文章構造の3つのポイント|ドラゴン桜2に学ぶ「同等・対比・因果」で書く技術
「面白いストーリーは思いつくのに、文章にすると読みにくいと言われる」——そんな悩みの原因は、おそらく文章構造にあります。
漫画『ドラゴン桜2』(三田紀房)で太宰府先生が語る文章構造の3つのポイントは、受験テクニックの枠を超えて、小説や創作にも大いに役立つ考え方です。この記事では、その3つのポイントを創作視点で掘り下げます。
文章構造を成り立たせる3つの関係
太宰府先生が示す文章の3つの関係とは、以下のとおりです。
1. 同等関係 ——「つまり」で言い換える
2. 対比関係 ——「しかし」で際立たせる
3. 因果関係 ——「だから」で繋げる
どんな名文も、この3つの関係の組み合わせで構成されています。一つずつ見ていきましょう。
1. 同等関係——抽象と具体を行き来する
同等関係とは、同じことを違う表現で言い換える関係です。「つまり」「たとえば」「要するに」で接続できる文同士のことです。
同等関係には2つの方向があります。
• 具体化 (抽象→具体)= “たとえば" で説明を降ろす
• 抽象化 (具体→抽象)= “つまり" でまとめ上げる
創作に活かす:描写と説明の行き来
小説では、この「具体化」と「抽象化」がそのまま「描写」と「説明」に対応します。
❌(抽象だけ=説明だけ)
> 彼女は悲しかった。辛い経験をしたのだ。
⭕(抽象→具体→抽象のサンドイッチ)
> 彼女は泣いていた。涙を拭おうともせず、握りしめた切符がくしゃくしゃになっている。もう戻れないことが、その手の中にあった。
最初の「泣いていた」は抽象的な状況提示。「切符がくしゃくしゃ」は具体描写。最後の一文は再び抽象化して感情のまとめに入っています。
具体だけでも読者は迷子になり、抽象だけでも心に響きません。この2つを行き来することが、読みやすくて心に残る文章の秘訣です。
2. 対比関係——「しかし」で際立たせる
対比関係とは、相反するものを並べて、両方の特徴を際立たせる関係です。
「しかし」「一方で」「〜に対して」で接続できる文同士のことです。
創作に活かす:キャラクター配置の基本
対比関係は、そのままキャラクター配置の原則になります。
たとえば『HUNTER×HUNTER』のゴンとキルア。ゴンは純粋で猪突猛進、キルアは冷静で暗殺者の家系。性格も背景もまったく正反対の2人を組み合わせることで、互いの魅力が何倍にも引き立っています。
これをもう少し分解すると、以下のように対比構造が見えてきます。
• 明るい vs 暗い (性格)
• 一般家庭 vs 暗殺一家 (背景)
• 情に厚い vs 合理的 (判断基準)
❌(対比がない)
> 主人公は強くて優しい。仲間も強くて優しい。
物語が平坦になります。全員が同じ方向を向いていると、読者に退屈を感じさせてしまいます。
⭕(対比がある)
> 主人公は正義を信じて疑わない。相棒は「正義なんて立場で変わる」と嘯く。
たった2行でも、このほうが「先が読みたい」と思いませんか。対比はそれだけで物語を動かすエンジンになります。
対比で「テーマ」を語る
さらに、対比はテーマの表現にも直結します。
たとえば「正義とは何か」というテーマを表現したい場合、正義を語るのではなく、正義と正義をぶつけるほうが伝わります。
> 「犯罪者でも更生の機会はある」と語る弁護士と、「被害者の苦しみは消えない」と語る遺族。
どちらかが正しいとは簡単に言えない——その緊張感こそが、テーマの深みです。
3. 因果関係——「だから」で繋げる
因果関係とは、原因と結果で繋がっている関係です。「だから」「そのため」「なぜなら」で接続できる文同士のことです。
創作に活かす:ストーリーの背骨を作る
因果関係は、物語のプロット(筋書き)そのものです。
「AだからBが起こり、BだからCに至る」——この連鎖がストーリーの背骨になります。
E.M.フォースターの有名な区別を引用しましょう。
• 「王が死んだ。それから王妃が死んだ」 → ストーリー(時系列の羅列)
• 「王が死んだ。悲しみのあまり王妃が死んだ」 → プロット(因果の連鎖)
たった一言「悲しみのあまり」を加えるだけで、2つの出来事に因果関係が生まれ、読者は「なぜ?」「そうだったのか」という理解と感情移入を得ます。
因果の見せ方——順行と逆行
因果関係は、見せる順番によって効果が変わります。
順行(原因→結果): 読者と一緒に体験していく感覚
> 彼は3年間毎日練習を続けた。全国大会で優勝した。
逆行(結果→原因): 読者の「なぜ?」を引き出す
> 全国大会で優勝した彼の手のひらには、タコとアカギレの跡があった。
逆行のほうがミステリアスで、読者を引き込む力があります。これは推理小説の「結果(事件)→原因(動機)」の構造そのものです。
3つの関係を組み合わせて書く
実は、3つの関係は単独で使うものではありません。優れた文章はこれらを自然に組み合わせています。
たとえば、あるキャラクターの紹介文を3つの関係で構成してみましょう。
> 田中は言葉が少ない男だった。(抽象:同等関係の起点)
> 会議で発言するのは最後の最後、それもたった一言。(具体化:同等関係)
> しかし、その一言で会議室の空気が一変する。(対比関係)
> 10年間、現場の最前線で培った観察眼があるからだ。(因果関係)
4文で、同等→対比→因果が自然に流れています。この構造を意識するだけで、紹介文でも設定説明でも、格段に読みやすくなります。
まとめ——構造を意識すると「伝わる」文章になる
文章構造の3つの関係を改めてまとめます。
1. 同等関係 (つまり)→ 創作では「描写と説明の行き来」
2. 対比関係 (しかし)→ 創作では「キャラクター配置とテーマ」
3. 因果関係 (だから)→ 創作では「プロットの背骨」
「なんだか読みにくい」と感じたら、自分の文章にこの3つの関係が入っているか確認してみてください。3つがバランスよく含まれている文章は、自然と「わかりやすい」し「面白い」。
ドラゴン桜2は受験漫画ですが、太宰府先生のこの教えは、物語を書くすべての人にとっても武器になります。
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