小説の「使ってはいけない言葉」を整理する|出版NG用語と表現力の両立【2025年最新事情】

2023年9月12日

こんにちは。腰ボロSEです。

「え、この言葉って使えないの?」。小説を書いていて、出版やコミカライズの段階で初めてNGワードの存在を知った——そんな経験はありませんか。

2025年、表現規制をめぐる状況は大きく動いています。作家のSNS発言が原因で新刊が発売中止になる事件、国連の新サイバー犯罪条約で小説の性描写まで規制対象になりかねない議論、クレジットカード会社経由の検閲圧力。もはや「出版社のNG用語リスト」だけ知っていれば大丈夫という時代ではなくなりました。

私は15年以上IT業界でドキュメントを書き、ブログで550本以上の記事を書いてきました。その経験から言えるのは、言葉の制限は不自由ではなく表現力を鍛えるチャンスだということです。この記事では、最新の規制動向を踏まえつつ、制限の中で強い文章を書くための考え方を共有します。


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出版業界で避けるべき言葉の分類

まず、出版社が避けるよう指示する言葉にはいくつかのカテゴリがあります。

カテゴリ具体例理由
精神疾患・障害の蔑称「サイコパス」「メンヘラ」病名への偏見を助長する
差別に通じる歴史用語「奴隷」(文脈による)差別の歴史と直結するため慎重扱い
職業蔑称「◯◯屋」(魚屋、床屋等)職業を見下す表現とみなされる
狂気・暴力の直接表現「狂う」「狂気」アニメ化・コミカライズ時に特に厳格
容姿への侮蔑「ブス」「チー牛」等人格攻撃につながりやすい

漫画家の氷川へきるさんが「狂う」「狂気」すらNGになっている現場事情を公開して話題になりました。ここで重要なのは、NG基準は出版社ごとに異なるという点です。KADOKAWAや講談社は比較的厳格とされる一方、基準が緩めの出版社もあります。統一ルールは存在しません。

さらに、メディアミックスの段階で規制が追加されるケースもあります。Web小説ではOKだった表現が、コミカライズで修正を求められ、アニメ化でさらに制限される。いわば「メディアが変わるたびにフィルターが一枚ずつ増える」構造です。

ポイントは、NG用語は「その言葉の存在自体がダメ」なのではなく、「誰かを貶める文脈で使うことがダメ」だという点にあります。歴史的事実として「奴隷制度」を説明する文脈と、キャラクターを侮辱するために使う文脈では、まったく意味が変わるのです。


2025年、規制の波は国境を超えた

出版NG用語の話をする前に、まず2025年の最新動向を押さえておきましょう。表現規制は「出版社の校閲ルール」という枠を大きく超え始めています。

作家のSNS発言で新刊中止——木古おうみ事件

2025年7月、小説家・木古おうみ氏がSNS上で障害者への差別発言を行い、大炎上しました。結果として、複数の出版社が予定していた新刊の発売を中止・延期。出版社のWebサイトから書籍ページが削除されるという事態に至っています。

この事件で浮き彫りになったのは、作品の中の言葉だけでなく、作家個人のSNS発言も出版判断に直結する時代になったという現実です。KADOKAWAは近年「炎上リスクがある案件はサクッと切り捨てる」傾向が指摘されており、作家にとってSNSは作品の延長線上にある表現空間だと認識する必要があります。

小説の性描写も規制対象に?——新サイバー犯罪条約

2024年12月、国連総会で新サイバー犯罪条約(ハノイ条約)が採択されました。この条約では、架空の創作物に含まれる性描写も規制対象になりうるとされています。

小説家で医師の知念実希人氏は「川端康成、村上春樹、三島由紀夫の作品も規制される可能性がある」「文学の危機だと思っている」と警鐘を鳴らしました。これに対して「性行為のシーンだけなくして出版し直せばいい」という意見がSNSで投稿され、知念氏は「『海辺のカフカ』がそのようなシーンを排除して成り立つとでも?」と反論。この議論だけで1万2千を超える反響がありました。

2025年10月のハノイ署名式で日本は署名を見送りましたが、今後1年間は署名可能な状態が続いています。仮に留保なしで批准されれば、日本の文芸作品にも影響が及ぶ可能性は否定できません。

クレジットカード会社が「検閲者」になる時代

もうひとつ、創作者が知っておくべき動きがあります。近年、クレジットカード会社が決済規約を通じて表現規制を行う「クレカ検閲」が国際的に問題視されています。

2025年7月、オーストラリアの反ポルノ団体がクレジットカード会社に圧力をかけ、Steamから複数の成人向けゲームが削除されました。日本でも精神疾患関連の表現に対してクレカ会社からの規制圧力があるとされています。出版社ではなく、決済インフラを握る企業が「何を書いてよいか」に介入する構造が生まれつつあるのです。


