくさんの人がいる。桜はまだ咲いていないが、来週には開花するだろう。
特徴
• 断定的で力強い印象を与える
• 読者との距離が近く、臨場感がある
• テンポが速く、アクションシーンに向く
向いているもの
• 小説全般(特にアクション、ダークファンタジー、ハードボイルド)
• 論文、レポート、新聞記事
• 一人称が「俺」「私(わたし)」の物語
です・ます調との比較:同じシーンの印象差
です・ます調
> 男は走っています。息は上がっていますが、足を止めるわけにはいきません。
だ・である調
> 男は走っている。息が上がる。足を止めるわけにはいかない。
同じ内容でも、だ・である調のほうが時間が速く流れている印象になります。アクションシーンや緊迫した場面では、この「速さ」が武器になります。
3. 否なのだ・である調(混合体)
文末に「〜なのだ」「〜なのである」「〜のだった」を多用する文調です。
厳密には「だ・である調」の変種ですが、独特の回顧的・内省的な響きがあるため、別に分類するほうが実用的です。
> あの日、空は恐ろしいほど青かったのだ。私はベンチに座ったまま、何もできなかったのである。
特徴
• 過去を振り返る語り口として自然
• 文学的・哲学的な雰囲気が出る
• 「〜のだ」は筆者の確信や気づきを暗示する
向いているもの
• エッセイ、回想録、私小説
• 太宰治、坂口安吾のような文学的作品
• 「語り部」が物語を振り返るスタイル
太宰治の『人間失格』がまさにこの文調の代表例です。「自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです。」——ここでは「です」が入っていますが、「〜のです」という構造は「否なのだ・である調」の敬体バリエーションです。
どの文調を選ぶべきか?——3つの判断基準
基準① 読者との距離感
• 丁寧に語りかけたい → です・ます調
• 読者を物語に引き込みたい → だ・である調
• 読者に「考えさせたい」 → 否なのだ・である調
基準② 作品のジャンルとテンポ
• ブログ・解説・日常系 → です・ます調
• アクション・ミステリー・ダークファンタジー → だ・である調
• 文学・エッセイ・回想 → 否なのだ・である調
基準③ 主人公の一人称との相性
一人称と文調の組み合わせは、キャラクターの印象を決定づけます。
• 「僕」× です・ます調 → 丁寧で内向的な青年
• 「俺」× だ・である調 → 男っぽく直情的
• 「私」× 否なのだ・である調 → 知的で回顧的
• 「俺」× です・ます調 → ちょっと不思議な違和感(あえて狙うのもあり)
口語と文語——もう一つの軸
文調とは別に、口語(話し言葉)と文語(書き言葉)の使い分けも意識すると、表現の幅が広がります。
| 口語 | 文語 | |
|---|---|---|
| 例 | やっぱり → やはり | いっぱい → 多数 |
| 印象 | 親しみやすい | 格調高い |
| 用途 | セリフ、ラノベ | 地の文、文学 |
特にラノベでは、地の文でも口語寄りに書くことが一般的です。しかし、口語に偏りすぎると軽薄な印象になるため、要所で文語を混ぜるとメリハリが出ます。
> 口語寄り:「まあ、やっぱりそうなるよね」と彼は笑った。
> 文語寄り:「やはり、そうなるか」と彼は苦笑した。
同じシーンでも、言葉選びでキャラクターの知性や年齢が変わって見えます。
一つの作品内で文調を混ぜてもいいのか
結論から言えば、混ぜてもいいです。ただし、ルールを決めて混ぜてください。
たとえば:
• 地の文はだ・である調、会話文はです・ます調 (→ 自然な使い分け)
• 通常シーンはです・ます調、回想シーンは否なのだ・である調 (→ 時制で文調を変える)
• 1章はです・ます調、2章はだ・である調 (→ 視点キャラクターが変わる場合)
無秩序に混ぜると読者は混乱しますが、「なぜ変えたか」を読者が自然に理解できるなら、文調の切り替えは強力な演出になります。
まとめ——文調は読者の入口
3種類の文調を改めてまとめます。
1. です・ます調 → 丁寧・語りかけ・ブログや日常系
2. だ・である調 → 断定・臨場感・アクションやミステリー
3. 否なのだ・である調 → 回顧・内省・文学やエッセイ
文調は、読者が作品に触れた瞬間に受ける「第一印象」です。物語の内容に合った文調を選ぶことで、読者はスムーズに物語に入り込むことができます。迷ったら、まず自分の作品を一段落だけ3種類の文調で書き比べてみてください。しっくりくるものが見つかるはずです。
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