「使えない言葉」が表現力を鍛える理由

規制の現状を知った上で、ここからは実践的な話をします。もし「狂った敵キャラ」を「狂気」という言葉を使わずに描くとしたら、あなたならどう書きますか。

実は、これこそが表現力の訓練です。

『進撃の巨人』のエレン・イェーガーは、物語終盤で極端な行動に走ります。しかし諫山創は、エレンを「狂った」とは描いていません。彼の行動の一つひとつに理由を与え、読者が「理解はできるけれど賛成はできない」と感じる絶妙なラインを維持しました。結果として、エレンは「狂人」よりもはるかに恐ろしく、そして切ないキャラクターになっています。

『DEATH NOTE』の夜神月も同様です。直接「狂っている」と書かれるシーンはほとんどありません。代わりに、彼の合理的な思考がどこまでも冷徹に進んでいく様子を描くことで、読者に「この人、怖い」と感じさせています。

つまり、強い言葉に頼らないほうが、かえって強い印象を残せるのです。

制約を武器にする3つのアプローチ

アプローチ方法効果
行動で見せる直接的な形容詞を使わず、キャラの行動で異常性を表現する読者が自分で「怖い」と感じる
周囲の反応で見せる周りのキャラの戸惑いや恐怖を描く間接的に強度が伝わる
対比で見せる普段の穏やかさと、特定場面での冷酷さのギャップ落差がインパクトを生む

ITの世界にも似た話があります。セキュリティの制約が厳しいシステムほど、エンジニアは工夫を凝らして美しい設計を生み出します。制約は敵ではなく、創造力の触媒なのです。


差別用語と「強い言葉」の誘惑

正直に書きます。私自身、Web小説を書いていた頃は「出版禁止用語がなんだ。伝えたいことを伝えるためにはこの言葉が必要なんだ」と思っていました。

強い言葉は、たしかにインパクトがあります。SNSでも、刺激的な言葉を使った投稿ほどバズりやすい。しかし、それは瞬間的な注目であって、長期的な信頼ではありません。木古おうみ事件が示したように、SNSでの不用意な発言一つで、積み上げてきた商業作家としてのキャリアが崩壊するリスクがあります。

では、小説家にとっての正しいスタンスは何か。私はこう考えています。

人物を描くために必要な言葉と、読者にショックを与えるために使う言葉を区別すること。

前者は文脈と配慮があれば使える場合もあります。後者は、使わないほうが作品の品質が上がるケースがほとんどです。


あなたの物語で使えるチェックポイント

自分の原稿を見直すとき、こんなチェックリストを使ってみてはいかがでしょうか。

• その言葉を削除しても、シーンの意味は伝わるか? → 伝わるなら、削除したほうが文章が締まる

• その言葉を使わずに、同じ感情を別の描写で表現できるか? → できるなら、そちらを試す

• その言葉を使うことで、特定の属性の読者が傷つく可能性はないか? → あるなら、言い換えを検討する

• SNSでの発言も含めて、自分の言葉遣いは出版社に見せられるレベルか? → 作品外の言動も評価対象になる時代

商業出版を目指す場合、NG用語への配慮は避けて通れません。しかし、それは「書けなくなる」ことではありません。むしろ語彙と描写力の幅を広げるきっかけになります。

たとえば「キャラが狂っていく様子」を描きたいとき、「狂気に堕ちた」と書くより、「朝食の目玉焼きにソースをかける手が止まらなくなった」と書いたほうが、読者の背筋が寒くなりませんか。日常の崩壊を通じて異常を描く——これはプロの小説家が当たり前に使っているテクニックです。

制約の中でこそ、作家の腕が試されます。フィギュアスケートで規定演技があるからこそ、技術の差が明確になるのと同じです。

言い換え実例テーブル

参考までに、よくある表現とその代替案を並べてみます。

NG表現代替アプローチ例文
「狂った笑い」行動描写に変換「彼は笑っていた。瓦礫の上で、誰もいない空に向かって」
「サイコパス」周囲の反応で描写「同僚は彼と話すたびに、背中に冷たいものが走ると言った」
「奴隷のように」具体的状況で描写「自分の名前すら呼ばれず、番号で管理される日々だった」

まとめ——規制を知り、制約を超える

出版業界のNG用語には、ちゃんとした理由があります。「言葉狩りだ」と反発する気持ちもわかります。かつての私もそうでした。

しかし2025年現在、表現規制のプレイヤーは出版社の校閲部門だけではなくなりました。SNSの発言監視、国際条約、クレジットカード会社。規制の網は、私たちが思っている以上に広く、複雑になっています。

それでも、制限の中で表現する力こそが、プロとアマチュアを分ける境界線ではないでしょうか。コミカライズやアニメ化のチャンスを掴むためだけではなく、純粋に「強い文章を書く」ために——規制の最新動向を知り、NG用語を正しく理解しておくことは、創作者にとっての武器になります。

 

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